コンビニ業界の知られざる裏側を、内情に詳しいライターの日比谷新太さんがレポートする当シリーズ。今回取り上げるのは、前回の「キヨスクからニューデイズ」誕生秘話に続き「駅ナカコンビニ・ニューデイズの誕生からこれまで」について。先の記事では、1店舗あたりの平均日商売上が3年間連続で業界ナンバーワンとなったところまでお伝えしましたが、その後さらなる成長に向けてニューデイズが行った取り組みとは、一体どのようなものだったのでしょうか。

失敗に終わった“駅ソト”への進出

1店舗あたりの平均日販が業界王者のセブンイレブンを3年間連続で抜き、平均日販日本一の状態になった2009〜2010年頃のニューデイズ。駅ナカコンビニとしての立ち位置・戦略も徐々に明確になり、今後のさらなる成長に向けて、必要なドライバーとされたのが店舗数でした。

「チェーン全体の売上」は「1店舗当たり売上×店舗数×営業日数」で算出されます。1店舗当たり売上が日本一になった以上、次の成長には店舗数を増やす取り組みを行う必要がありました。

そこで出店強化に向けた戦略をスタートさせたニューデイズですが、具体的な方向性として、「今のエリア外に出店する」「駅ナカの空きスペースに出店する」ことなどが検討されたそうです。

「今のエリア外に出店する」とは駅ナカではなく“駅ソト”。つまり他のコンビニチェーンと同様に、市街地への展開を模索し、実際に数店舗を出店しました。また「駅ナカの空きスペースに出店する」ですが、こちらは駅の空きスペースを探し出す専門チームを作り、新規出店ができる場所を改めて探しました。

しかし、結果的にこれらの取り組みは、あまりうまくいかなかったようです。特に“駅ソト”への出店は、セブンイレブンを筆頭とする他コンビニとの熾烈な競争となり、商品力・販売促進力の面で厳しい戦いを強いられました。なかでもネックとなったのが価格差の問題で、強気な売価設定が可能だった駅ナカとは異なり、街中では従来と同じ価格だと、消費者の支持を得ることが困難でした。

いっぽう「駅ナカの空きスペースに出店する」という方向性ですが、確かに空いている場所を探して出店すれば、出店数自体は稼ぐことはできますが、それを収益性に結び付けることは困難な状況でした。

そこでニューデイズは、社長直轄のプロジェクトチームを発足させて、店舗数増に向けた本格的な取り組みをリスタートさせました。もともと船井総合研究所で同社のコンサルタントを担当していた笠井氏をプロジェクトリーダーに据え、目標とする店舗数は500店舗と定められたのです。

収益性向上を実現させた新たな取り組みとは

新しい取り組みでは、“駅ソト”への進出を止め、駅ナカの様々な場所への進出を進めることになりました。

そこで目を付けられたのが、キヨスク売店の少し大きめなタイプの店舗。これを業態変更・リニューアルし、新たな品揃えを追加させることで収益性・売上増を図りました。また、当時としてはかなり画期的な取り組みとして、業態変更の取り組みだけでなく、海外の駅ナカにも進出するプロジェクトも進められたそうです。

現場ではキオスク売店の看板を付け替え、什器を交換する工事が日夜進められました。商品構成が大きく変更されるため、物流網やシステムの変更が行われ、また店舗運営組織の刷新や従業員教育も同時に進められたため、当時の社内はかなり混乱したといいます。

しかし、この取り組みが功を奏し、ニューデイズ事業はさらに成長しました。1店舗当たりの売上を上げる(お店を強くする)ことを最初のステップとし、そこにこの新たな取り組みを実施することで収益性も向上し、売上高は870億円から940億円にまで伸びていきました。

記念すべき500店舗目が水道橋駅に出店したのは2012年のこと。その後のニューデイズは、大きく店舗数は増えていかず、500店舗を上下する店舗数で推移していくことになります。(次回へ続く)

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