ライブドア(LD)事件で証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載など)の罪に問われた元社長、堀江貴文被告(33)の第9回公判が29日、東京地裁(小坂敏幸裁判長)で開かれた。弁護側は、検察が宮内亮治被告(39)=分離公判中=らの業務上横領などを見逃す代わりに、堀江被告に不利な供述をさせたと指摘。公訴の棄却を求めた。

 また、弁護側は捜査の経緯を明らかにするため、東京地検の大鶴基成特捜部長と、宮内被告を取り調べた検事2人の証人申請を行った。

 宮内被告はこれまでの反対尋問で、横領であることは否定しているものの、LD株の売却益の一部を個人的に流用したことを認めている。一方で、検察側の主尋問と違う証言をしたり、「思い出せない」「分からない」と答えることも多く、弁護側が「当てずっぽうで答えるのはやめてくれ」「(検察の)調書を読まないと思い出せないというのがおかしい」と詰め寄る場面もあった。

 こうした状況を受け、この日の公判で弁護側は「これまで無罪を主張してきたが、本件捜査は反社会的、反司法的な過程を経て公訴提起された。一連の宮内供述は矛盾と撞着(どうちゃく)に満ちており、極めて信用性に乏しい」と指摘。

 LD売却益の流用についても、「宮内被告本人は横領ではないと主張しているが、野口氏(エイチ・エス証券元取締役の野口英昭氏。LD強制捜査後に沖縄で死亡)を含む数人の共犯であることは明らかで、特別背任に当たり、検事からも取り調べで横領しただろうと言われたと証言している。本来であれば、横領背任の被害者として、堀江被告とLDを取り調べるべきだ」と強調した。

 こうした指摘の上で弁護側は、「暗に宮内被告が堀江被告に不利な供述をすれば、自分の犯罪が捜査、起訴の対象にならないのでは、と考えられる調書が作られた。ほとんど物証がない状況で、ほとんど記憶だけで作られた調書だ。本法廷においても、調書を読んで証言する宮内被告の姿が見られた。特別背任罪は、証券取引法違反よりも重い。被害者である堀江被告、およびLDを起訴するのは公訴権の乱用で、正義に反する」と訴えた。

 対して、検察側は「堀江被告には十分な証拠がある」「弁護人の主張は、苦し紛れだ」と反論。小坂裁判長は、現段階では公訴棄却の申し立てと証人申請への判断を留保した。

 今回で宮内被告への審問は終了。次回は10月2日にライブドア・ファイナンス元社長、中村長也被告(39)への尋問が行われる。【了】

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