セブン「メルカリ便」の裏にオーナーの涙、コストは加盟店が負担か
コンビニ業界の知られざる裏側を、内情に詳しいライターの日比谷新太さんがレポートする当シリーズ。前回の「コンビニ業界を脅かすドラッグストアの存在」に続き、今回取り上げるのは「新サービス導入に対する加盟店の苦悩」について。ユーザーにとって、コンビニがより便利になることはイイことに違いありませんが、その裏で加盟店オーナーたちの悩みは尽きないと、日比谷さんは明かしています。
増えるコンビニの新サービス、増えるオーナーの負担
消費者にとって、全国各地に約5万5000店出店しているコンビニは、今やとても便利な社会インフラとなっています。
実際、出張が多い筆者も宿泊先での夕食等で大いに助けられています。最近ではその商品ラインナップも、独身男性等をターゲットにした個食タイプから、家族向け・シニア向けにも拡大し、幅広い層にとってますます必要不可欠な存在になっています。
そんなコンビニビジネスを支えているもう一つの機能が、商品販売以外の各種「サービス」です。以下にセブンイレブンの店頭で行っているサービスをHPから抜き出してみました。
・マルチコピー機(コピー、プリント、スキャン、FAX、チケット発券、住民票発行、スポーツ振興くじ)
・チケット発券
・宅配便
・収納代行支払い
・DPEプリント・焼き増し
・(店舗限定)クリーニング
・(店舗限定)宅配ロッカー
・(店舗限定)自転車シェアリング
・オムニ7・ユニクロ・雑誌取り置き等の商品受け取り
・セブンミールのお届けサービス
・(店舗限定)セブン自販機への商品配送
・ネットコンビニ など
また最近ではセブンイレブンにおいて、フリマアプリ「メルカリ」の発送サービス「らくらくメルカリ便」の取り扱いを開始するなど、その利便性は日々向上しています。
セブンイレブンのプレスリリースより
コンビニにおいては、このような数々のサービスが消費者にとっての便利さ(=コンビニエンス)に繋がり、集客の源にもなります。一般の小売業(食品スーパーなど)ですと、お客さんを集めるためにチラシなどの販売促進費を掛けたり、商品の利益を減らしてでも値引きを行ったりしますが、コンビニはそれらのコストを掛けない代わりに、各種サービスを充実させ、集客しているわけです。
それらのサービスも、以前だと店内で行うサービスがほとんどだったのですが、少し前の当連載でも取り上げましたが、最近では商品配達などといった、店舗から「外」に出ていくサービスにまで広がっています。
新サービスに対する加盟店側の悲痛な反応
ただし、ここでひとつ心配なことがあります。
先述のような新サービスは、本部が一方的に始めていくわけですが、実際の運営コスト(例えば、配達する人件費等)は、FC契約者である加盟店オーナーが負担しています。ただ、一旦始めたサービスに一度消費者がついてしまうと、それを途中でやめる事もできず、固定費と化してしまうリスクがあることです。
店内で発生する新サービスについては、アルバイトへの教育など一定のコストと手間が発生するものの、POSレジやシステム改善により、実はそれほど負担は増えていません。本部もこのあたりは十二分に注意して進めています。ところが、店舗から「外」に出るサービスに関しては、大きな負担になるケースも想定されます。
例えば店舗の外へ商品を配達するサービスを始める場合、加盟店オーナーとしては配達に掛かる時間を圧縮したいため、配達地域を一部に絞り込んでサービスを実施するでしょう。ところが、月日が経過するなかで注文数が減少していき、当初は1回の配達で5軒回れたのが、1軒しか回れなくなることも考えられます。
しかし、この1軒のお客さんが配達を希望し続ける限り、サービスを止める事はできません。5軒まとめての配達であれば、売上利益から配達人件費がペイできていたところが、配達先が減少することで赤字になる可能性も大いにあるのです。
本部はこのようなリスクを覆い隠して、新たなサービスを始めようとしているのではないか……。旧知のオーナーたちと話をしていると、そういった悩みはよく耳にします。コンビニが日々便利になるいっぽうで、加盟店の苦悩は深まるばかりなのです。
image by: MAHATHIR MOHD YASIN / Shutterstock.com
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