押す力で無限に書体が変化! 遊び心に満ちあふれたスタンプ

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私、ひどい“クセ字”なんです。いくら注意されても矯正されても、直らない。でも、いいんです。だってこれって個性だから。
一方、その人の個性が表れるような“クセスタンプ”というのは聞いたことがない。と、思っていました。しかし、実はそんなスタンプが生まれてます。デザイナー・阿津侑三氏が開発した、その名も『INSTAMP(インスタンプ)』。

押し方で書体が変わるスタンプ


このスタンプの、何が新しいか。まず、押すじゃないですか。その押しの強弱や角度、回数などで、スタンプ跡の書体が変わります。優しく押すと直線的な、強く押すと丸みを帯びた書体が、紙に表れるのだそう。

では、その仕組みはどうなっているのでしょう。スタンプの接地面がシリコンであり、やわらかい素材ゆえ押す強さや角度で形が変化する……というものです。

連続して押すとインクが落ちて白抜き文字になったり、出来上がる書体のバリエーションはなんと無限!押す人の個性により、その人だけの文字が作れます。

きっかけは書道


ところで、このようなスタンプを思いついた理由は?
まず、開発者の阿津氏が「スタンプが好き」だからということが挙げられます。
「適当に押しても綺麗な形を常に表現できる気軽さに魅力を感じ、昔からスタンプを作って遊んでいました」(阿津氏)
そして、もう一つ。
「学校(デザイン系の専門学校)の授業で書道を習っていたことも、影響しています。改めて書道を習うことにより、幼い頃には見えていなかった“筆の動き”を気にするようになりました。筆の動きを意識し、毛筆がどういう動きをするのかを想像することが大事だと。毛筆は柔らかい素材でできており、紙に強く筆を置くか、優しく置くか、その抑揚で文字に変化が現れます。『この構造をスタンプに取り入れたらどうなるのか?』という疑問が、INSTAMPを作ったきっかけです」(阿津氏)

結果、この遊び心の反響は上々。『LEXUS DESIGN AWARD 2015』で見事、受賞も果たしている。
「みなさん、スタンプを面白がってくれています。構造もシンプルなので、すぐに理解してくれるようです。色々な文字を表現できる面白さだけでなく、押した時の感触も面白いと言ってくださる方もいました」(阿津氏)
海外のサイトでも紹介され、現在はニューヨークでも展示されているとのこと。
「このスタンプは、『五感』というテーマで製作しました。デジタルな時代に、自分の五感を通してものを作る機会が減ってきている気がしています。そういった時代だからこそ、必要なツールだと思っています」(阿津氏)

そんな『INSTAMP』は、秋ごろの商品化が予定されているそう。その際は、アルファベット26文字のセットとして販売されるようです。

「特に、子どもたちに自由に使ってほしいと思っています。押す感覚に対し、どんな形が表現できるのかを自然と学ぶことができるものです」(阿津氏)

アルファベット以外のINSTAMPは?


そして、秋以降の展開について。
「他の形で作るにしても、単純なものになると思います。複雑な形だと仕組み的に、うまく表現するのが難しいです。アルファベットは単純な形なので『INSTAMP』に向いていますが、複数の要素で構成された漢字は潰れすぎる(強く押しすぎる)と読めなくなってしまいます。それはそれで面白いかもしれませんが(笑)」(阿津氏)

最後に、『INSTAMP』の楽しみ方を製作者から。
「押す人によって形状が変化するので、その人らしさや感情を含んだ文字を作ることができます。なので、ちょっとしたメッセージを書くときに使ってみてほしいです。また、このスタンプは“文字を使う”というより“文字と遊ぶ”という言い方が合っている気がします。なので、文字と遊んでほしい(笑)」(阿津氏)
(寺西ジャジューカ)