このほど中南米出身者では初のローマ法王になったフランシスコ1世だが、新聞報道によると彼はサッカー好きのようだ。
 少年時代からブエノスアイレスのサッカーチーム、サン・ロレンソを応援。クラブカラーの赤と青のエンブレムを持って写真撮影にも応じている。

 キリスト教徒でないボクには、ローマ法王にも、ましてフランシスコ1世にも縁もゆかりも無いが、趣味がサッカー観戦ということには親しみを覚える。野球とサッカー、スポーツの種類は異なるが、新ローマ法王は庶民派のようだ。

 スコット・ピトニアック著「ヤンキー・スタジアム物語」(早川書房)は、米ニューヨーク・ヤンキースが2008年まで本拠にしていた旧ヤンキー・スタジアムを偲ぶエッセイで、著者はもちろん、ヤンキースの歴代選手、相手チームの選手、球団関係者、ファンによるスタジアムの思い出がつづられている。

 ニューヨークのロチェスター教区で司教を務めていたマシュー・クラーク氏の思い出は、1979年10月に旧ヤンキー・スタジアムで行われたミサ。新ローマ法王の2代前のヨハネ・パウロ2世が出席し、8万人もの信者が集まったが、クラーク司教はローマ法王との対面とともに、旧ヤンキー・スタジアムの様子にも感激した。
 クラーク司教は、自分がヤンキースのファンであることを告白。ヨギ・ベラボビー・リチャードソンギル・マクドガルドの思い出を振り返っている。
 さらに「ビショップ(司教)仲間と一緒に、ヤンキースのクラブハウスで着替えをしました。あそこに入れるなんて、あとにも先にも初めての経験です。私がジャケットなどを入れるのに使ったのは、デイヴ・リゲティという名の若いピッチャーのロッカーでした。1979年のことだから、デイヴ・リゲティも私も、今よりずっと若かった。どちらもキャリアをスタートさせたばかりでした。彼はヤンキースの前途有望なピッチャーとして、一方の私は新しいビショップとしてね」と語っている。

 憧れのヤンキー・スタジアムのクラブハウスに入れたのだから、その興奮はわからなくもないけど、司教が特定のチームのファンであることを公言していいの? ニューヨークにはニューヨーク・メッツもあるし、他球団のファンもいるよ。ボストン・レッドソックスのファンが聞いたら、怒るよ。司教なら、もっと弱いチームを愛してあげてよ、とツッコミたくなるが、こればかりは仕方が無い。
 クラーク司教は、幼少時代からヤンキースのファン。ミサでヤンキー・スタジアムを訪れた際も、子供のころ、父親に球場に連れて来られたことを思い出したそうだ。

 思えば、野球に限らずスポーツ観戦は宗教と似ている。チームやクラブに一度忠誠を誓えば、とことん献身的になる。クラーク司教はヤンキースの、新ローマ法王はサン・ロレンソの信者なのだ。