iPhoneでも、Xperiaでもない。それでもHTCに期待して推したい!HTC One M9は輝けるのかーー日本で出るのか

輝きを失ってしまったHTCは再起できるか?

突然だが、筆者は台湾のHTC(宏達国際電子)のスマートフォン(スマホ)が好きだ。プロのITライターとしてデビューして5年目となるが、この道に入るきっかけとなったのもHTCだった。だから、新機種がリリースされれば、無条件に賞賛の記事を書きたい。とはいえ、お世辞にも"ポエム"のような記事は書けないのが、今のHTCの現状だと思う。それほど、過去の栄光に比べ、現状は散々なものと思えてしかたがない。

過去を振り返れば、HTCはハイスペックスマホの雄だったと言えるだろう。日本でも「Desire」や「Desire HD」はマニアにも響くハイスペックの代名詞だった。国内で販売されなかったSensationやRezoundは輸入してでも触りたい機種だった。

今回はそんな筆者のHTCへの思いを、今後の同社の展望も含めて紹介したい。


輸入してでも触りたいHTCスマホも過去には沢山あった

あの頃の輝きをHTCは日本国内で取り戻せるのだろうか?振り返ると、復活のきっかけは2年前にあったはずだ。KDDIとのタッグで「INFOBAR A02」を共同開発した2013年だ。あの頃、私も各メディアで「復活ののろしを上げたHTC」と期待を込めた記事を書いていた。もちろん、私だけでなく、多くのHTCファンは「日本でのHTCの展開」に期待をしていたはずである。

だが、しかし、その2年後に蓋を開けてみると、INFOBARシリーズは京セラの手に渡り、新型のHTC J Butterflyも成功したとは言い切れない現状である。


復活のきっかけだったはずのINFOBAR A02

この状況を作った原因は国内にあるのだろうか?実はこの状況は日本だけの話ではない。グローバル市場を見ても、ここ数年のHTCは窮地に立っていると言わざるえない。

2013年以降のHTCという企業の動向を見ていると、激動の中にいる。2012年には世界シェアの10%をも占めるブランド価値は36億ドル(約437億円)と言われるトップブランド企業だった。

だが、中国をはじめとする市場でのSamsung Electronics(以下、サムスン電子)やAppleとの競争は激化し、2013年7月〜9月期の最終損益は30億ドル(約100億円)と膨らみ、それまで4〜5位をキープしていたグローバルでの市場シェアでも圏外となってしまった。

サムスン電子やAppleに比べ、規模の小さいHTCでは市場の消耗戦は辛く、Huawei Technologies(以下、ファーウェイ)やLenovo(以下、レノボ)といった中国本土のメーカーの躍進も追い打ちとなった。

グローバル市場でHTCが犯した大きな間違いは、ローエンド市場への関わりを間違ったことだ。当初、ハイスペックの代名詞でもあったHTCはローエンドの製品に見向きもしなかった。その結果、ローエンド市場では中国本土のメーカーに惨敗し、さらにハイエンド市場では巨人のサムスン電子やAppleにシェアを侵食され八方塞がりに追い込まれたのだ。

このような状況で「日本だけ特別な機種」という手法は大きなチャンスでもありながら、コストのかかる話であることは想像できるだろう。HTC Jシリーズのようにグローバル版と国内版に大きな差異はないものは良いが、INFOBARシリーズのような「日本国内のみ」という製品は負担になるということだ。INFOBAR A03が京セラに移ったのも、このような理由があったからではないだろうか。

とはいえ、DesireやDesire HD、初代のHTC J Butterflyを所有したユーザーの中に、HTCの新機種に期待するユーザーが多いのも事実だ。日本は独特な市場だ。グローバルのようにローエンドではなく、ハイスペックの機種がもてはやされる。だからこそ、日本のHTCファンはハイスペックスマートフォンの雄・HTCに期待し続けるのだ。

2015年、今月にスペイン・バルセロナ開催された「Mobile World Congress 2015(MWC 2015)」でHTC Oneのニューモデル「HTC One M9」が発表され、グローバルで発売されることになった。

HTC One M9は5インチ液晶を持つ同社のフラッグシップモデルだ。CPUにSnapdragon 810を採用し、内蔵メモリー(RAM)は3GB、OSはAndroid 5.0(開発コード名:Lolipop)とスペックは妥協していない。まさにHTCらしい製品だ。HTC One M9が日本で販売されるかは、今のところ未定となっているが、国内のHTCファンにとっては非常に興味のある機種であることは間違いない。


新製品のHTC One M9

また、海外に目を向けると、Desireシリーズが独自の進化をつづけていることに気がつく。昨年に発売されたDesire 816は5.5インチディスプレイのミドルレンジスマホだ。

ハイスペックのHTC Oneシリーズ(国内のHTC J Oneも含む)は高級感のあるメタル(またはメタル調)を採用しているが、Desire 816はプラスチックを筐体の素材に使い、カラーバリエーションも白や黒、グレイ、緑、オレンジとポップなイメージで、個人的には、Desireシリーズも是非、国内で販売をして欲しいと思っている。この機種ならば仮想移動体通信事業者(MVNO)などの格安SIMフリー市場へ参入して欲しいものだ。


ポップなミドルレンジスマホ「Desire T」

スマホ市場は国内、海外問わず、メーカーの競争が厳しいのが現状だ。あのNokiaでも、Motorolaであってもその荒波に翻弄された。国内に目を向けても、NTTドコモが2トップとして推したSONYはモバイル事業で大きな赤字を、サムスン電子に至っては日本市場からの撤退の噂が出るほどだ。

そんな混乱のモバイル市場でHTCが再び輝きを取り戻し、消費者をワクワクさせる製品を出してくれることを、これからも変わらず期待したいと思う。

記事執筆:甲斐寿憲


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