日本において企業が中国人を中途採用する場合、定着率の問題等から苦労することが多い。大企業においては、採用基準があり、人事担当者がいるので中国人の中途採用についてはあまり問題とはならないが、中小企業においては、少人数を常時中途採用することとなり、定着率の問題もあり人選に苦労する。

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日本経営管理教育協会が見る中国 第237回−下崎寛(日本経営管理教育協会会員)

 日本において企業が中国人を中途採用する場合、定着率の問題等から苦労することが多い。  大企業においては、採用基準があり、人事担当者がいるので中国人の中途採用についてはあまり問題とはならないが、中小企業においては、少人数を常時中途採用することとなり、定着率の問題もあり人選に苦労する。  私の事務所も会計事務所として十数年間中国人を中途採用してきたが、その経験から中途採用のポイントをあげてみたい。

(1)採用する中国人のビザに注意すること

 従来は市区町村が発行管理する「外国人登録証明書」が身分証明書となっていたが、2012年(平成24年)7月から入管システムが大きく変わり、「外国人登録証明書」が廃止され、入国管理局が発行管理する「在留カード」が身分証明書に変更されている。

 その「在留カード」は入国管理局が直接管理できるようになっており、在留資格、在留期間、不法就労、不法滞在等が厳格にチェックできるようになっている。

 そこで、中国人を採用するときには、入管法に適格であるかどうかのチェックとして採用する中国人に「就労資格証明書」をとってもらうことである。この証明書によって、ビザの問題のない中国人として採用できる。今問題のある外国人を採用した場合は、雇用者責任として罰則規定があることに留意すべきである。

(2)口コミで人材を探すこと

 ハローワーク等の就職斡旋会社を利用することも悪くはないが、日本にいる中国人は、出身地域でコミュニティを作っており、その友人知人のネットワークは素晴らしいものがある。○○出身のAさんの動向は、○○出身の人に聞くと大体わかる。そのくらい最近スマホ、facebookなどを利用した情報交換が密である。反対にそれくらい企業情報が漏れることとなっているので、中国人に対しては、余計な企業情報を与えないこと、安易に中国人の悪口を言わないことが肝要である。

(3)履歴書を信用しないこと

 中国人が提出する履歴書の内容については、特に中国における学歴、職歴等は確認が取れないし、その根拠として証明書を提出されても、その証明書も偽造が多いので信用ができない。同僚の中国人自身がそのように言っているし、入管の担当者も指摘している。

 また、日本語検定試験1級を持っていても文化慣習の違いをあまり理解できていないし、日本語の本当の意味を理解していない。特に、パソコンがあるために日本語の文章を一応つくれるが、日本語の本当の意味がわからないために日本語の文章が書けない。

 したがって、基本は、履歴書に頼るのではなく、6ヶ月くらいの試用期間を設け、仕事をやりながら、日本人との協調性、日本のマナー、仕事の仕方等を一から教えなければならない。日本のあいまいな言い方にも注意をする必要がある。

 写真は品川入国管理局。(執筆者:下崎寛・日本経営管理教育協会会員 編集担当:水野陽子)