「ハノーファーでも最初はよくなかった。でも、監督がずっと使い続けてくれたのが大きかったですね。僕自身も我慢強くなったというか、悪くても考えすぎず、へこまずにやれたから。もちろん、一番我慢強かったのは監督です。それが今に繋がっていると思います」
 心身ともに充実しているからだろう。清武はとても前向きだ。
 
「(レギュラー確定ではないという現状について)とくに考えてないというか、どんな状況になろうと、いつもどおりです、僕は。もちろん、誰もが試合に出たいと思っている。でも、出られるのは11人。いかにチームがまとまるかが大事だと思うので、一丸となってやるしかない。
 
 ワールドカップでも同じような気持ちだったけど、正直、あの時は自分をコントロールするのに苦労した部分もありました。でも、今はまったくそういう感じじゃない。あのワールドカップを経験したからですかね」
 
 低迷するチームを「なんとかしたい」ともがいたニュルンベルクでの昨シーズン。そして、トータルで5分あまりしか出場機会のなかったブラジルでの悔しさ。苦悩しても焦りが募るばかりだったに違いない。
 
 しかし、ハノーファーに新天地を求めて心機一転、清武は本来の自分を取り戻した。「やるべきことをやるだけ」と、サッカーに集中して――。
 
 代表から外れた3か月間で清武が得たのは、苦境を乗り越えるひとつの成功体験だったのかもしれない。だから、彼は強くなった。
 
「いまの代表は、若い選手が入ってきて、チームが活き活きしているし、みんな本当によくしゃべる。話しながら、盛り上げながら、やっていけたらいい。アジアカップは優勝しか考えていない。ただそれだけを考えています」
 
 プロとして清武が獲得したタイトルは、2008年のナビスコカップだけだ。もっとも、「攻撃の切り札」として決勝戦のベンチに入った大分トリニータのルーキーに、出場機会は訪れなかった。
 
 あれから6年あまりの月日が流れた。はるかに逞しく、強くなった清武は、アギーレジャパンの切り札としてアジアカップという大きなタイトルに挑む。
 
取材・文:寺野典子