2014年 国公立大医学部医学科合格者数ランキング

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■医学部に強い東海、7年連続トップ

受験生の資格志向が続いている。その究極が医学部(医学科)だ。特に学費が私立大の平均のおよそ10分の1で済む国公立大の人気が高く、東大や京大の理系学部と遜色ない難易度になっている。

2014年春の国公立大医学部の志願者は前年を僅かに下回ったが、受験人口の減少分を勘案すれば、人気が下がったわけではない。旧課程最後の今春入試は、浪人をすると学ぶ内容が増えている新課程の受験生との競争になるため、私立大医学部の併願数を手厚くした影響もあり志願者は増えなかったが、国公立大医学部は厳しい入試が展開された。

2014年の国公立大医学部入試で最も多くの合格者を出した学校は東海で、現役と浪人を合わせて114人が合格。7年連続でトップとなった。全合格者中、現役は64人でこちらも全国1位。同校ではあらゆる大学の志望者が同じ教室で学び、医学部進学クラスがあるわけではない。医学部合格実績の高さに期待して入学時から医学部志望の生徒が多いことが合格者が多い要因のようだ。大学別では名古屋大が24人で同大のトップとなり、秋田大2人、大分大3人など全国の大学に合格者がいる。学費が安い国公立大は全国の大学が志望校となるため、東海以外にも合格校が全国に散らばる学校は多い。

医学部合格者数の2位はラ・サールで、97人が合格した。同校の東大と京大の理系学部合格者は18人と少なく、医学部志向が他の進学校より進んでいるようだ。ラ・サールとは対照的に、医学部88人、東大・京大の理系学部52人と合格者のバランスがいいのが3位の洛南。医学部の現役合格者は52人で東海に次いで2位だ。卒業生が470人近い大規模校ながら、11%が難関の国公立大医学部に現役で合格しているのだ。

4位以下は東大寺学園(82人)、甲陽学院(66人)、灘(63人)、開成(62人)、久留米大付設(59人)、新潟(53人)、四天王寺(50人)、愛光(50人)となり、ベスト10は新潟以外、全て私立中高一貫校が占めた。予備校関係者は、こう話す。

「国公立大医学部に合格するためには、センター試験で8割以上の得点が必要で、2次試験もハイレベルな問題をクリアしなければなりません。先取り学習により5年間で中高のカリキュラムを終えて最後の1年間を受験対策に充てられる私立中高一貫校でないと多くの合格者は出せません」

■健闘する公立校の4校の存在感

私立中高一貫校が優位な中、国公立大医学部合格者数ランキングで20位以内に入っている公立校は、先の新潟と仙台第二(45人)、札幌南(44人)、秋田(43人)の3校だ。塾関係者は言う。

「難関大合格実績が高い地域のトップ校には、医学部志望の優秀な生徒が入学してくるためです。ただ、私立中高一貫校ほど現役合格率は高くありません」

新潟は新潟大が26人で同大のトップを続けている。東京大2人、北海道大2人、東北大4人など旧帝大の合格実績もあげている。秋田も地元の秋田大に強く合格者は同大トップの31人で、東北大にも5人合格している。

地元に旧帝大がある県のトップ校は、合格者の多くを旧帝大が占める。仙台第二は東北大が21人で全合格者の半数近くに上る。山形大12人、弘前大3人、福島県立医科大3人など東北を中心に合格者を輩出している。札幌南は北海道大に19人が合格した。札幌医科大10人、旭川医科大7人など地元の大学が中心だが、東大2人、東北大2人、大阪大1人など旧帝大にも合格者がいる。現役合格者も29人と多く今春は卒業生の9%が国公立大医学部に合格した。

難関の国公立大医学部だが、医師不足解消のために07年の7625人から9061人に定員が増えており、間口は広がっている。前出の私立中高一貫校や公立トップ校の合格者数を定員増前の07年と今春を比較すると、東海52人増、洛南39人増、東大寺学園35人増、新潟27人増、仙台第二16人増、札幌南12人増などとなっている。また、定員増分の多くは地域医療や僻地医療にあたる医師を養成する地域枠で、推薦やAO入試で募集されることが多いため合格校自体も増えている。予備校関係者は言う。

「一般入試に比べると推薦やAO入試はセンター試験のハードルが低いので、トップ校以外から合格者がでることも珍しくありません」

医学部に1人以上合格者を出した学校を07年と今春で比較すると、642校から743校と101校近く増えている。国公立大医学部入試は最難関に違いないが、以前よりすそ野が広がっていることも事実のようだ。

(大学通信 井沢秀=文)