ジューダス・プリーストやドーターズ、デフヘヴン、スリープまで。ローリングストーン誌のスタッフが選んだ「2018年を代表するメタル・アルバム」トップ20作からシーンの1年を振り返る。

2018年のメタル界は活気があった。想像しうるジャンル、サブジャンル、さらに細かく分かれたジャンルのすべてが怒りと失望の深みまで入り込み、ここ数年で最も素晴らしいヘヴィなアルバムが複数生まれた。ドゥーム・バンドのスリープやヨブ、ウィンドハンドは恨みを丸出しにし、ブラック・メタルのイモータルとデフヘヴンは複雑なメロディを過剰なまでに込め、トゥーム・モールドやポータルのようなデスメタル・バンドは恨みをぐちゃぐちゃにつぶして圧縮し、メタルレジェンドのジューダス・プリーストはそこに地獄の炎を降らせた。本当に素晴らしいアルバムが多かったため、ゴーストやハイ・オン・ファイアなどのバンドが予想に反して票を集められずランクインすることができなかった。では2018年トップの”ヘヴィ・ヒッター”達を紹介しよう。

20位 ジ・アームド『オンリー・ラヴ』

このデトロイトのスクリーマー達は2ndアルバムでブラックゲイズの陽の面に、昔ながらのハードコアの荒々しい叫び声とエレクトロノイズの陽気なファズ、ハスカー・ドゥの意気揚々としたメロディをミックスした。コンヴァージのドラマー、ベン・コラーがこのとっ散らかったハッピーなサウンドに対し素晴らしい仕事をした。彼はモダン・ドラマー誌に、このサウンドに載せるアート・ハードコアの”ジェットエンジン”があるとは思わなかったと話した。さらに彼はこう語っている。「ジ・アームドはカート(・バロウ:コンヴァージのギタリスト兼エンジニア)にこのアルバムのデモを送って、そのデモが「コンヴァージ用のものだ」と彼に言わせたんだ。それで俺は曲を覚えた。だから基本的には俺は騙されてこのアルバムを叩かされたことになる。俺はこの奇妙な戦略に不意を突かれてただただやってしまったよ」

19位 ディシースト『ゴーストリー・ホワイト』

ディシーストは、没入できるストーリーや映像的なドラマがヘヴィメタルにおいて称賛されていた、今とは異なる時代からの生き残りである。80年代半ばから衰えることのないヴァージニア出身のこの重鎮達は、アイアン・メイデン風のメロディをスラッシュ的なスピードとグラインドコアの魂を合わせたような、並外れたスケールの物語主導の音楽への献身を8枚目のLPで再確認した。フロントマンでありバンドリーダーでもあるキング・フォーリーは、残忍な女統治者やクリスマスの時期にうろつく殺人鬼、さらにはタイムトラベラーの(エドガー・アラン・)ポーの熱狂的信者の物語をがなり声で歌い、狂気のカリスマ的な悪の首謀者を演じている。そしてそのすべてにマイク・スミスが不気味なアンセム的なリードギターでアクセントをつける(残念ながら、ドラマーのデイヴ・カスティロはリリースのほんの数日前に亡くなってしまい、このアルバムが彼の最後の音源作品となってしまった)。『ゴーストリー・ホワイト』はアメリカのアンダーグラウンドの至宝からの、考えさせられる、流行にとらわれないメッセージなのである。

Ghostly White by DECEASED

18位 アット・ザ・ゲイツ『トゥ・ドリンク・フロム・ザ・ナイト・イットセルフ』

アット・ザ・ゲイツが1995年の最高傑作『スローター・オブ・ザ・ソウル』を上回るものを出すことは決してないだろうが、彼らが挑戦するのを聴くのは間違いなく楽しめるだろう。トータルで6枚目、2010年に再結成してからは2枚目となるこのLPには『スローター』にあった勢いよく内臓を揺らすようなリフと、突き抜けるようなソロに少し変化を加えたような曲が12曲収められている。しかしそれを特別なものにしているものこそ、このアルバムのおもしろさなのだ。他の誰が「トゥ・ドリンク・フロム・ザ・ナイト・イットセルフ」のような陳腐なフレーズを使って、それを最高のデスメタルのパーティ・アンセムにしようなんて思うだろう? それがそこまで安っぽく聞こえもしない。そしてそれは「ダガ―ズ・オブ・ブラック・ヘイズ」(ゴシックでゆっくり歩くようなミドルテンポの激しい曲)や「ア・ラビリンス・オブ・トゥーム」(ハイテンポのバトルクライ曲)のような、同じくとぼけたようなコンセプトの曲にも当てはまる。結成から30年近く経って、彼らは自分たちのヴァイブを見つけ、それを貫いているのだ。

