1月期の新ドラマ『初めて恋をした日に読む話』で、“元ヤンキーの高校教師”というこれまでになかった役に挑戦する中村倫也

映画はもとより、ドラマや舞台など数多くの作品で経験を積み、どんな役柄にも染まるカメレオン俳優として注目を浴びている中村倫也は、これでまた1つ話題作が増えたと言えるだろう。

今回は、中村倫也がこれまでに出演した映画12本をご紹介しよう。

中村倫也のプロフィール

高校1年生のとき、現在の所属事務所であるトップコートにスカウトされ、養成所で演技を学ぶ。2005年に映画『七人の弔』でデビュー。「ヒストリーボーイズ」(14)で舞台初主演をこなし、第22回読売演劇大賞優秀男優賞を受賞した。

2018年度上半期のNHK連続テレビ小説『半分、青い。』では、ヒロインの幼なじみである律の友人であり、ヒロインが憧れる大学生マーくん役で広く知名度をあげた。そのソフトな外見とは裏腹に、女遊びに慣れている男性を好演。女性視聴者に嫌われるどころか、逆にハートをわしづかみにした。

中村倫也の出演映画

『俺は、君のためにこそ死ににいく』(2007)

ホタルになった特攻隊員

第二次大戦末期に特攻隊基地があった鹿児島県知覧を舞台に、特攻隊員たちと食堂の女将との交流を描く。

故郷を離れ、愛する者に会えないまま命を散らした隊員たち。彼らが母親のように慕い、出撃前に会いにいったという彼女から、当時の様子を直接聞いた石原慎太郎が脚本を執筆した。彼らの最後の別れを受け止める“母”を演じたのは、昭和を代表する大女優・岸惠子。やるせない悲しみと行き場のない怒りに、心が震える。

若い特攻隊員役として窪塚洋介や筒井道隆など、当時の人気俳優が名を連ねる中、無名に近かった中村倫也の役は、「ホタルになって帰ってくるよ」というあの有名な言葉を遺して去っていった隊員。つらい別れを噛みしめ、涙を堪えながら岸惠子と会話を交わすシーンはこの作品の要だが、静かで優しく映るのは中村倫也の力だろうか。

『SPINNING KITE スピニング カイト』(2011)

金髪のバンドマン

千葉県木更津市に住む19歳の若者たちが、バンド活動をしながら自分の居場所を探す姿を描いた青春ドラマ。

時代はアクアラインの完成を目前に控えた1996年。どこかどんよりとした空気が漂う地元で、高校卒業後に進学を目指して勉強するわけでもなく、就職して社会人になるわけでもない主人公は、家族から見ると甘えているだけのダメな奴だ。そんな彼が唯一打ち込んでいるのが、仲間と続けているバンドであった。

わかっちゃいるけど、どうしようもできない。かといって、諦めもつかない。19歳は、自分に対するイライラとモヤモヤを抱える微妙な年頃だね。中村倫也は、分別をつけはじめる友人たちを見て、置いてけぼりにされたような焦りを感じたり、成功を知らされて怒りを覚えたり。でも、君にも未来はちゃんと来るよ。

『そして父になる』(2013)

どこにいる?

実際に起こった赤ちゃん取り違え事件をモチーフに、家族の絆に必要なのは、血縁関係なのか過ごした時間なのかを問う話題作。

愛情を注いで大切に育ててきた我が子が、自分の本当の子供ではなかった。突然そんな事実を突きつけられたのは、皮肉なことに対照的な家庭だった。エリート意識が嫌味だが、自身も親との葛藤を抱える父親を演じた福山雅治が適役で、次第に変わっていくのがみどころ。もう1人のラフな父親リリー・フランキーは、似合いすぎて言うことなし。

で、中村倫也である。この作品に出演しているだなんて、一見しただけではわからず。実は福山雅治の職場仲間で、模型を前に開発プロジェクトを進めているシーンでは、福山雅治の隣にいる。遠目にチラっとしか映らないが、あの柴犬に似た笑顔は間違いない。セリフなしの超チョイ役なので、ファンなら見つけると得した気分。

『風俗行ったら人生変わったwww』(2013)

