日本で現金決済が多いのは平和の証? 国内でクレジットカードが普及しない理由は「日本の治安が良好だから」

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 キャッシュレスがなかなか普及しないとされる日本。総務省から「キャッシュレス化推進に向けた国内外の状況」という資料が公開されました。

 これを受けて、6月4日の『小飼弾のニコ論壇時評』で、プログラマーの小飼弾氏と山路達也氏が、資料を解説しながら、「なぜ日本人は現金にこだわってしまうのか?」ということをテーマに、議論を交わしました。

左から小飼弾氏、山路達也氏。

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日本はキャッシュレス後進国

山路:
 日本はキャッシュレス後進国なのかという話題に移りたいと思いますけど。

小飼:
 まずは、キャッシュレスになった方が先進国なのだろうか? というのは、チェックしておきたいね。

山路:
 そこで、面白い資料がありまして。総務省が、野村総合研究所の協力で、キャッシュレス化推進に向けた国内外の状況という資料を出しているんですけれども。ここで、外国、諸外国におけるキャッシュレス比率の変化と、キャッシュレス化がどれくらい進んでいるかというランキングが出ています。一番が韓国で、2016年の段階では96.4%のキャッシュレス化。

諸外国におけるキャッシュレス比率の変化とキャッシュレス化進展の施策例(引用:「キャッシュレス化推進に向けた国内外の状況」総務省HPより)

小飼:
 ほう。ここでの数字なんですけども、これは全決済回数に対して、キャッシュレスで決済したという回数なのか、決済額なのか?

山路:
 カード決済プラスeマネー決済、その2つを足したものを家計最終消費支出により算出したんで、額なんじゃないですかね?

小飼:
 額か。いや、でも額だとしたら、例えば「家を買いました」という場合は、これは何で決済したことになるの? まさか、5000万円の家を買う時に、1000万円って確かピン札でも10cmくらい厚さがあると思うんですけど、それを5つボーンと出してるわけじゃないですよね。

山路:
 それはちょっとわかんないですね。でも消費だから多分、家とかは消費にはしていない可能性はありますよね。不動産を買ったみたいなものを消費というふうに普通はしない。

小飼:
 車とかはどうだろう? これはもう立派に消費ですよね。消費税も取られるし。ちなみに家とかも建物も上モノは消費税の対象になってますよ。

山路:
 ああそうか。とりあえずこれは、BISという機関が作っている資料、データをもとにしてるみたいですけどもね。

小飼:
 逆に決済回数だと、日本だとSuicaが普及しているわけじゃないですか? ピッと改札に入って改札を出ただけで、1決済ということにすると、キャッシュレス比率というのは、ものすごく高くなりませんか?

山路:
 その通りですね(笑)。

小飼:
 だから回数なのか額なのかというので、結構見えてくる数字が違うと思いますよ。例えば、僕の場合は、回数でいったらもう圧倒的にピッとやるのが多いんですけれども、額から言ったらやっぱりクレジットカードということになりますね。

山路:
 「Suicaは関東だけじゃん」(コメント)とあるけど、別に他の地域でもSuica互換のTOICAとか、ICOCAとか、Apple Payでも出来たりしますよね?

小飼:
 あとSuicaのチャージというのは、これもまた決済であるんだけれども、どっちにカウントされるんだ?

山路:
 どっちって?(笑)。ちょっとそこのところは曖昧で、不明確なデータではあるんですけれども。

 韓国はキャッシュレスが96.4%でそれに続いて、イギリスが68.7%。

小飼:
 イギリス高いね。

山路:
 そうですね。インドが2016年に35.1%、日本は19.8%。意外なことに、日本よりもドイツの方がキャッシュレス比率というのが低くて、15.6%。

小飼:
 ドイツ人がキャッシュが好きだっていうのは、知識としてだけ知っています。なんで日本以上にドイツ人は現金大好きなんだろう?

山路:
 これは謎ですね(笑)。なんか、すごく合理的なドイツ人というイメージもあったんですけれども。

小飼:
 僕自身、ドイツは何回か行ったんですけども、現金は1ユーロも使わず、全部クレジットカードでいきましたね。

山路:
 「クレカは店舗が不利だよね」(コメント)

 確かに日本でキャッシュレス化が進まない理由というのも、ここで調べてあって。

現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査(引用:「キャッシュレス化推進に向けた国内外の状況」総務省HPより)
キャッシュレス普及の壁は、決済手数料

小飼:
 そう、日本は手数料をいっぱい取るんですよね。それがつらい。ただ、これには裏の話もあって、例えばアメリカとかでは、クレジットカードというのはまさに、「クレジットとして使う」わけですよね。信用ということです。だから信用買いした上で払える時に、使った分を払う。

 要は、使った人から言うと、全部払わなくてもよくって、全部払わなかった分というのは、借りていることになるわけですよね。もう少しわかりやすい言い方をすると、リボ払いが続いている間というのは、利子がとれるわけですよ。これがすごく高いので、決済自体の手数料は安く出来る。

山路:
 さっきのキャッシュレス比率のランキングでみると、アメリカは意外に低くて、2007年の段階で33.7%。

小飼:
 それってクレジットカードと電子マネーですよね。小切手は含まれてないでしょう。

山路:
 そうですね、アメリカは、2016年の段階でも46.0%なんですよね。

小飼:
 アメリカの場合は、額ベースだとしたら、買い物とか定期的なものというのは、小切手を使うことが結構多いので、それで説明がつくかな。

山路:
 なるほど。


キャッシュレス後進の原因は日本の治安が良いこと?

小飼:
 日本人はなぜ現金が好きか、という理由の一つに、「治安の良さ」というのもあると思います。お金が入った財布を落としても、警察からお金が入ったままの財布を受け取ることがありますよね。拾われても中身が盗られていない。

山路:
 この前見たツイートで、外国の方が「日本は本当に安全な国なのか?」ということを確かめるために、実験で外に200円を置いておいたら、300円になっていたというものがあって(笑)。

小飼:
 (笑)。でもそれは、あまり普通のことではないんですよね。海外だと、お金を持ち主に届けるシステムがないので、当然のように盗られてしまいますが、もし日本でもそうだったらキャッシュレス化はどんどん進んでいきますよね。

 そして、キャッシュの一番の利点にして、一番の欠点というのは、匿名だということですよね。だから、落としたら拾われて、使われたらもうどうしようもない。その一方で現金では、身元を明かさずに決済できるわけですよね。

山路:
 ヤバイものでも買える。

小飼:
 そう。ヤバイことというのは、政府は信用していない人でも、お金は信用してたりするわけですよね。

山路:
 確か、経済学者でしたっけ? 経済学者の門倉貴史さんが書かれた本で、日本のアングラ経済について調べた本がありましたよね。

小飼:
 かなり小さいんですよ。1割を切ってるんですよ。

山路:
 だから、日本で匿名性が必要なお金の規模というのは、そんなに大きいんでしょうか、という。

小飼:
 なんですけれども、そもそもその統計というのか、門倉さんの調べた結果というのが本当に正しいのかというのが、別の人によって検証されてるわけではないんですよね。

 結構大事なことなのに、あまり調べてくれる人がいないという。

山路:
 しかも調べるのが、相当に大変そうな分野ではありますもんね。

小飼:
 だから、本当にキャッシュレス化を本気で進めたいのであれば、まずはパーティー券をキャッシュレスに変えるようにしろと思いません?

山路:
 パーティー券か(笑)。それ、なんかキャッシュレスの支払いを嫌がる人が多そうなイメージがありますね(笑)。 

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