W杯出場メンバーは23人。その中に通常、3人のゴールキーパーを用意する。3人目のGKとなると、あとの2人がケガや出場停止とならない限り、出番はほとんどない。しかしそんな第3のGKが大会中に果たす役割は大きいという。フランスが98年に優勝したとき、その役割に徹した陰の功労者、リオネル・シャルボニエ氏がレキップ紙に解説した。

 シャルボニエ氏によると、まずはリーダーとしての資質が求められる。「第3キーパーというのは、ただの数合わせじゃない。レベルに達していない選手だとか、控え室の盛り上げ役というのでもない。第3のGKは、精神的なリーダーであるべきで、レギュラーの選手たちのやる気を倍加させるような人物でなくてはならない」という。そのためには、代表その他での豊富な経験と同時に、エゴを出さずチーム全体に気を配る心構えが求められる。

 次にコーチとしての資質。「これで監督、アシスタントコーチのほかにもうひとりアドバイス役が増える。キーパー練習のときだけやればいいわけじゃない。練習では人の2倍は働かなくちゃいけない。他の2人のGKが疲れても、誰かはゴールマウスにいないといけない。つねにシュートを打ちたい選手たちがいるわけだからね」。選手たちが次々と繰り出すシュートを全力で阻み、ゲキを飛ばす存在が求められるわけだ。

 最後にチームの模範としての存在。「出番がないからといって誰かがクサってしまったら、チーム全体の士気に影響する。だからもっともチャンスの少ない第3のGKがプレーする意欲を前面に出して、みんなの手本を示すべきだ」。ベンチにいるメンバーがやる気をみなぎらせているような雰囲気を生み出す存在ということになる。

 シャルボニエ氏は、こうした条件をもとに、いまのフランス代表の3人目のキーパーに誰がふさわしいかを検討した。今季のリーグ・アンでめざましい活躍をしたステファン・リュフィエ(モナコ)、オリヴィエ・ソラン(オセール)は、代表経験がまったくないのがネック。やはり経験者に絞られるのはたしかなようだ。

 ここ1年以上、フランスの第3キーパーはセドリック・カラソ(ボルドー)だった。すでに自分の役割は熟知している感がある。ただし、シーズン終盤はケガに苦しみ、チームは不振に陥った。国際的な舞台でプレーした経験も少ない。自信の面でやや不安がある。

 調子と経験で申し分ないのは、ユーロ2008予選で第3のGK役を経験しているミカエル・ランドロー(リール)。今シーズン加入したリールでは開幕10試合はケガで欠場したが、復帰してからチームは快進撃をつづけた。守護神ロリス、控えのマンダンダよりずっと年長のランドローが裏方に徹することができれば、チームの安定感は増す。

 一方でシャルボニエ氏は、ユーロ2008の第2キーパー、セバスチャン・フレイ(フィオレンティーナ)には疑問符をつける。実力、リーダーとしての資質は十分だが、精神的には完全な守護神タイプ。控えでいることに満足できないプライドがあり、裏方には向かない。ドメネク監督との確執もある。

 シャルボニエ氏は、カラソが一歩リード、ランドローが追う状況と見る。あとはこれまでに代表チームで果たしてきた2人の役割をドメネク監督がどう評価しているかにかかる。