軽いノリのクズ男

何事も自己完結していて、世間とうまくなじめないオドオドした29歳の童貞男が、自分を変えるため風俗に行くという物語。

「2ちゃんねる」で反響を読んだ小説らしく、担当の風俗嬢の身の上に同情し、好きになってしまったもののどうしてよいのかわからない彼が、仲間の助けを借りながら彼女を助けるという展開が、「電車男」にも通じるコメディである。誰かを守るために自分の殻を破って頑張り、生まれ変わる姿が男のロマン。

その彼女が風俗嬢になってしまった経緯というのが、まさかと思うほど典型的な転落人生で、それに深く関わっているゲス男が中村倫也である。いやもう、どうしようもなく調子のよいチンピラだが、根っからの悪人ではないだけに可愛げもあり。高音気味の声で怒鳴り、キレる演技が光る。

『海月姫』(2014)

ヤル気のない店番

男性恐怖症のヲタ女子集団が住むアパートで暮らすクラゲオタクの女性が、妖艶な女装男子と出会い、不思議な愛情を抱きあう。

ハイテンションな原作漫画をどう料理するのかに注目が集まったが、キャラの実写がソックリだったのと、菅田将暉のバッチリな女装姿が功を奏し、能年玲奈(当時)の天然演技も魅力的でヒット。のちに、別キャストでTVドラマ化もされた。

彼女がクラゲに会いにいく熱帯魚ショップ。その店で、イヤホンをしてスマホをいじりながら店番をしているのが、中村倫也である。彼は、彼女から同じ水槽に入れてはいけないクラゲのことで話しかけられるが、その過度に緊張した言動が怖くて追い出してしまう。アップになる一瞬がカッコイイ。

『やるっきゃ騎士』(2015)

スカートめくりの達人

女尊男卑を教育理念とする学園に転校してきた男子高校生が、美人の自治会長に闘いを挑むドタバタコメディ。

1980年代の少年漫画が原作なだけに、女子高校生のブルマ姿に身悶えするなどのエッチな際どさは、現代に比べると牧歌的。男子特有のみだらな妄想を力づくで禁止されるシーンも、漫画チックでむしろ微笑ましく、エロスとまではいかないレベルのあっけらかんとしたバカバカしさが、懐かしくもあり。

しかしまさか、中村倫也がこのような役を……まだ最近といってもよい作品なので、なおのこと驚く。スカートの連続めくりでウヒャー。パンツが見えてウキャー。堂々と「女の子が大好きだから禁欲は無理!」宣言をして、周りの男子から一目置かれる兄貴だが、女性ファンとしてはちょっとイタイかも。

『星ガ丘ワンダーランド』(2015)

心に傷を負った青年

駅の落とし物預かり所で働く主人公が、20年前に家族を捨てた母親が自殺したことを知らされ、改めて家族や過去と向き合うことになるミステリー。

星ガ丘という名前の駅。持ち主のわからない落とし物。閉園した思い出の遊園地。ずいぶんロマンティックなシチュエーションだなと思いきや、失踪していた母親がその遊園地で自殺しただの、突然現れて殴りかかってくる義理の弟だの、静かで穏やかな映像とは裏腹なミステリアスな展開が意外だ。

田舎の小さな駅で、持ち主の顔を想像してはイラストに描いたりする主人公。寂しそうな横顔と淡々とした話し方をする彼は、つらい過去を胸にひっそりと生きている。まだ若いのに、運命を甘んじて引き受けているような彼を中村倫也が演じ、孤独な表情が心に染みる。母親の死の謎解きから浮かび上がる真実は、ちょっと割り切れない気持ち。

『日本で一番悪い奴ら』(2016)

まともな刑事

柔道の腕を買われて北海道警察の刑事になった主人公が、覚せい剤取締法違反容疑などで逮捕されるまでの26年間を描く。

最初は正義感の強かった彼が、裏社会の汚いドロ沼に頭のてっぺんまで浸かっていく26年間である。態度も容貌もどんどん悪い方へ変わっていく様を、綾野剛が体重を10キロ増減させて熱演。悪事と不摂生でむくんだ顔と、ピンチに陥って血の気の失せた顔が交互に味わえる彼の代表作である。

取り締まる側である現役警部が、点数を上げて出世したいがために暴力団と密接な関係を持ち、覚せい剤に手を出して実刑判決を受けたという実話に基づく。そんなメチャクチャな彼と一緒にいる中村倫也は、腐った世界に咲く白い花のよう。汗と血がムンムンする男社会で、すっきりとした匂いのする良心的存在に、心が洗われる。

