「チケットが入手できなくなった」ことを理由にサッカーW杯ツアーを中止した旅行会社、マックスエアサービスが、業務を停止したことが明らかになった。事実上の「倒産」に近く、観戦は不可能だし、払い込んだ代金が全額戻ってくる可能性は少ないと見られる。

マックスエアサービスのウェブサイト。お詫びの言葉以外のほとんどのコンテンツにはアクセスできなくなっている
マックスエアサービスのウェブサイト。お詫びの言葉以外のほとんどのコンテンツにはアクセスできなくなっている

   JINビジネスニュースでは、2006年6月12日、マックスエアサービス本社に電話してみた。すると早口で聞き取りにくい音声だけが流れる。「主催旅行は停止」というテープ音。業務は停止しているようだ。ホームページも「お詫び」を残して閉鎖していた。
   お客への入金の返済についてホームページ上では、

「返金につきましては、法的に必要な書類が整い次第、法律事務所を通じて公平な法的第三者へその方法を委ねるべく、すでに願い出ております。また、返金の公平を図る為、現在個別での対応は一切行う事ができません。事務所へご来店頂きましても、当社では、一切の窓口業務を中止させていただいており、個別対応は一切行なっておりません」

   などと書かれている。

支払った金が返ってこない可能性が大きい?

   「返金の公平を図る為」というくだりは、客に全額返済することはできないといっているに等しく、事実上、経営は「お手上げ」、「倒産」ということだ。

   マックスエアが「サッカーW杯ドイツ大会の観戦チケットが入手できなくなった」として、ツアー中止を発表したのが06年5月31日。中国の旅行会社「中国国際体育旅遊公司」とチケット3,744枚分を買取契約したものの、突然「チケットは1枚もない」と告げられ中止を決めたというのがこれまでの経緯。約1,300人から申し込みがあり、客からの入金が2億8,000万円に上っていた。ただ、6月5日には「148枚分独自に入手した」と発表している。

   同社のツアーだが、もともとルール違反。日本サッカー協会が「チケット付きツアーはFIFAの規約違反」という通達を出していたからで、大手旅行会社は一切この種の企画をしなかった。98年のフランスW杯でチケットがダフ屋行為で高騰したり、「幽霊チケット」も出て会場に入れなかったりという不祥事が続発し、FIFAがチケット管理を強化したからだ。それなのに同社は企画を強行。それに乗っかった客はドイツでW杯を見られないばかりか、支払った金が返ってこない可能性が大きくなっている。

客から「カネはいつ返すんだ!」と苦情が殺到

   マックスエアサービスのお詫び文の最後に、「苦情の申し出」先として記されているのが社団法人日本旅行業協会だ。旅行業約款で、会社が機能不全に陥ったときに同協会が問い合わせの窓口になる。

   「お客から“カネはいつ返すんだ!” と苦情が殺到しまして。協会で判ることなんてたかが知れていますし…」と、同協会の担当者は疲れた声でJINビジネスニュースの取材に答えた。マックス社がお客に対し返金を完了するか、倒産するか、廃業するまで対応業務は終わらない。それがいつかはわからない。協会に対しマックス社は、弁済保証金7,000万円を置いている。

「例えば倒産した場合、この7,000万円は返済に充てますが、これだけでは足りないでしょう。マックス社がこれからどれだけ返済金を手配できるかはわかりませんが、マックス社は中国の会社を訴えると言ってますし、裁判が長引けば、返金はずっと先になる可能性もあります」

   協会ではこう話している。