漠然とした不安を持つなか改めて人生設計を立て直し、新たな道を歩み始めようと決心するのが「27歳」なのです。

もちろん、その時期には個人差がありますので、だいたい27歳〜34歳くらいを想定すると、成人するのはおおよそ30歳ということになりますね。

鈴木 : この「30歳成人時代」はいつ頃から始まったと分析されますか?小島 : 私は、この現象は電化製品が日常生活に入り込んだ頃から始まっていると考えています。

便利さと清潔さを重んじ、効率化を追求するうちに、大切なコミュニケーション術を学ぶ機会を失ってしまったのではないかと…。

それこそ昔は、晴耕雨読、本も回し読みしながら勉強していました。

携帯電話のない時代、会話するにも家族の誰かに繋いでもらわないと、電話は通じなかった。

人とのつながりに、必ず誰かが介在したり、そこに和が生まれていたはずです。

今はその機会を失ってしまっていますよね。

鈴木 : 確かに。

昔は、友達に電話するのでも、繋いでもらう際に、その子の家族の様子をうかがい知ることができましたし、大人と子供が交流する機会がもっとありましたよね。

小島 : 子供は、様々な大人と接するなかで、閉鎖的に守られている子供の世界から、大人のいる広い社会への踏み出し方も学んでいくものなのです。

そこで、自立心も芽生えてきます。

ただ、この「30歳成人」というテーマは日本特有の問題でもないのです。

全世界的なものになってきています。

その点について、斉藤先生は次のように語っていらっしゃいます。

鈴木 : 子供の自立には、親の夫婦関係が大いに影響しているようですね。

小島 : そうですね。

夫婦関係が「お父さん」「お母さん」の関係のままであるために、今の親子関係から抜け出せないのではないかと思います。

「30歳成人」時代が定着してしまった理由のひとつですね。

そして、全世界的な広がりを見せているという現象のひとつに、やはりひきこもりの増加があります。

その点についても斉藤先生が指摘されています。

小島 : この斉藤先生のお話にある「人づきあい」で言えば、私は息子をよく人の家に泊まりにいかせていました。

数日間、外を泊まり歩いていた息子がやっと家に帰ってくると、「やっぱり家がいい」と言うのです。

人の家に泊まった時の居心地の悪さが逆に自分の家庭の良さを再認識させてくれます。

そういったことも自立を促すひとつの流れをつくりますね。

鈴木 : 人づきあい、人とのコミュニケーションの中で、子供は自然と自立心や社会への適応力を会得していく…というのが本来あるべき姿なのかもしれませんね。

小島先生はご自身のコミュニケーション能力を存分にずっと発揮されてきたのでしょうか?小島 : いいえ。

実は私は昔からコミュニケーション能力はあまり高くないのです。

群れるのも得意でありませんし(笑)。

ただ、コミュニケーションが悪くならないようにしようと心がけてはいます。

要はコミュニケーション不全がどういう時に起こるのかを知っていればいいのです。

その点については、具体的に本に記してあります。

鈴木 : とてもよくわかります。

「ひきこもり」などで親子関係の在り方について悩んでいらっしゃる方は、これらを見直してみる必要があるのでしょうね。

小島 : そうですね。

そして、「これは家族内の問題なのだから他人には関係ない」と決めつけたり、分担の意識を持ったりせずに、ぜひ私たち専門家を頼ってきてほしいと思います。

鈴木 : さらにこの5つのパターンは親子関係や夫婦関係のみならず、会社の上司と部下との関係など、ビジネスシーンでも当てはまる状況と言えそうですよね。