去るのはゴディンだけではない。アトレティコの32歳定年制は妥当?

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文 木村浩嗣

ゴディンがアトレティコのファンに別れ

 13日のセビージャ戦後、ディエゴ・ゴディンのアトレティコ・マドリー退団セレモニーが行われた。すでに記者会見で退団は発表済みだったが、ホームでの最終試合でファンへのお別れをしたのだった。

 33歳のベテランだが、まだまだやれる。セビージャ戦での先発を含め出場29試合はDFではチームナンバーワン、インテルへの移籍もほぼ決まっている。余力はあり、本人も残留を希望していたが、契約更新はならなかった。なぜか? アトレティコ・マドリーには「32歳以上の契約期間は1年で毎年更新」というポリシーがあるからだ。しかもクリアすべき条件として「25試合×30分以上の出場」があり、これを下回ると更新してもらえない。

 サッカー選手はケガの多い職業で、シーズンを棒に振るくらいの不幸は誰にも起こり得る。ケガで苦しんでいる時にクビでは生活の安定も何もあったものではない。だから、ゴディンが愛するクラブを捨てインテルの3年契約になびいたのは至極当然だと言える。

 過去にはガビ(現アルサッド)、フェルナンド・トーレス(現サガン鳥栖)がこのポリシーのせいで去っている。いかにレジェンドだからと言って例外は認められないのだ。現在33歳フィリペ・ルイス、34歳ファンフランの契約更新も滞っており、前者は移籍が決定的だと言われている。

実質的な“定年制”の賛否

 こう見ると、このポリシーが実質的に“定年制”として機能していることがわかる。

 ゴディン退団の報を受けたガビは「不公平なルールだ」と古巣を批判した。年齢制限というのは常に不公平なものだ。選挙権でも高齢者の運転免許取り上げでも“同じ年齢でも人によって能力は違う”という反論は常に成り立つ。この32歳定年制も同じ。ルイス・スアレスやピケは32歳だし、メッシも6月24日に32歳となる。彼らが今後は1年しか契約更新できないとすれば、バルセロナの王座はいきなり危うくなるだろう。若者好きのサッカー界で高齢化はマイナス面だけ強調されるが、ベテラン抜きではチームの安定は得られない。

 ゴディンを例外としなかったのはある意味公平だが、アトレティコの財政危機の証とも読める。昨夏のグリーズマンの年俸アップを引き金とした「売上高13位のクラブが年俸総額で6位」というのは異常な歪だ。ただその一方で、ゴディンはクラブに一銭の移籍金も残さなかった。契約更新不成立=自由契約だからだ。移籍情報サイト『Transfermarkt』によると、2500万ユーロ(約30億円)の市場価値が消えたことになる。

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