日本人の国民食として、長きにわたり親しまれてきたウナギとマグロ。今年に入り、このふたつが食べられなくなる可能性が浮上してきた。

 例えばウナギ。江戸時代から日本人のタンパク源だったウナギは、今、かつてないほどに高騰している。埼玉県にある鰻料理店は、その窮状をこう訴える。

「従来は1人前に1尾を使っていた。でも、今はウナギが高すぎて、これじゃ商売が成り立たない。1尾で2人前を作ってる」

 いったい何が起きているのか。専門紙『日本養殖新聞』の高嶋茂男記者はこう説明する。

「シラスウナギ(ウナギの稚魚)の3年連続の不漁がほぼ確実視されています。これによってウナギの価格は暴騰。相場でいえば、国産(愛知県一色産)は昨年12月から1kg(5尾相当)1300円も値上げになっています。大不漁年といわれた1998年の国産相場は1kg2600円でしたが、今は4900円。次元が違います」

 しかも、不漁の原因がはっきりしないというから深刻だ。

「親魚の乱獲、稚魚の乱獲、ダム建設などの環境破壊、海洋環境や稚魚の回遊時期の変化など諸説あります。天然ウナギ漁を生業にする人が『子供(稚魚)ばかり獲りすぎなんだよ』と声を荒らげれば、シラス漁を生業にする人は『いや、あんたたちが欲張りすぎなんだ』と反論する。立場立場で言うことが食い違っています」

 海外産ウナギも同様の状況にあり、「台湾産、中国産とも昨年12月から1kg1600〜1800円の値上げ。両国産とも相場は国産より高く、特に中国産は1kg7000円の手前まで暴騰している。まさに異常事態」と高嶋記者は言う。

 一方、マグロは大型船の巻き網漁による乱獲が原因で不漁となっている。沿岸マグロの延縄漁で漁獲高日本一を誇る宮崎県日南市の漁協では、2004年には年間969本のクロマグロを水揚げしていたが、昨年はわずか81本にまで激減している。

 同漁協では、マグロが抱卵して肉質が低下し、魚価が下がる6月下旬あたりからお盆前までを船の“整備時期”に定め、休漁している。だが最近、外国船がその時期を狙って乱獲するようになった。日南市の漁協関係者が憤る。

「ここ数年、われわれが休漁している間に南方海上に外国船が現れ、巻き網で抱卵個体も含めたマグロを一網打尽にするケースが目立ちます。『主に台湾籍の船が出現している』という乗組員からの目撃情報も報告されています。巻き網という漁法自体はわれわれと同じですが、資源が減少するほどの乱獲は納得できません!」

 マグロ激減の要因がすべて外国船による乱獲とは断定できないが、ウナギにしろマグロにしろ、今、何らかの対策を講じなければ、いずれ本当に日本の食卓から消えてしまうかもしれない。

(取材/頓所直人、興山英雄)

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