巷の散歩ブームの反映なのか、テレビ界でもいわゆる「街ブラ番組」が妙に元気だ。画面から漂う「和みオーラ」が忘れられずについチャンネルを回してしまう、そんな不思議な力がこの手の番組には確かにある。テレビ朝日の『ちい散歩』(月〜金曜9時55分〜10時30分)、日本テレビの『ぶらり途中下車の旅』(毎週土曜9時30分〜10時30分)などがその代表格だが、中でもひときわ異彩を放つのがテレビ東京の『モヤモヤさまぁ〜ず2』(毎週金曜24時53分〜25時23分)だろう。

この『モヤモヤ〜』、他の街ブラ番組との大きな違いはその番組づくりのスタンスだ。北新宿・北池袋・北品川・北赤羽・東北沢など、長らくテレビ界では見どころが何もないとされほとんど存在を無視されてきた地味な街を逆に「何があるのか分からずモヤモヤする場所」としてピックアップし、そこにさまぁ〜ずの2人と同局の看板女子アナ・大江麻理子とで何があるのかを確かめにあえて乗り込んでいく、という逆転の発想に基づく独自のスタイルをとっている。舞台となるのは本当にどこにでもある飾り気ゼロの商店街や住宅街ばかり。だがそこにあるごく普通の駄菓子屋やおもちゃ屋や文房具屋(そうした店の軒先のガチャガチャやゲーム機を3人で遊び倒すのが番組の恒例だ)も、ツッコミ上手であるさまぁ〜ず達の手にかかるとたちまち面白さ満点の見逃せない「モヤモヤスポット」に早変わりしてしまうからすごい。そしてカメラは、3人に便乗して若干悪ノリ気味に街をイジクリ回しながらも、そこに生きる名もない愛すべき人々の姿を生き生きと写し出していくのである。
そんな独特のテイストが視聴者の心を掴んだのだろう。2007年の正月特番として誕生した(同年春にレギュラー化)この番組の歴史は、数度の改変期(その度に番組内で「打ち切りか?」と自虐ネタにしていた)の波をどうにかこうにか乗り越え、気がつけば間もなく3年めに突入しようとしている。
「何もない」というのは思い込みに過ぎない。たとえ世に知られた名所や名店の類はなくとも、人が住み日々の暮らしを営んでいる以上そこには必ず「何かがある」のだから。それをいかに掘り出して「見て楽しめる」ものに仕上げられるかが、クリエーターの腕の見せ所だ。「世界一ドイヒーな(ヒドイの意)番組」と自称しているがこの『モヤモヤ〜』、一見グダグダなようで実は非常に高度なセンスの持ち主たちによって作り出されているのである(誉めすぎか?)。
本質的に同局の『出没!アド街ック天国』(そう言えばこちらにも大江アナが出演している)のような「看板番組」にはなりようもないが、その不思議な魅力と存在感は今や確実にテレビ界で独自の位置を占めている。このまま「長寿番組」化することを願う。
(編集部:綱川朋彦.)

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