45年以上人類が月面に足を踏み入れてこなかった理由とは?

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1969年、アメリカのアポロ計画によって人類は初めて地球から約38万キロメートル離れた月に足を踏み入れました。しかし、アポロ計画による6度の着陸で計12人が月面を歩いたものの、1972年のアポロ17号以降、さまざまな理由から有人月面探査は行われてきませんでした。技術的には十分可能であるはずの月面探査を45年以上も人類が行ってこなかったのにはさまざまな理由があります。

Astronauts explain why humans haven't returned to the moon in decades - Business Insider

http://uk.businessinsider.com/moon-missions-why-astronauts-have-not-returned-2018-7

第二次世界大戦後の冷戦下、アメリカとソビエト連邦は宇宙開発の分野でしのぎを削っていました。1961年にソビエト連邦のボストーク1号が世界初の有人宇宙飛行に成功し、乗組員のユーリイ・ガガーリンは大気圏外へ飛び出した人類初の宇宙飛行士となりました。これに対抗するように、第35代アメリカ大統領ジョン・F・ケネディは人類を月に到達させる「アポロ計画」の発動を発表。1969年7月にはアポロ11号が月面に着陸し、人類は初めて月に降り立つことに成功しました。



以降、アポロ計画は6回に渡って人類を月面へ送り込みました。最後の月面調査は1972年12月に行われたアポロ17号によるもので、地質学者を乗組員に加え、34kgものサンプルを持ち帰りました。以下の画像は、1972年12月13日にアポロ17号で月面へ降り立ったユージン・サーナン船長の写真ですが、このミッション以降、人類は月面を歩いていません。



有人月面探査の計画が見送られているのは、第一にコストの問題があるためです。2005年にNASAが報告したところによると、月面探査計画を再び行うには13年間で1333億ドル(約14兆8000万円)必要であるとのこと。事実、アポロ計画は現在の価値で約1200億ドル(約13兆3000万円)を費やしたといわれています。アポロ7号の宇宙飛行士を務めたウォルター・カニンガム氏は「有人探査は宇宙事業の中でも最もコストがかかるもので、政治的支援を得るのが最も難しいのです。1965年におけるNASAの予算は連邦予算の4%を占めていました。1970年代以降は1%を下回り、過去15年間は連邦予算のわずか0.4%ほどです」と述べています。

また、探査計画は、予算だけではなく、大統領の政策方針からも大きな影響を受けます。例えば、ブッシュ政権は2004年、使い捨てロケット「アレス」を用いた宇宙探査事業計画「コンステレーション計画」を打ち出しました。しかし、経費削減で計画は遅々として進まぬままに90億ドル(約1兆円)を費やし、2010年のオバマ政権時にコンステレーション計画は廃止されてしまいました。しかし、2017年末にはトランプ大統領が「月面基地建設を再び目指す」と宣言しています。



予算や政治的なものとは別に、月の過酷な環境も月面探査計画が行われない理由の1つです。例えば、月面は「レゴリス」と呼ばれる、非常に細かいホコリのようなもので覆われています。このレゴリスが宇宙服や宇宙船の劣化を早めたり、宇宙船のシステムに不備を起こす可能性が指摘されています。また、月面には地球のような分厚い大気圏がなく、昼は14日間続くので、およそ2週間も太陽からの光に直接晒され続けるのも大きな問題です。長期的な月面探査を行うためには、ロケットの打ち上げだけではなく、レゴリスや太陽光など、月の過酷な環境にも十分耐えられるような装備を開発することも必要となります。



経済的な理由・政治的な理由・技術的な理由から、アポロ17号の月面探査を最後に、人類による月面探査は45年以上行われてきませんでした。一方で、SpaceXが2018年に有人月周回飛行を計画しているほか、VodafoneとNokiaが月面に4G通信ネットワークの構築を発表するなど、民間宇宙企業は目覚ましく成長しています。AmazonのCEOであるジェフ・ベゾス氏は航空宇宙企業「Blue Origin」を設立し、2023年までに月面に着陸する計画「Blue Moonプログラム」を発表しています。21世紀初の有人月面着陸はNASAよりも民間企業が先に行うかもしれません。

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