ようやく中村剛也選手が2軍で実戦復帰を果たした。昨日まで計4試合に出場し、打率.188、打数16、安打3、本塁打1、三振9という成績を残している。スポーツ紙によれば最速で、25日から始まるホークス戦から1軍に合流するようだ。だが焦りは禁物だ。昨季も調整不足のまま1軍に合流し、その結果26試合で打率.208、4本塁打という成績に終わってしまった。ちなみに4本塁打というのは、144試合に出たと仮定すると22本にしかならないペースだ。中村選手の数字としては、かなり物足りないものだった。

今月上旬だったろうか、潮崎哲也2軍監督も中村選手の調整不足状態での1軍復帰は見送るべきだと語っていた。これがもし、開幕前後であれば話は少し変わってくる。と言うのは単純に、開幕直後というのは相手投手たちも主力以外は調整がしっかり整っているわけではない。満足行く実戦を積めないまま開幕を迎える投手たちも多いからだ。この場合例え主力投手を打てなくても、まずは主力以外の投手たちを打っていくことで中村選手も状態を上げて行くことができる。だが開幕して1ヵ月も経とうかという今は、さすがに調整不足のまま1軍に帯同している投手はいない。ライオンズのようにインフルエンザという見えない敵の存在がない限り、通常は1・2軍の入れ替えは随時していけるのがこの時期だ。つまり1軍には調子の悪くない選手だけが残り、調子が悪ければ2軍に落ち、代わりに2軍で調子が良い選手が1軍に上がってくるということだ。4月、ライオンズはこれができなかったこともやはりチーム低迷の1つの原因となったのだろう。

中村選手がファームで試合に出始めたのは4月18日からだった。これまで出場した4試合の各成績を並べて見ると、以下の通りとなる。

18日 DeNA戦 5打数、1安打、3三振(指名打者)
19日 DeNA戦 4打数、3三振(指名打者)
20日 DeNA戦 3打数、1安打、1打点、2三振(指名打者)
22日 ヤクルト戦 4打数、1安打、1本塁打、2打点、1三振(一塁手)

確かにホームランも飛び出したし、ファーストの守備にも就いている。だがそのホームランもまだ1本のみで、守備に就いたのも僅かに1試合のみだ。これだけで1軍昇格を判断することはできない。少なくとも一週間以上はファーストとして試合に出続け、コンディションに問題が生じないかどうかを確認すべきだと筆者は考えている。そして2軍レベルの投手を相手に4試合で9三振というのも多過ぎる。今はホームランを打ったことよりも、この三振の多さを注視すべきだろう。つまり調整はまだほとんど進んでいないということだ。

それでも中村選手が1軍のオーダーに名を連ねていれば、それだけで相手投手に対しては威圧感を与えることができる。それは間違いないことだ。だが状態が上がっていない段階で1軍でプレーすることになれば、中村選手自身上手く調整を進めることができず、1軍クラスのボールに苦慮することになってしまう。するとせっかく1軍に上がったとしても、昨季のように長い期間不調のままでプレーしなければならなくなる。これはチームにとっても中村選手にとっても不本意というものだ。

4月29日からはQVCでの3連戦も含め、西武ドーム圏内での8連戦が始まる。中村選手の復帰はどんなに早くてもここからでいいのではないだろうか。西武ドームならもちろんのこと、QVCであっても試合前後には西武ドームで自主調整を進めることができる。ただこの8連戦を終えると、その後は交流戦も含めてしばらく日程が飛び飛びになってしまう。すると実戦機会が減ってしまうため、やはり調整は難しくなる。もちろんファームの試合に出場するのならば話は別であるが、1軍に帯同する場合、必ずしも1軍が試合をする球場の近くでファーム戦が行われているとは限らない。

正直なところ、中村選手の1軍復帰のタイミングは非常に難しい判断だ。中村選手自身のことを考え調整が進んだ上で1軍に上げるのか、それともチーム事情を優先し中村選手のネームバリューを利用するのか。筆者としてはもちろん前者を希望したい。やはり中途半端な調整段階で1軍に戻るよりは、中村選手自身がある程度の確信を持ててから1軍に上がった方が、ホームラン数の巻き返し速度も速くなると考えられる。やはり中村選手には少なくとも3試合に1本はホームランを打ってもらいたい。昨季のように6.5試合に1本というペースでは、一週間に1本出るか出ないかということになってしまう。それではファンとしては寂しいし、中村選手自身フラストレーションも高まってしまうのではないだろうか。伊原春樹監督としても難しい判断を迫られるとは思うが、しかしきっと最善の判断を下してくれるはずだ。それがどのような形になるのかは筆者にはまだ分からないが、1軍復帰したならば、そこからは心からホームランキングを応援していきたいと思う。