www.toto-dream.com/より引用

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《「10億円ビッグ」CM中止 人名など人質事件連想》(1月30日・共同通信)というニュースが飛び込んできた。

 サッカーくじ「10億円ビッグ」のテレビCMのことだ。人質の後藤健二さんと同じ読みの「五島」という人物が登場するほか、「締め切り迫る」と事件を連想させる言葉も入っていたため、打ち切りを決めたという。担当者のコメントが考えさせられた。「すべてたまたまだが、情勢に配慮した」。

 そりゃそうだろう、すべてたまたまに決まってる。そもそもあのCMでの「五島」という名前は「“ゴドーを待ちながら”のパロディー」だとツイッターで知り合いの編集者の方に教えてもらった。そりゃそうだろう。驚く話はまだある。

《東京MXテレビなどで放送されているアニメ「探偵歌劇 ミルキィホームズ TD」の製作委員会は30日、第5話の放送を見合わせると発表した。》(共同通信) 放送には「身代金」や「誘拐」という言葉が登場するからだという。

 同番組の製作委員会のコメントが考えさせられた。「ギャグアニメだが、事件のパロディーと思われるとよくない」。断言するが「事件のパロディー」だと思う人は絶対にいないと思う。

次々に続く「情勢に配慮」とは?

 驚く話はまだまだある。23日深夜に放送を予定していたアニメ「暗殺教室」(フジテレビ)は第3話の放送を見送った。「ナイフを振りかざしていろんなものを刺しているシーンがあるから」だという。

 驚く話はまだまだまだある。23日放送の『ミュージックステーション』(テレビ朝日)で、「凛として時雨」が歌詞を一部変更して演奏した。「血だらけの自由が」を「幻の自由が」に、「諸刃のナイフに彩られた」を「諸刃のfakeに彩られた」に変更した。

「昨今の状況を鑑み、メンバーと番組サイドで協議し、歌詞を一部変更して演奏致しました」とメンバーはツイッターで説明した。無念だったに違いない。

 これら多くに共通するのは「情勢に配慮した」という文言である。ここでいう配慮とはなんだろう。そのまま放送すれば誰に影響するのか。イスラム国か? 人質の家族か? いや、どちらでもなさそうだ。

 おそらく視聴者に「配慮」してるのだ。しかし今回の一連の対応には「考えすぎ」「過剰対応」という当たり前の声が多い。

 ということは「当たり前ではない視聴者」に理不尽に絡まれるのがめんどくさいというのがホントのとこだろう。たとえそれがごく少数でも。

「テロ=理不尽」と解釈するならば、「テロに屈しない」という掛け声はまずエンタメ業界からお願いします。
 息苦しい状況を助けてください。

著者プロフィール

お笑い芸人(オフィス北野所属)

プチ鹿島

時事ネタと見立てを得意とするお笑い芸人。「東京ポッド許可局」、「荒川強啓ディ・キャッチ!」(ともにTBSラジオ)、「キックス」(YBSラジオ)、「午後まり」(NHKラジオ第一)出演中。近著に「教養としてのプロレス」(双葉新書)。