FW:ビジャ             ペドロ
MF:        メッシ
MF:  イニエスタ ブスケツ シャビ
DF:アビダル  プジョル  ピケ  アウヴェス
GK:        バルデス

○ バルサとグアルディオラの哲学に適合する選手を揃える難しさが落とし穴に。


高いポゼッション率(ボール支配率)を保つには、相手がボールを支配している(保持している)時間を短くする必要がある。という事は、自チームの選手の個々のボールキープ力が高く、また、チーム全体としても高い連携力でパスを繋げ続けられる、という事が必要になる。しかし、実はそれだけでは50%であり、残りの半分の必要とされる要素は何かと言えば、すぐに相手のボールを奪い返せるボール奪取能力、つまり、個々の選手のボール奪取能力の高さと、チーム全体としてのハイプレスの威力の高さ、という事ですね。

そして、グアルディオラがバルサで黄金期を築く、その重要な第一歩となったのがハイプレスの意識の徹底で、個の能力の高い選手たちに規律を徹底させる事ができれば、やはりそういうチームが弱いはずがない。つまり、個の力に組織の力を上乗せする、その事に成功した時点で、グアルディオラのバルサの栄光は既に見えていたと言っても過言ではありませんでした。しかし、問題は、個の力もあって組織的にも動ける、そういう選手を揃えられるのか、という部分ですね。

特に、バルサの哲学(志向するサッカー)を理解しそれに適合できる選手で、尚且つ、守備(ハイプレス)に対して献身的である、という条件までプラスされると、その振るいの網の目はとても大きくなってしまい、結局、グアルディオラのバルサが最も輝かしい完成度を見せたのは、上記に示した11人のメンバーが揃い、更には、そのメンバーたちのコンディションやパフォーマンスが総じて好調だった一時期、という事になると思います。そして、グアルディオラのバルサが最も苦しんだ部分は、やはりそこであったように思います。

エトー、イブラヒモビッチ、アンリ、など、彼らのような一流選手でもフィットせず、そこにはビジャの移籍加入やペドロの台頭などを待たなければならなかった。そして更には、その条件の厳しさから、グアルディオラのバルサは少数精鋭での戦いを余儀なくされ、ベストメンバーと言える選手たちが相次いで怪我をしたり、疲労の蓄積からコンディションやパフォーマンスを落とすようになると、それがグアルディオラのバルサの終焉の鐘の音になりました。1つの哲学を貫く、更にそれで強く美しくある、その難しさを強く感じます。

オリヴェイラの鹿島アントラーズもそうでしたが、少数精鋭で1つの高い完成度を見せたチームは強い、という反面として、怪我やコンディション不良などでベストメンバーが揃えられなかったり、世代交代の時期が到来した時には、どうしても大幅にチーム力が落ちてしまう事になる。今季のグアルディオラのバルサが大幅にチーム力を落としていたのか? それは否ですが、リーガエスパニョーラやCLで優勝を逃す程度には落ちていた、という事は言えると思います。サンチェスやセスクの加入でもそれを防げなかった、という部分にその厳しさを感じました。


○ メッシを中央で起用した事がターニングポイント。


そして、今度は細かい戦術面から言うと、グアルディオラのバルサが黄金期を向かえるターニングポイントとなったのが、メッシのCF起用だったと思います。それまでは右のウイングとして起用され続け、そのポジションでのプレーが大活躍の出発点ではありましたが、やがてそれがメッシ封じと共に機能性を落とし始めていました。そこでグアルディオラが考えたのが、メッシをサイドではなく中央で使う、という事で、その効果は絶大でした。