17位 フロンティアラー『アンラヴド』

デリンジャー・エスケイプ・プランが解散してしまった今、おそらく世界一荒々しいマスメタル・バンドであろうこのスコットランド出身の”ノイズ数学”グループは、圧倒的な音作りとメルトバナナのレーザーノイズのようなギターのうねりで大きな賭けに出た。ドラマーを初めて起用したアルバム『アンラヴド』は、拍子が生む混乱と激しいノイズロックの情動が合わさった嵐である。

16位 トゥーム・モールド『マナー・オブ・インフィニット・フォームズ』

トロント出身の4人組バンド、トゥーム・モールドのドラム/ヴォーカル、マックス・クレバノフの獣のようなうなり声がバンドをデスメタルと調和させている一方、彼らの2枚目のフルアルバムがこんなにもスリリングであるのはリフのおかげである。その怪奇なクランチ、重い刻み、叫ぶような高音、うねりがこの長尺である7曲のほぼ毎秒を占めている。破壊的なブラストビートはバンドの攻撃性の要ではあるがスピードの爆発感はいつもテンポの遅いブレイクダウンと合っているし、さらに有名なアンダーグラウンドメタル界の影のインフルエンサー、アーサー・リズクのばかげたほどヘヴィなミックスによってより一層重厚になっているのだ。これをどう呼ぶかは聴いた人次第だが、このアルバムはとにかくロックしている。

15位 アイドルズ『ジョイ・アズ・アン・アクト・オブ・レジスタンス』

ブリストル出身の過激なメッセージを歌うアイドルズの2枚目のアルバムはギャング・オブ・フォーのスタイルを受け継ぎ、ポスト・パンクにコンヴァージのようなバンドのブルータルなヘヴィさを加えたようなものになっている。明らかにポリティカルで、しかしメディアや皮肉によって混乱しながら、彼らは中指を立て眉をつり上げてマッチョな社会に挑んでしているのだ。反性差別、反ブレグジット、反憎悪である『ジョイ』はハメを外したパーティであり毒抜きでもあり、「俺はストーン・コールド・スティーブ・オースチンのようだ/俺は同性愛差別者を棺桶に入れる」(「コロッサス」)や「このsnowflake(感情的な人、左翼の人を指すスラング)は雪崩だ」(「アイム・スカム」)のようなフレーズによってきらめいている。このアルバムの脆弱な核はソロモン・バークの「クライ・トゥ・ミー」のザ・バースデイ・パーティ的なカヴァーまでへと広がっている。

14位 ヨブ『アワー・ロー・ハート』

オレゴン州ユージーン出身のバンド、ヨブはこのジャンルのスローなノリに、高揚するようなメロディと宇宙的な空気感とリーダーであるマイク・シャイトの実存的な唸り声でドリーム・ポップ版ディオのようなサウンドを加え、常にドゥームメタルの飾り気のない慣例を覆してきた。『アワー・ロー・ハート』はイェスーやアイシス、ペリカンのような2000年代中盤のバンドのサウンドを詰め合わせたようなものになっていて、アルバムが終わる頃までには少しグレン・ブランカのギターシンフォニーっぽくすら聞こえてくる。結腸破裂と発作とブドウ球菌感染症の療養中に、文字通り病院のベッドの上で書かれたアワー・ロー・ハートは決してベルイマンの映画のようなものではない。むしろ溢れ出る自己肯定感と心地良い夏の死に際の記録なのである。

13位 ポータル『イオン』

ポータルのヴィジュアル面のこだわりは普通ではない。ブリスベン出身のこのバンドのメンバー達はローブ、マスク、ヌースを、ヴォーカリストのザ・キュレーターにいたってはローマ法王の司教冠や装飾を凝った大時計など、様々な奇妙な被り物を身にまといステージに上がるのだ。信じがたいことに彼らの音楽はさらに変わっている。怒れるハチの群れが激しく衝突するようなギター、よろめきと突進を繰り返すドラム、怒れる神の狂気のような荒々しいヴォーカル。ポータルの5枚目のフルアルバムはこれまででもっともクリアにレコーディングされ、そして幸いなことに彼らの気が狂ったような聴覚的作品が以前より理解しやすくなったりしているわけではない。メタルの中には頭を振らせたり拳を突き上げたりさせようとするものもあるが、殺人鬼の動機が一切説明されないようなホラー映画のように、不気味で抽象的なイントロの「Nth」、深い赤にそまったノイズメタルの猛攻撃の「スポアーズ」、そして幽霊のうめき声のようなレコードをスクラッチしたアウトロの「オールド・ガード」を含む『イオン』の9曲は、どうやらリスナーに恐怖と混乱を引き起こすことを目的として作られているようだ。そうならないよう幸運を祈る。

