新日本プロレスが復活した。今月12日のリーグ戦ではチケットが完売したという。なぜか。作家で人材コンサルタントの常見陽平氏は「元気のない日本企業よ、新日本プロレスの買収劇に学べ」と説く。

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 きてます!きてます!あ、ハンドパワーではないですよ。何度目かのプロレスブームがすぐそこにきてます!

 8月12日(日)に両国国技館で開催された、最強の男を決める夏のリーグ戦、G1クライマックスのチケットは、当日券も含めて見事に完売になりました。本当に、1枚もなかったそうです。今回で第22回となるこの大会ですが、当日券も含めて完売したのは実に10年ぶりだとか。明らかに一般のプロレスファン以外もやってきている様子です。決勝は前IWGP世界ヘビー級チャンピオン、24歳の「レインメーカー」ことオカダカズチカが、エース級外国人でありつつもダークホースだったカール・アンダーソンと対決。手に汗にぎる攻防の連続から、オカダカズチカが勝利を収め、最年少優勝記録を更新しました。

 ではなぜ、今、新日本プロレスがブームになりかけているのでしょう? ここ数年、新日本プロレスのマット上は充実し続けていました。もう新日本プロレスのリングには猪木も長州も藤波もいません。蝶野正洋も退団しています。棚橋弘至、中邑真輔といった新世代のスターたちがリングを盛り上げています。いや、棚橋、中邑だけではありません。20代、30代の新しいスターたちが育っています。その上、鈴木みのる、小島聡といった以前からのスターレスラーもおり、盛り上がりを見せています。それぞれキャラが立っていて、得意のムーブ、決め台詞で盛り上げています。私も思わず毎日、家で妻を相手に中邑真輔のボマイエという技を決める前のムーブを真似してしまいます。試合内容も、一時迷走していた頃の格闘技色は薄れ、プロレスならではの攻防、面白さを追求しています。記者会見もYouTubeで配信。主要選手はほぼ全員、Twitterをやっています。

 でも、それだけではないのです。新日本プロレスを今年、カードゲームのブシロードが買収したのです。以前はTVゲームのユークスが株を保有していました。ブシロードが株主になってから、広告なども派手に行うようになりました。それこそ、今回の大会の前には、山手線に交通広告が掲載され、話題になりました。あまりにも人相の悪いレスラーが審査を通らなかったとか、乳首はダメだったなどの説がネットで流れていましたが・・・。ただ、株主が変わったことによって、カードゲームを売らんかなというモードになるかと思えば、そうではなく、実によいバランスになっていると感じます。

 企業買収というとネガティブな印象がありますが、実際はそうでもありません。株主が変わることにより、元気になる企業もよく見聞きしてきました。私自身、企業買収ファンドの方と仕事をしたことがあるのですが、ハゲタカというイメージがつきがちな彼ら、意外と人格者です。もちろん、既存のトップ層を入れかえる、不採算部門を切り離すなどのこともするわけですが、従業員のモチベーションはかなり意識するのですよね。

 プロレスファン、エンタメ業界関係者と話す度に「新日本プロレスはブシロードに買われてよかったね」という話になります。ブシロードの側としても、買収するからにはコンテンツとしての魅力を感じているのと、今後の伸びを期待できるからでしょう。ハッピーな企業買収というのは、ありえるのです。

 ソニーやシャープなど日本の電機メーカーの不振が伝えられます。日本人として応援したいのですが、素敵な株主に期待するのも手だと思ったりします。皆さん、新日本プロレスの快進撃に学びましょう。