NBAの名プレーヤー、マイケルジョーダン選手は鳴り物入りでメジャーリーグに転向しましたが、目立った成績は上げられませんでした。ジョーダン選手の場合は自らの選択ですが、会社員は社命により不向きな仕事を強いられることも少なくありません。今回の無料メルマガ『』では、労災認定を含め適正配置のありかたについて考えます。

「性格的に営業に向かない」は労災認定の理由になるのか  

「イチロー選手がサッカーをやっていたらどうなっていたか?」

もちろんあれだけの偉大な選手ですから、もしサッカーをやっていたとしても大成していたのではと考える人もいるでしょう。ただ、人には得意なことと不得意なことがあります。神様とも呼ばれた某バスケットボールのスター選手が一時期、野球に転向しましたが、そこではあまり実績を残せなかったという話もあります。

これは仕事にも同じことが言えます。営業は抜群にうまいけど書類作成などの事務作業は苦手という人もいるでしょうし、逆に、細かい事務作業は正確でミスもなく完璧にこなすけど、プレゼンや営業は苦手という人もいるでしょう。

では、もしその苦手な仕事を強要したら何か問題になるのでしょうか。それについて裁判があります。

ある農協系の会社で営業職に配置転換になった社員が、営業成績があがらないことの心労でうつ病にかかり自殺しました。そこでその遺族が「うつ病にかかって自殺したのは仕事が原因である」として、裁判を起こしたのです。

そこでひとつ問題になったのはその社員の「性格」でした。もともとその社員は営業とは全く畑違いの配達業務を主に担当しており、いわゆる営業には「全く向いていない性格」でした。にもかかわらずノルマをもって営業をやることは本人にとって「相当負担だった」と、遺族は主張したのです。

これは、もしみなさんだったらどのように考えるでしょうか。「営業が苦手ということを認めてしまったら、会社がまわらない」と考える人もいるかも知れません。確かに、仕事ですから「得意か、不得意か」でやることを選べるわけではありません。もしそれを認めてしまったら会社は大変なことになるでしょう(不得意なことは誰もやらなくなってしまいますからね)。

では、裁判の結果はどうなったか。

会社が負けました。「性格的に向かない仕事は本人に相当負担であった」として、労災と認められたのです。

具体的には下記の通りです。

(自殺した社員の)性格はおとなしく、口数が少なく、自分から積極的に他人に話しかけるタイプではなく、営業としての適性はなかった全く経験の無い職種への配置転換にもかかわらず、年齢や勤続年数で設定された相当過大な目標を与えられていた(未経験者には重すぎる目標である)45歳と決して若くない年齢、今までに全く経験が無い職種、適性の無い性格、などから非常に困難な業務内容であり心理的な負担は相当重いものと言える

いかがでしょうか。

一応、誤解の無いようににお話すると「性格的に向いていない営業をやらされた=労災認定」ということでは決してありません。過大なノルマや配置転換の際のまわりのフォロー不足なども、認定の理由としてあげられています。

ただ、同時に「適性のない性格」というのも認定理由になっているのがこの裁判のポイントです。これは実務上も注意すべきところです。

「適材適所」とはよく言われますがみなさんの会社ではいかがでしょうか。あきらかに向いていない業務では当然にミスも発生しますし、本人のモチベーションも下がります。

また、ミスが発生すれば上司も穏やかでいられなくなりパワハラの原因にもなります(もちろんミスが発生したらパワハラして良いわけではありません、念のため)。

もちろん、常に適材適所を最優先として配置転換をできるわけではないと思いますが、今一度、考えてみてはいかがでしょうか。

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