『愚行録』(2017)

つかみどころのない証言者

未解決の一家殺人事件を取材する雑誌記者が、人間の深い内面を探るうちに思わぬ真相にたどり着くミステリー。

登場人物たちの羨望や嫉妬などの身勝手な欲望が、証言によってじわじわと浮き彫りにされていく。いわゆる「イヤミス」だが、だからこそ妙に引き込まれてしまう魅力があるのも確か。人間が持つ裏の顔を見たい。心の闇を知りたい。出演者である小出恵介が事件を起こして“愚行”を地で行き、お蔵入りになりそうになった話題作。

中村倫也は事件のキーパーソンとなる女性とつきあっていた元恋人で、取材を受けて、昔関係のあった2人の女性がどんな人間なのかを話す。「誰も信じられない」「人間ってコワイ」と思っている観客の心をザワつかせる意味ありげな表情と、予想を裏切る崩れた笑顔がたまらない。

『3月のライオン』前篇・後篇(2017)

お気楽なキャラ

人気漫画を二部作で実写化。孤独な17歳のプロ棋士が、偶然知り合った三姉妹と心を通わせながら、厳しい将棋の世界を生き抜こうとする。

緊張感に満ちた本格的な対局シーン。笑顔の耐えない下町の温かい食事シーン。2つの異なる世界を行ったり来たりしながら、主人公は励まされ、癒され、強くなっていく。いろいろなタイプの棋士が登場するが、そのモデルは誰なのかを探りながら観賞するのも楽しい。

主人公の棋士仲間で、そこまで強くないのでライバルではなく、たまに彼を飲みに誘ったりする息抜き的存在の1人。それが中村倫也である。が、赤茶色のさらさらボブヘアにメガネというあまりの変身ぶりに、誰だかわからないかも。箸休めみたいなお気楽シーンを嬉しそうに演じている中村倫也も、なかなかよい。

『伊藤くん A to E』(2017)

無神経な男

4人の女性から受ける恋愛相談をネタに物語を書こうとしていた脚本家が、彼女たちの相手が「伊藤」という同一人物であることに気づく。

見とれるほどの完璧なイケメンだが、自己チューでものすごい勘違い男。それゆえに関わった女性たちは振り回されて次々と不幸になってしまうとんでもない展開が、ミステリー仕立てのようでユニークだ。向上心が空回りする伊藤くんを容姿端麗な岡田将生が演じて、右に出る者なし。

伊藤くんは、自分を客観視できない自信満々のイタい男。もう1人登場するのが、中村倫也演じる女心がよくわかっていない無神経な男で、こちらも結局のところ痛々しいわけで。そんな男どもとつきあった女は傷つき、学習してたくましくなる。中村倫也は、情けないパンツ姿も披露。

『孤狼の血』(2018)

仁義なき狂犬

1988年、暴力団対策法施行以前の広島を舞台に、暴力団同士の抗争と彼らを追う刑事たちの闘いを描く。

地元と新勢力二大暴力団がドンパチを始めないように、両者を行ったり来たりしてうまくバランスを取るのが主人公の仕事。しかしそこには当然のように違法捜査があり、命がかかった危険な賭けもある。役所広司がメチャクチャだけど愛嬌のあるベテラン刑事を演じ、彼の相棒となって成長する新米刑事を演じた松阪桃李は、この作品で新境地を拓いた。

中村倫也は、銃を片手に襲撃へと向かうエキセントリックなチンピラ。同監督の『日本で一番悪い奴ら』とは正反対の役である。目の色を変えて銃を構えるむき出しの中村倫也もいいが、その緊張感から一転、公衆電話ボックスに座り込んでタバコふかす姿は、女性の心をわしづかみにした。続編では多くの出番があることを期待。

いかがでしたか?

エッチなことばかり考えている高校生から狂気に満ちたヤクザまで、カメレオン俳優という異名にふさわしい出演作の数々。

そのバラエティに富んだ役柄はTVドラマでも同じで、毎回どんな顔を見せてくれるのか楽しみでしょうがない俳優の1人だ。

ブレイクして広く知られるようになってから、まだ間もない中村倫也。これからもアッと驚くような演技で、映画ファンの目を釘付けにしてほしいものである。

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