猪口 真 / 株式会社パトス

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コンテンツマーケティングの有効性が叫ばれて久しい。

『~編集者のように考えよう~ コンテンツマーケティング27の極意』(翔泳社 レベッカ・リーブ著)で詳しく明示され、もはや単なるバズワードの域を超え、完全に市民権を得たと言っても良く、マーケティングに携わる人であれば、必要性を感じない人は少ないでしょう。

コンテンツマーケティングとはいろんな定義があるものの、平たく言えば、「商品そのものだけを訴求するな、コンテンツを提供することでユーザーとの共感を生み、結果的に売上、利益につながる活動」ということだと私は思うが、考えてみれば本質的には何も新しいことではない。

そもそもどんな商品であろうと、ユーザーにとって、その商品が問題を解決し、役に立つことがなければ何の意味もないわけで、ユーザーが欲しいのは、マーケティングのグル、T・レビットの言うように「ドリルではなく穴」なのだ。

当たり前なことだけに、いまさらコンテンツマーケティングと言われても多くのマーケッターにとっては至極当然のこととしか映らないだろうし、企業のマーケッターは、いつも商品名やソリューションを連呼しているわけではなく、常に「顧客にとってのメリット」を考えて活動している(はず)。

しかしながら、実際のマーケティング活動の中で、コンテンツマーケティングを明確に定義し、成果として認識されている人・企業はほんとに少数だろうし、雑誌や書籍に登場するような派手な成功を感じている人はほとんどいないのではないか。それどころか、コンテンツマーケティングって結局なんなの?と内心感じている人も多いはずだ。

コンテンツマーケティングと言われている手法や施策が面倒くさく、なかなか組織の中で継続・拡大しにくい原因はいくつかあるが、ひとつは、それがWebマーケティング的な手法やSNSとほぼ同義的に語られることだ。

これはインターネットの活況によって、ユーザーが触れるメディアが分散し、テレビや新聞というメディアの横綱がもはや凋落の一途をたどる中、マスマーケティングによって商品・サービス、ソリューションを15秒や30秒で訴求し続けること、あるいは新聞や雑誌で、キャッチコピーひと言で誘導することが本当に正しい手法なのかわからなくなってきたという背景があるからだ。

さらに、一部の海外の小さな会社が、SNSや魅力的なWebサイトを活用したコンテンツマーケティングによってブレイクした例などを聞くにつれ、これ(コンテンツマーケティング)は、未来を築く魔法ではないかと思った人が出てきたということだ。

要するに、コンテンツマーケティングのハウトゥの多くは、マスマーケティングとの対比で語られることが多いため、オウンドメディア(Webサイト、ブログ)やSNSを効果的に活用し、いわゆる影響力のあるアーリーアダプターがシェアし拡散することを狙うという、手法論としてのみ語られてしまうことも少なくないということ。本来コンテンツとは、その商品や企業が持つ価値のことだし、別にWebやアプリ、SNS上だけでの話などではまったくない。

ゆえに、コンテンツマーケティングをいくら経営陣に提案したところで、そもそもの根本的な戦略があいまいなため、従来から行っている手法のひとつとしてのWebマーケティングとほぼ変わらない、総合的なマーケティング戦略から見れば、いわゆる「ついで」の施策になってしまう。(大手ほどこの傾向は強くなる)

結果、予算もそれなりのものにしかならない。

もうひとつ面倒なのは、実際の購買につながったかどうか、短期的な売上効果がどのように出るのかが測りにくい、実査に出たかどうかがわかりにくい点だ。(マーケティングなのでこうした疑問が出るのはあたりまえのことなのだが)

それは、コンテンツマーケティングが、よく「ユーザーとの関係性」をつくるマーケティングと言われることも起因していて、必ずしも「次の行動」を明確にするものではないという点だ。

成果の出ないマーケティング担当者の代表的な言い訳のひとつに、「我々の仕事によって購買動機を高めた」あるいは「企業としてユーザーとの関係性を保つため、ロイヤルカスタマーであり続けるために、無料で優良なコンテンツを提供し続けることがわが社のマーケティングに必要なことだ」というのがある。

それはそれでお題目としては結構なことだが、日々1円でも多く売り上げをつくろうと奔走し、厳しい交渉を日々行う営業にとっては、内心「はあ?」だろう。

結局何が起こるかと言うと、コンテンツマーケティングと言いながら、ユーザーの深い共感を得るためのコンテンツを創り提供することを忘れ、営業のニーズとはかけ離れた施策に終始してしまい、肝心な売り上げに結び付いたかどうかが分からないという事態を繰り返すことになる。

これでは、経営陣や営業サイドから見れば、「そんなことよりマス媒体で派手にやってくれ」となるのは仕方のないことだろう。

さて、どうするか。低予算のなかで普通の企業にできることはないのだろうか。