12位 ウィンドハンド『エターナル・リターン』

ヴァージニア出身のドゥーム・バンド、ウィンドハンドは2018年のサタンズ・サテュロスとのスプリットアルバムという高く飛び上がるような”魔術”から離れ、4枚目のアルバム『エターナル・リターン』で彼らの象徴である暗闇から軽々と抜け出た。ニルヴァーナ『ブリーチ』のむき出しの魂の護衛人として最もよく知られるプロデューサーのジャック・エンディノは”スラッジ祭り”に繊細な研磨機を持ち出し、ベーシストのパーカー・チャンドラーが弾く音が1音も霧の中に消えていかないようにした。ヴォーカリストのドーシア・コトレルはクールな小声で指揮を取る。彼女の押し殺した唸り声は、バンドの困難な状況を見つめるような哀歌の表面にぶら下がっている。失望的な1曲目「ハルシオン」で、「年中苦しむことになるんじゃないかい?/死にながら水を夢見ているのかい?」と彼女は歌う。「そうしてくれたらいいのに」 という時、その声はうっすらと熱を帯びる。

11位 ホーント『バースト・イントゥ・ザ・フレイム』

シン・リジィがシュレッドギターのハッピーな80年代のメタルバンドとして生まれ変わったのを想像すれば、レトロを忠実に再現し恥ずかしげもなくやり過ぎるホーントの魅力を感じることができるだろう。ギタリスト/ヴォーカリスト/ソングライターであるトレヴァー・ウィリアム・チャーチ(彼はよりブラック・サバスに影響に受けたバンド、ビーストメイカーも率いており、父親はその昔モントローズでベースを弾いていた)の新構想であるこのバンドは、そんなに作り込まれておらず正統派なキャッチーさもない、キッチュさを狙った曲に特化している。その名に背かない残忍なタイトルトラックからもわかるように、このバンドは彼らが再現しようとしているあの時代の輝きと怒りを掘り下げようとしていただけではなく、「リフレクター」や「マイ・ミラージュ」のように厭世的な哀愁的な部分にも踏み込んだ。このアルバムはバックパッチのデニムベストの夢でできている。

10位 ユニフォーム『ザ・ロング・ウォーク』

ユニフォームの3枚目のフルアルバムにある規律と罰の精神は、教会で受け継がれてきた色褪せた価値観と自身の利他的な価値観をうまく調和させようともがく、一度堕落し、そして生まれ変わったカトリック教徒であるフロントマンのマイケル・バーダンの内なる混乱を映し出している。バーダンの身の毛もよだつ声とベン・グリーンバーグのトゲトゲしいギターが率いるこのブルックリンのノイズ・メタルバンドは、過去のリリースで使っていた無機質なドラムマシーンを手放し、その空間に圧倒するような生身の人間の残虐さを詰め込むためにリタジーのドラマー、グレッグ・フォックスを招き入れた。アルバムは、変化の少ない音が続く瞑想のようであるが、はっきりと怒りが込められた曲で締めくくられる。

9位 ターンスタイル『タイム&スペース』

アナーキーなライヴで知られるボルチモアのハードコア・パンクバンド、ターンスタイルは爽快なまでのフリーフォームなメジャーデビュー作品で、サウンドとコラボレーターの幅を広げるため様々な試みをした。ガレージロックの「ムーン」ではニルヴァーナからアイデアを借り、魅惑的なジャズのインタールード「ボム」と「ディスコ」では彼らの変わった一面を控えめに出している。長年のファンであるディプロは「ライト・トゥ・ビー」で控えめに参加し、彼のシンセがターンスタイルのはっきりとした政治的な主張を目立たせている。昔ながらのハードコアファンは苛立つかもしれないが、『タイム&スペース』は新しいファンにも昔からのファンにも楽しめる場所がある。

