今年も「棲み分け」た(画像はマツダのホームページより)

写真拡大

自動車評論家らでつくる日本自動車研究者ジャーナリスト会議(RJC)が今年(2015年次)の「RJCカーオブザイヤー」に、スズキの軽自動車「ハスラー」を選んだ。スズキの受賞は5回目。

今回のRJCカーオブザイヤーをめぐっては、「2014〜2015 日本カー・オブ・ザ・イヤー」(日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員会主催)に決まったマツダデミオがダブル受賞する可能性が高いとみられたが、次点の2位だった。両カーオブザイヤーは例年、受賞車が異なるケースが多く、事実上の棲み分けを図る傾向は今年も変わらなかった。

ハスラーは「軽自動車SUVとして新しいジャンルを開拓」

ハスラーは2014年1月の発売で、軽ワゴンとスポーツタイプ多目的車(SUV)を融合させた新しいタイプの車で、スズキとしてはもちろんのこと、軽自動車市場で久々のヒット商品となった。RJCは受賞理由について「ライトな感覚の軽自動車SUVとして新しいジャンルを開拓した。動力性能ばかりでなく、ボディーカラーなどの色に対する配慮も行き届いている。しかも街乗りにも充分な快適性を備えている。広い意味でユーザーに夢を与えてくれるクルマである。家族でも、1人でもペアでも楽しめる。その懐の深さと新鮮さを高く評価した」とコメントしている。

今回、RJCカーオブザイヤーの最終選考に残ったのは、ダイハツコペン、スバルレヴォーグ、ホンダN-WGN、マツダデミオ、三菱eKスペース/日産デイズルークス、日産スカイライン、スズキハスラー(以上、アルファベッド順)だった。RJCは最終選考の詳しい結果を公表していないが、1位のスズキハスラーと2位のマツダデミオは接戦だったとみられる。

RJCはスポーツカーよりもファミリーカーが多く、軽が何度も受賞

日本には現在、二つのカーオブザイヤーがある。このうち、1980年に始まった日本カー・オブ・ザ・イヤーは、自動車雑誌の出版社などが実行委員会を組織し、選考委員にはレーサーやラリースト出身の自動車評論家が多い。これに対して、RJCカーオブザイヤーを主催する日本自動車研究者ジャーナリスト会議(RJC)はNPO法人で、会員には大学教授などの学識経験者や技術者、レーサー出身でない自動車評論家が多い。

RJCは、伝統ある日本カー・オブ・ザ・イヤーを「メーカーの接待づけ」や「運動性能に偏重した選考」が多いなどと批判して1991年に誕生した経緯がある。このため、過去の受賞車も日本カー・オブ・ザ・イヤーにスポーツカーや高級車が多く、軽の受賞は一度もないのに対して、RJCカーオブザイヤーはスポーツカーよりもファミリーカーが多く、軽が何度も受賞しているのが特徴だ。

日本カー・オブ・ザ・イヤーではデミオが圧勝

今回は、欧州で常識の小型クリーンディーゼルを国内で初めてリリースしたデミオの技術的革新性、市場へのインパクトが大きく、日本カー・オブ・ザ・イヤーでのデミオの得票は423点と、2位以下のメルセデス・ベンツCクラスセダン(404点)、BMWi3(340点)、スバルレヴォーグ(124点)、スズキハスラー(65点)などを大きく引き離した。小型クリーンディーゼルに対する学識経験者や技術者の関心は高く、ファミリーカーのデミオがRJCでも本命かと思われた。

しかし、ハスラーは技術的革新性こそ乏しいものの、話題性や新車販売の好調さではデミオと互角の勝負だった。ファミリーカーのデミオに対して、ハスラーは軽のSUVで性格が異なることから、棲み分けには好都合だったのかもしれない。結果的に2011年の日産リーフ以来となる同一車種のダブル受賞は今回も叶わなかった。