【ファンキー通信】“マジック”は法律違反!?

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 先日、大阪のマジックバーで貨幣損傷等取締法違反の容疑で逮捕者が出たというニュースが流れた。逮捕の原因は、タバコが通るように硬貨に穴を開け、マジック用に変造したことによるものだった。でもそうなると、紙幣を破ったりするマジックは問題ないのだろうか。法律事務所オーセンスの元榮(もとえ)太一郎弁護士に話を伺ってみた。

 「硬貨の場合、折り曲げたりして損傷させたと判断できれば貨幣損傷等取締法違反になります。色を塗ったりしただけでは問題ありませんが、ペンキなどを塗って色が取れない状態にしたときなど、「損傷」したと言える場合には違反です。一方、紙幣の場合は破ったり、落書きしたり、燃やしたりしても現行法がないので罪にはなりません。法律自体はマイナーなもので、昔、お金を溶かして延べ棒などを作ろうとする人がいたため、そういう人を取り締まろうと昭和22年(1947年)に公布・施行されました」(同)

 マジックで紙幣を使うのが問題ないとは意外だ。ところで改正されることもなければ、廃止されることもなく残り続けたこの法律。変造で逮捕者が出たということよりも、今から60年も前の誰もが忘れていそうな法律が適用されたということの方が話としては驚きだ。

 それでは犯罪に見えそうなマジックそのものについてはどうなのか、いくつかのマジックを挙げて話を伺ってみた。

 「人の入った箱に剣を刺していく剣刺しマジックが殺人未遂罪ではないかという質問ですが、殺人未遂には当たらないと言えるでしょう。人の入った箱に剣を刺していく行為は、通常は殺人の具体的危険のない行為と言え、殺人の実行行為として評価できません。あくまでマジックであり、一見危なそうに見えても、人体に一切危険がないのであれば問題ありません。またイリュージョンマジックが詐欺罪に当たるかですが、イリュージョンマジックによって観客から財物や財産上の利益を得ているワケではないので、詐欺罪には当たりません。詐欺罪は人をだます行為によって、被害者から財物や財産上の利益を得る行為を処罰する犯罪なので」(同)

 マジックで使用されているナイフに関しても、人体に危険がないようなものであれば問題はなさそうだ。ただ今回のように、実際に法律に違反するような道具を使っていれば、話は別だろう。(清水憲一/verb)

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