8位 ヴォイヴォド『ザ・ウェイク』

ヴォイヴォドは2013年の『ターゲット・アース』でSF的な奇異さを再現し、80年代のマニアックなメタルのファンのヒーローとなり予想外の飛躍を遂げた。そして、この次作はさらに良いアルバムとなった。亡くなった結成時からのギタリスト、ピギーの代わりとして加入した新しいメインソングライターのチューウィーは、年月を重ねるごとにヴォイヴォドのサウンドに、激しいノリのポスト・パンクから難解なプログレ、歪んでいるが陽気なアート・ポップまで様々な要素をもたらした。一方、ヴォーカリストのスネイクは、常にバンド自体が一つの音楽の世界であるかのように感じさせるような、味のある陰鬱な表現方法を深く探求した。その結果、今年一番輝かしいマニアックなヘヴィメタルという現実逃避の功績となった。

7位 イモータル『ノーザン・ケイオス・ゴッズ』

イモータルは復帰するために、証明しなければならないことがたくさんあった。9年ぶりのアルバムはバンド名を巡る争いで2015年に長年のベース/ヴォーカル、アバスが抜けてから初めてのアルバムであった。しかし1997年以降イモータルのアルバムで演奏することがなかったギター/ヴォーカルのデモナズがその手綱を取り、このブラック・メタルの重鎮はアンセム的なリフと容赦ないスピードとお得意の冷酷な表現で、余計な装飾のない怒りのアルバムを生んだ。電動ノコギリのようなタイトル曲や「ゲイツ・トゥ・ブラシルク」のような不気味なクリーン・ギターと、オールドスクールなヘヴィメタルのパワーからなる曲は、力を再び取り戻そうとしている重鎮達による”ニュークラシック”のように聞こえる。

6位 ヴェイン『エラーゾーン』

ニュー・メタルのリヴァイヴァルに反対の人はいるだろうか? ディスコード・レコードやイヤーエイク・レコードの出身バンドの遺産は2018年のハードコアバンドにも少なからず受け継がれている一方、90年代のオルタナティブ・メタルはその当時から不当な批判を受けてきた。しかしボストン出身の5人組ヴェインはそれに挑んでいるようだ。彼らのデビューLPはブレイクダウンにブレイクダウンを重ねるような、2003年にヘッドバンガーズ・ボールに出ていたようなバンドの重厚さだけでなく、デジタル・ハードコアの先駆者であるアタリ・ティーンエイジ・ライオットのテクノの反骨精神も受け継いでいる。ヴェインは両シーンのいいとこ取りをし、そのパーツからメタリックなつぎはぎモンスターを生み出すのだ。フロントマンのアンソニー・ディディオは最終曲「クイッティング・インフィニティ」で「俺は消せないものは否定しない/俺をリライトしてくれ」と歌う。それが”フランケンコア”的作品である『エラーゾーン』への詩的な結びなのである。

5位 デフヘヴン『オーディナリー・コラプト・ヒューマン・ラヴ』

2015年の中途半端な出来であったウルトラ・メタル的な『ニュー・バミューダ』の後、デフヘヴンは『オーディナリー・コラプト・ヒューマン・ラヴ』で彼らの魅力を取り戻した。『オーディナリー』には壮麗なポスト・パンクのバラードやブラック・メタルを模倣したような破壊的なギターリフに乗せた、胸が張り裂けそうな辛辣さを歌った7曲が収録されている。その重さと軽さの珍しい融合が、このLPを説得力のあるものにしている。1曲目の「ユー・ウィザウト・エンド」はビリー・ジョエルがプログレ・ロックしようとしているような感じである一方、2曲目の「ハニカム」はわずかに感じられる臆病な怒りに時折ビートルズから拝借したリフが乗せられている。それぞれの曲がハード・ロックの様々なサブジャンルが混ぜ合わせたものとなっており、ケリー・マッコイのギターラインにはヴォーカリストのジョージ・クラークの絶望感とは対照的な、ある種の喜びのようなものが感じられる。最も繊細なマキシマリズムなのだ。

