本当は国立が嫌だった岡崎
2010年南アフリカ・ワールドカップではデンマーク戦の1得点のみ。しかも本田圭佑がきちんとお膳立てして決めさせたダメ押し点だった。
岡崎慎司はその後、素晴らしい進歩を遂げた。ザックジャパンで最多得点の21点を挙げるとともに、この日の2ゴールで日本代表通算得点で38点と、とうとう歴代3位となったのだ。
香川真司からのパスに抜け出し、4分に先制点。「相手が最初から僕のことを見てなかったです」と笑いながら、「真司は僕が左で(ボールに)触れれば左側が空いていたと言っていて、僕も逆サイドを見ながらプレーできればよかったと思います」と反省も忘れない。「ボールが揺れて落ちたのでトラップに失敗したのですが、諦めずに詰めてよかったと思います」と持ち前の粘り強さを発揮できたことに満足感をのぞかせた。
2得点目は、本田からのダイレクトパスを予測して走り込み、シュート。GKがファンブルしてそのままゴールに飛び込んだ。
「圭佑がよくあそこを見ていてくれました。自分もいつもあのパスを出された位置に入れるように準備しているので、それがゴールになりました。でも運も50パーセントあったと思いますね。あのゴールが入ったというのは、(これまで歴代3位だった現日本サッカー協会技術委員長の)原(博実)さんを抜けということだったのでしょう」
そう言うと岡崎は明るく笑った。
どうして岡崎はこんなにパスを出してもらいやすいのか。「自分がハッキリ動いているので出すほうも判りやすいのだと思います。でも、出してもらって何もできなければ、そこで終わってしまうので、敢えて引かずに自分の持ち場で勝負すると毎日取り組んでいます」
日々、自分を鍛え上げているこの姿勢が進歩を生み、味方の信頼を勝ち得ているのだ。パスを出すのは、「岡崎ならやってくれる」と期待されているからに間違いなく、そして岡崎は味方の思いをゴールに結実してきた。
だが、この日は岡崎がいなくなった後半、相手守備ラインの裏に走り込む選手が少なくなり、日本は停滞した。その状況を岡崎はどう感じたか。
「守備になったとき、取れなくてもプレッシャーをかけようということにしていて、そこで行ったら(酒井)宏樹のところを狙われました。行かなければよかったな、とみんなと反省しました。引くときは完全に引いたほうがいい。何となく点を取りに行って、90分間みんなが規律を守ってという試合じゃなかった」
「だけど(各個人の)状態確認、チームのコンディションもあるので、今日はまず試合をできたということがよかったと思います。みんなで話し合えたし、集まれたことだけで収穫があった。あとは各クラブに帰って、ここで考えたことをやりながら自分の色を出していくことになるのでしょう」
岡崎の言葉は昔からいつも実直だ。決して奢らず、謙虚さがにじみ出る。「自分は今季クラブでやってきたことを出せた」と、だからみんなもできるはずだと信じているのだ。
岡崎の言葉のもう1つの特長は、素朴であること。この日のゴールも含めて国立でよく得点するのではないか、と聞かれたときの答えが、本当は一番岡崎らしかったかもしれない。
「国立はゴールを決めているというより、苦い思い出が多いんです。Jリーグでは3回カップ戦で銀メダルを取っているし、高校選手権でも2回負けているし。だから国立に来ると力んじゃうというか……。今日はいい形で終われてよかったと思います(微笑)」
【取材・文/日本蹴球合同会社 森雅史】
岡崎慎司はその後、素晴らしい進歩を遂げた。ザックジャパンで最多得点の21点を挙げるとともに、この日の2ゴールで日本代表通算得点で38点と、とうとう歴代3位となったのだ。
香川真司からのパスに抜け出し、4分に先制点。「相手が最初から僕のことを見てなかったです」と笑いながら、「真司は僕が左で(ボールに)触れれば左側が空いていたと言っていて、僕も逆サイドを見ながらプレーできればよかったと思います」と反省も忘れない。「ボールが揺れて落ちたのでトラップに失敗したのですが、諦めずに詰めてよかったと思います」と持ち前の粘り強さを発揮できたことに満足感をのぞかせた。
「圭佑がよくあそこを見ていてくれました。自分もいつもあのパスを出された位置に入れるように準備しているので、それがゴールになりました。でも運も50パーセントあったと思いますね。あのゴールが入ったというのは、(これまで歴代3位だった現日本サッカー協会技術委員長の)原(博実)さんを抜けということだったのでしょう」
そう言うと岡崎は明るく笑った。
どうして岡崎はこんなにパスを出してもらいやすいのか。「自分がハッキリ動いているので出すほうも判りやすいのだと思います。でも、出してもらって何もできなければ、そこで終わってしまうので、敢えて引かずに自分の持ち場で勝負すると毎日取り組んでいます」
日々、自分を鍛え上げているこの姿勢が進歩を生み、味方の信頼を勝ち得ているのだ。パスを出すのは、「岡崎ならやってくれる」と期待されているからに間違いなく、そして岡崎は味方の思いをゴールに結実してきた。
だが、この日は岡崎がいなくなった後半、相手守備ラインの裏に走り込む選手が少なくなり、日本は停滞した。その状況を岡崎はどう感じたか。
「守備になったとき、取れなくてもプレッシャーをかけようということにしていて、そこで行ったら(酒井)宏樹のところを狙われました。行かなければよかったな、とみんなと反省しました。引くときは完全に引いたほうがいい。何となく点を取りに行って、90分間みんなが規律を守ってという試合じゃなかった」
「だけど(各個人の)状態確認、チームのコンディションもあるので、今日はまず試合をできたということがよかったと思います。みんなで話し合えたし、集まれたことだけで収穫があった。あとは各クラブに帰って、ここで考えたことをやりながら自分の色を出していくことになるのでしょう」
岡崎の言葉は昔からいつも実直だ。決して奢らず、謙虚さがにじみ出る。「自分は今季クラブでやってきたことを出せた」と、だからみんなもできるはずだと信じているのだ。
岡崎の言葉のもう1つの特長は、素朴であること。この日のゴールも含めて国立でよく得点するのではないか、と聞かれたときの答えが、本当は一番岡崎らしかったかもしれない。
「国立はゴールを決めているというより、苦い思い出が多いんです。Jリーグでは3回カップ戦で銀メダルを取っているし、高校選手権でも2回負けているし。だから国立に来ると力んじゃうというか……。今日はいい形で終われてよかったと思います(微笑)」
【取材・文/日本蹴球合同会社 森雅史】