[其ノ一 株ファンダ編]マザーズのルール変更で東1昇格株激増へ!
市場スタート以来、姿を変え続けてきた東証マザーズ市場。その理由は構成銘柄の変更が異常に多い点にあるのだが、今年はさらに激変の予感? それを逆手に取った戦略を紹介する。

指数のテクニカル分析が通用しないのは構成銘柄が異常に変わっているから

主力株の動きは「日経平均株価」で確認、新興市場の動きは「東証マザーズ指数」で確認、これが一般的といえるでしょう。日経平均株価は単純平均なので一部の値ガサ株のウエートが高くなってしまうのがネックですが、東証マザーズ指数も姿を変えすぎていて?連続性〞がほとんどないという問題があります。「マザーズ指数が1000ポイント回復」「高値からの3分の1戻しで……」といったテクニカル分析の意味がないのは、構成銘柄が異常に変わっているためです。7年前、2006年末のマザーズ市場の上場会社数は187社でした。2013年末は193社で、わずかですが6社増加。しかし、この7年間に東証1部への昇格だけで50社もありました。つまり?流出〞したわけですが、それでも6社、増加しているのは、新規上場による流入が50社以上あったため。

マザーズはベンチャー企業の受け皿という側面が強く、成長すると東証1・2部へ出ていきます。つまり、成長企業から消えていくという特性を持っているわけです。でも、指数は加重平均型(時価総額を考慮)で計算されます。指数に影響力を持つ企業自体が驚くほど変化するのも特徴。下の表はライブドア・ショック直前のマザーズにおける時価総額トップ10銘柄ですが、このときの1位はライブドアで、時価総額は7334億円もありました。トップ10のうち、ディー・エヌ・エーとソネット・エムスリー(現・エムスリー)は東証1部へ昇格、ライブドアなど4銘柄は上場廃止。当時の主力級で現在もマザーズなのは4銘柄のみです。そして、今年2月24日時点の時価総額トップ10を見ると、驚くほど違っていますよね。当時からランクインしたままなのはサイバーエージェント1社というのが実情です。

マザーズは今年さらに姿を変えます。新規上場が今年も多そうなうえにルール変更があるからです。具体的には、3月31日以降に「上場後10年経過した銘柄」には本則市場への変更を促すというもの。東証1部・2部に移行するか、マザーズに残るかを選択する必要性に迫られます。マザーズに残ることを選択しても、原則、市場の上場維持基準を満たさなければならないルールになります。

マザーズから1部に市場変更すると、「変更日の翌月の月末」にTOPIXに組み入れられます。15兆円分、存在するとされるTOPIX連動型ファンドの買い需要が発生するわけで、1部昇格は既存株主には大きなメリット。上場から10年経過し、1部基準もクリアしていそうな銘柄を狙う戦略が、当面は有効となりそうです。

この8年でマザーズ市場の時価総額ランキングは様変わり!

ライブドア・ショック直前のトップ10
1位;ライブドア
時価総額(2006年1月時点):7334億円

2位;ACCESS
時価総額(2006年1月時点):4251億円

3位;サイバー・コミュニケーションズ
時価総額(2006年1月時点):3214億円

4位;サイバーエージェント
時価総額(2006年1月時点):2203億円

5位;フィンテック グローバル
時価総額(2006年1月時点):1960億円

6位;日本ベリサイン
時価総額(2006年1月時点):1934億円

7位;ディー・エヌ・エー
時価総額(2006年1月時点):1913億円

8位;ソネット・エムスリー
時価総額(2006年1月時点):1864億円

9位;サマンサタバサジャパン
時価総額(2006年1月時点):1789億円

10位;シンプレクス・インベストメント
時価総額(2006年1月時点):1577億円

現在(2014年2月)のトップ10
1位:コロプラ
時価総額(2014年2月時点):3421億円

2位:サイバーエージェント
時価総額(2014年2月時点):2882億円

3位:タカラバイオ
時価総額(2014年2月時点):2149億円

4位:ペプチドリーム
時価総額(2014年2月時点):1360億円

5位:ミクシィ
時価総額(2014年2月時点):949億円

6位:ユーグレナ
時価総額(2014年2月時点):818億円

7位:アドウェイズ
時価総額(2014年2月時点):744億円

8位:ナノキャリア
時価総額(2014年2月時点):688億円

9位:じげん
時価総額(2014年2月時点):669億円

10位:エナリス
時価総額(2014年2月時点):652億円

※「 ライブドア・ショック直前のトップ10」の社名は当時のもの。時価総額はそれぞれ2006年1月13日現在、2014年2月24日現在。赤字の銘柄は現在もマザーズに上場している銘柄。

インデックスファンドの買いも見込めるマザーズの有望株5

サイバーエージェント(東マ・4751)
株価(売買単位):4675円(100株)
2000年3月にマザーズ上場。上場から14 年で、時価総額などから見ても東証1部への市場変更の最有力銘柄。

ACCESS(東マ・4813)
株価(売買単位):752円(100株)
2001年2月にマザーズ上場。2月時点でタワー投資顧問が発行済み株式数の12%強を保有している。

エリアリンク(東マ・8914)
株価(売買単位):127円(100株)
マザーズに上場した2003年8月から10年経過。市場変更なら不動産関連の低位株としても人気化の公算大。

オンコセラピー・サイエンス(東マ・4564)
株価(売買単位):212円(100株)
2003年12月にマザーズに上場しており、今や老舗ともいえる上場バイオベンチャー。赤字体質がネックか。

アプリックスIPホールディングス(東マ・3727)
株価(売買単位):2141円(100株)
2003年12月にマザーズ上場。KDDIが同社の位置情報サービスを会議室の予約・管理に採用、収益拡大か。

※株価は2014年3月10日現在。

【今月のファンダ師匠】
岡村友哉(YUYA OKAMURA)
金融ジャーナリスト

証券会社の営業、金融情報ベンダーでアナリストを務めた後、現職。日経CNBCでキャスターもこなす。



この記事は「WEBネットマネー2014年5月号」に掲載されたものです。