29日にスタッド・ド・フランスで行なわれるフランス対クロアチア戦。親善試合だけに、4日前のユーロ2012予選ルクセンブルク戦と違って、見どころに乏しい一戦であるのは否めない。

 強いて挙げるなら、W杯後初めて代表に復帰したエヴラとリベリが、フランスのサポーターにどのように迎えられるかが注目に値する。これまでの仏サポーターの態度を見れば、容赦ないブーイングが巻き起こることも考えるが、2人が今後も代表でプレーをつづけていくには避けられない通過儀礼となる。

 この試合でもうひとつおもしろいのは、フランスのローラン・ブラン監督とクロアチアのスラベン・ビリッチ監督に浅からぬ因縁があることだ。2人が選手時代の98年W杯準決勝、ゴール前のもみ合いからブランがレッドカードを受けて退場となった場面が思い出される。

 しかしスロー再生を見れば、マークを振り切ろうとしたブランの左手はほとんど相手に触れていなかったのがわかる。それをあたかも平手打ちを食らったかのように大げさに倒れ込んだのが、現在クロアチア代表の指揮を執るビリッチだったのだ。ブランはこの結果、W杯決勝という晴れの舞台に立つことができなかった。ちなみに98キャップというブランの長い代表キャリアの中で、これが唯一のレッドカードだった。

 今回ビリッチ監督はこの13年前の出来事について、レキップ紙に「非難されるべきはブラン。(マイク・)タイソンのようにとは言わないが、彼はたしかに私を叩いたんだ。これでこの話は終わりだ」と自身の“シミュレーション”を否定した。

 その一方でビリッチ監督は、「ブランは素晴らしい男。彼なら欧州のビッグクラブと契約することだってできたはずだが、危機にあったナショナル・チームを救うほうを選んだ。心から国を愛する気持ちがなくてはできないこと。脱帽だね」と敬意を表することも忘れていない。

 指揮官となった2人が、13年前の因縁を越えて、がっちりと握手を交わす場面に注目したい。