4位 スカーズ・オン・ブロードウェイ『ディクテイター』

システム・オブ・ア・ダウンが音楽を作るのをやめてから10数年が経ったが、まだ新しいアルバムを作る予定はない。そんななか、ギター/ヴォーカルのダロン・マラキアンによるサイドプロジェクト、スカーズ・オン・ブロードウェイの『ディクテイター』は、システム・オブ・ア・ダウンのマニアックで落ち着くことを知らないパンク/メタル・ファンの心の穴を埋めた。
リード曲の「ライヴス」はダンサブルで集団虐殺の生存者に送るフックの効いた曲で、ダウンテンポの「トーキン・シット」 はマラキアンが得意とするグルーヴィでヘヴィな幻覚状態に陥ったような曲だ。ブロンディの「ハート・オブ・グラス」に対するメタル側からのアンサーのような、アルバムを締めくくるディスコ調の曲「アシミレイト」は、我々が忘れていたパンクを称え騒ぐような感覚を思い出させてくれる。

 
3位 ジューダス・プリースト『ファイアーパワー』

ジューダス・プリーストは2018年のメタル界で、最も関心を惹くカムバックをしたと言えるかもしれない。それは単純に彼らがどこにも行っていなかったからだ。彼らには60年代後半からずっと音楽的な浮き沈みがあり、18枚目のアルバム『ファイアーパワー』がこんなにもフレッシュでスリリングなものになるとは誰も予想しなかった。結成時のギタリスト、K.K.ダウニングは2011年に脱退し、彼の支え役だったグレン・ティプトンはこのアルバムで素晴らしいプレイをしたが、パーキンソン病を理由にツアーには参加しないことを発表した。それにもかかわらず『ファイアーパワー』でのジューダス・プリーストは留まることを知らなかった。フロントマンのロブ・ハルフォードは2014年の前作『リディーマー・オブ・ソウルズ』の時よりも楽しそうに亡霊や魔術師や戦争の焼け跡の物語を歌い、バンドは血に飢えたようなプレイを終始し続け、1990年の破壊的な作品『ペインキラー』や1978年の『ステンド・クラス』におけるメロディを想起させる。「フレイム・スロワー」と「ファイアーパワー」、「ネヴァー・ザ・ヒーローズ」はどれも古き良きプリーストのように復讐の叫び声を上げているが、同時に分厚くモダンなサウンドになっていて、50年目に突入しているバンドの作品とは思えない。

2位 ドーターズ『ユー・ウォント・ゲット・ホワット・ユー・ウォント』

ドーターズが『カナダ・ソングス』で爆発的なグラインドコアとして初めて世に出てから20年近く経ち、再結成して作ったLP『ユー・ウォーント・ゲット・ワット・ユー・ウォント』には、バンドのさらにダークな面が収められている。フロントマンのアレクシス・マーシャルが幻滅と不安のうめき声を上げる中、全曲ノイズと独特なリズムを味わいながらゆっくりと高まっていく。哀歌的な「ロング・ロード・ノー・ターンズ」やスローな『ザ・リーズン・ゼイ・ヘイト・ミー』では、神経が昂ぶるようなブレイクダウンが入っていたりして、まるでジーザス・リザードとザ・バースデイ・パーティの独特なコンビネーションのようだが、そこまでヘヴィなわけでもない。わかりやすいメタル的要素からは距離を置いたのかもしれないが、アルバムの至るところに彼らの過去がわずかに見て取れる危なさが現れている。

1位 スリープ『ザ・サイエンシズ』

スリープの最後のアルバム、一枚岩的な長編曲『ドープスモーカー』からの約20年で、彼らはアンダーグラウンドのヒーローからストーナー・メタルのレジェンドとなった。4月20日に『ザ・サイエンシズ』がリリースされた時、そのサウンドの素晴らしさはとにかく嬉しい衝撃だった。「ザ・サイエンシズ」では3分に及ぶヘヴィなフィードバック・リフの後、ポパイがほうれん草を飲み込むようにベース/ヴォーカルのアル・シスネロスが水パイプを吸う音が聞こえる。そして3人は「マリファノーツ・テーマ」のどっしりとしたスローなリズムを演奏し始める。アルバムの収録曲すべてがブラック・サバスのトニー・アイオミを奉っており(サバスのメンバー名をもじった「ギザ・バトラー」で引用している)、時間がただの構成概念でしかないメタルヘッドのダークな世界へといざなう。ハイ・オン・ファイアでも素晴らしいアルバムを今年発表したギタリストのマット・パイクは、ワウペダルで抑揚をつけて計算されたソロを弾き、ドラマーのジェイソン・ローダーが全体をまとめ、シスネロスがぼんやりとキマりながら空想を単調に歌う。ムードが大事なんだ。質問はしないでほしい。