「パラダイス・ナウ」自爆テロに向かう48時間の葛藤と友情を描く

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昨年度アカデミー賞にノミネートされるも、受賞反対運動が勃発した話題作!

『パラダイス・ナウ』はパレスチナ人監督ハニ・アブ・アサドがイスラエル人プロデューサーらと手を組み、ヨーロッパ各国との共同製作というかたちで作りあげた作品で、イスラエル、パレスチナを含む世界78ヶ国で上映され論争を引き起こしています。
ゴールデン・グローブ賞受賞により大きな波紋を呼び、第78回アカデミー賞外国語映画部門にノミネートされましたが、アカデミー賞の授賞式前には自爆攻撃により亡くなった人のイスラエルの遺族たちから、「テロを支持する映画」ということでノミネート中止の署名運動が起きました。

映画は、パレスチナの幼馴染みの二人の若者が自爆テロに向かう48時間の葛藤と友情を描いた物語で、何故自爆攻撃という行動を起こすのかという「自爆攻撃」と称するニュースからは見えてこない、複雑な状況や今迄語られる事のなかった自爆攻撃者の葛藤と選択を描いています。

撮影は、イスラエルに対する抵抗運動が最も激しく、外国人が容易に入ることのできないというイスラエル占領地のヨルダン川西岸地区の町ナブルスで行われました。毎日のように戦闘があり、ミサイルが飛んで来たり、撮影クルーの一人が誘拐されたり、映画を誤解した武装勢力に脅されたり、困難がつきまとったといいます。
「映画で世界が変えられるとは思っていないが、私は映画という美しい文明で、軍隊や戦争などという醜い文明に抵抗しようとしている。この作品を観た人々に、少しでも疑問を投げかけることができたらと思います。“知る”ということこそが暴力の連鎖をくい止められるのです」とアサド監督が語るように、この作品でパレスチナの現状を知ってほしいと思います。

■ストーリー
イスラエル占領地のヨルダン川西岸地区の町ナブルス—貧困で人々は苦しみ、時折ロケット爆弾が飛んでくる。幼馴染みのサイードとハーレドは、お茶を飲んだり水パイプを吹かし、ナブルスのほぼ全ての若者がそうであるように、暇をもてあましている。自動車修理工として働いているものの、そこには未来も希望もなく、貧しい家族の生活を助けるためにできることは何もない。閉塞感とフラストレーションと絶望がないまぜになった、どん底の生活。ナブルスは四方八方、すべてをコンクリートの壁と有刺鉄線で囲まれている。何もない、誰にも顧みられずに深まっていくだけの貧困が街を覆っている。ふたりの生活の中心にあるのは、占領という事実だけだ。ある日、サイードは自爆志願者をつのるパレスチナ人組織の交渉代表者ジャマールに、「君とハーレドは明日、テルアビブで自爆攻撃を遂行することになる」と告げられる…。

○キャスト:カイス・ネシフ、アリ・スリマン、ルブナ・アザバル、アメル・レヘル、ヒアム・アッバス、アシュラフ・バルホウム 他
○スタッフ:ハニ・アブ・アサド(監督/脚本)、ベロ・ベイアー(脚本)、アントワーヌ・エベルレ(撮影)
○オフィシャルサイト:http://www.uplink.co.jp/paradisenow/
○公開日:2007年3月10日より、東京写真美術館、アップリンク・ファクトリーにて公開!
仏・独・蘭・パレスチナ/2005年/90分/35mmシネスコ/カラー/オリジナル言語:アラビア語

■宣伝担当から一言
アップリンク 石井雅之 20代 男性
好きな映画のジャンル:ドキュメンタリー、邦画バイオレンス
思い出に残る映画:怪奇!!幽霊スナック殴り込み!
一言:自爆攻撃者が決行(自殺)する時何を思うのか……彼らも僕らと同じ、弱くて脆い「人間」なんです。