元フランス代表DFビシェンテ・リザラズ氏がパーソナリティーを務めるラジオのサッカー番組(RTL局)で12日、ジネディーヌ・ジダン氏がゲストに招かれ、2006年W杯の思い出を語った。

 ジダン氏といえば、誰でも思い出すのが現役最後の試合となった同大会決勝のイタリア戦でマルコ・マテラッツィの胸に頭突きを食らわせ退場となったシーン。リザラズ氏に「あれは自殺に等しい行為だったのでは」と問われると、ジダン氏は「多くの人にはわけがわからなかっただろうが、感情が高ぶりすぎたせい」と説明する。

 現役最後の大会に臨み、「リラックスできてはいたけど、キャプテンという立場や、これで最後という思いで緊張もしていた」と振り返るジダン氏。「この言葉が適切かどうかわからないが、何かに取り憑かれていた。あのW杯に向けてそれまでの総決算を準備する名誉を感じていたことだけは確かだ。1月から半年にわたって、それは入念な準備をした。それ以外、何も頭になかった」と尋常ならざる入れ込みぶりだったことを明かす。

 それゆえ決勝での頭突きは、いまとなっては「たぶん感情的になりすぎた」と感じる。しかしマテラッツィに二度と会いたくないという思いは変わらない。「あれは挑発で、それがひどい行為だということは忘れてほしくない。自分から挑発したことは一度もないんだ。いま思うとあんな挑発に乗るべきではなかったね」と3年以上たってやや後悔をにじませる。

 最後のゴールとなったペナルティーキックの蹴り方は、ユベントス時代からよく知るブッフォンが相手だったことで咄嗟にひらめいた。「相手は世界屈指のゴールキーパー。僕はいつも同じサイドにしかペナルティーを蹴らないんだけど、彼はそれを知っていた。結果的にやっぱり彼はそっちに跳んだよね。蹴るまでに考える時間は10秒。これしかないだろう、って心に決めたんだ」と語る。結果はコースを読んで跳んだブッフォンをあざ笑うかのようにふんわりと浮かせた“パネンカ”。しかし当のジダン氏にとっては「遊ぶ余裕なんてまったくなかった」という渾身の一撃だったようだ。