引退記者会見に臨んだ川口能活【写真:Football ZONE web】

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絶体絶命のピンチでも動じなかった“日本の守護神”が現役引退

 J3のSC相模原に所属する元日本代表GK川口能活が14日、現役引退記者会見に出席し、25年間に及ぶプロ選手生活に別れを告げた。

 日本サッカー史に燦然と輝く実績を残し、数々の印象的なプレーを見せた守護神に対し、会見では様々な質問が飛んだが、「GKとして大事にしたこと」を問われると「不動のメンタル」と答え、話題は川口の象徴とも言えるPKセーブにも及んだ。

 130人もの報道陣が詰めかけた会見場で、43歳となった川口は長いプロキャリアを噛み締めるように様々な質問に答えていった。1994年の横浜マリノス(当時)加入を皮切りに、ポーツマスFC(イングランド)、FCノアシェラン(デンマーク)、ジュビロ磐田、FC岐阜、相模原と渡り歩いた一方、日本代表としてはGKで歴代1位の116試合に出場。ワールドカップ(W杯)にも4大会連続で参戦し、1996年アトランタ五輪でブラジルを1-0で撃破した“マイアミの奇跡”を演じるなど、「日本の守護神」として数々の印象的なプレーを見せてきた。

 数々の大舞台を踏みしめてきた川口は、「GKとして大事にしたこと」を問われると、「最後の砦で、頼られる存在であるべき」と語ると、次のように続けた。

「大切なのは不動のメンタルですかね。浮き沈みがあってはいけないし、それがあった時に隙を突かれるし、戦うステージがトップから遠ざかる。メンタルが非常に重要なポジションじゃないかと思う」

 メンタル面の強さを挙げた川口は、“炎の守護神”と称されるほど常に闘争心を漲らせるプレースタイルで、ゴールマウスを守り続けてきた。「自分らしさと信念、プラス変化。その適応力のバランスが高いレベルで求められる」と、あらゆる試合環境に適応しながら、ブレることのない強靭なメンタルが求められるという。


PKセーブの極意は「目力で相手を威圧するくらい」

 そんな川口らしさが存分に発揮されてきたシーンと言えば、PKの場面だろう。チームにとって絶体絶命と言える試合中のPKシーン、あるいは120分の死闘を経て迎えた勝負を分けるPK戦において、川口はキャリアの中で多くの記憶に残るセーブを見せてきた。

 なかでも“神セーブ”として今も語り継がれるのが、2004年7月31日に中国の重慶で行われたアジアカップ準々決勝、ヨルダン戦でのPK戦だ。120分の死闘を1-1で終え、迎えたPK戦でも日本は大苦戦。1人目の中村俊輔(現・ジュビロ磐田)、2人目の三都主アレサンドロが連続で失敗。さらにPK戦の最中に芝が荒れていることからサイド変更が行われるなど、GKにとっては集中力を保つのが難しい状況が訪れていた。だが川口は、この絶体絶命の状況のなかで神懸かり的セーブを連発していく。7人目までもつれ込んだPK戦を4-3で制する立役者となった。

 引退会見でこうした「PKストップの極意」について聞かれた川口は、「特にないですね(笑)」と答えつつも、“炎の守護神”らしい言葉でつないだ。

「目力で相手を威圧するくらいですからね。最近、キッカーの質も非常に上がっていますし、PKを止めるGKも増えている。特にコツというのはないですね。相手をいかに威圧するかだと思います」

 相手キッカーがボールをセットする姿を、ゴールマウスからじっと睨みつける――。11メートルの距離で向かい合う1対1の果たし合いで、川口が最も大切にしたのは「目力」だったという。

 絶体絶命のピンチでも動じない「不動のメンタル」と「目力で相手を威圧する」。現役引退会見で語られた言葉には、多くのファンに愛された川口らしさがあふれていた。


(Football ZONE web編集部)