dポイント3倍のお得さの裏で動いているドコモとマツモトキヨシ業務提携におけるメリット

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NTTドコモ(以下、ドコモ)とマツモトキヨシホールディングスは昨年8月、業務提携を発表した。
この業務提携により、
・ドコモの「dポイント」
・「マツキヨポイント」
この2つを同時に貯めることができる。
このほか、貯まったdポイントをマツモトキヨシ店舗での利用も可能となる。
さらにdカード決済で最大3%のdポイントも貯まる。

このサービスは2018年4月30日から東名阪エリアの約850店舗から提供を開始し、順次全国のマツモトキヨシ店舗へ拡大していくとしている。




通常、マツモトキヨシ店舗での買物では、100円ごとにdポイントとマツキヨポイントが1ポイント貯まるのだが、2018年6月30日まではdポイントが3倍の3ポイントが貯まるキャンペーンも実施中だ。

ポイントを2重取りできるお得な仕組みだが、
マツモトキヨシはドコモ以外にも、2014年からauの電子マネーサービス「au WALLET」利用でWALLETポイントが貯まる施策も行っている。貯まったWALLET ポイントをマツキヨポイントに移行することも可能だ。

こうしてみるとマツモトキヨシは、通信事業者との業務提携に対して柔軟だ。
お買い得商品とお得なポイントでユーザー還元を実現しており、利用者としてはお得なように見える。

ところが従来のマツキヨポイントは、マツモトキヨシのユーザーを囲い込むことができるが、今回新たに利用可能となったdポイントなどの場合は、ポイントを付与しても他店で利用されることもあるため囲い込みのツールとしては明らかに弱い。

では、なぜマツモトキヨシはドコモをはじめとする通信事業者と業務提携を行ったのか?

その狙いは、通信事業者からの送客だ。
6千万人を超えるdポイント会員に向けたインフォメーションの効果は大きいだろう。

ドコモ側はどうなのだろうか?

ドコモの場合は、ひとつがdカードやiDなどの決済利用だ。
ドコモは通信事業だけではなく、スマートライフ事業として、コンテンツ・コマースサービスや金融・決済サービスなどその事業は多岐にわたる。




そのなかでも、金融・決済サービス(dカードおよびdケータイ払いを合算)の取扱高は、2016年度2.6兆円にのぼる。
金融・決済サービスは手数料によるビジネスであるため、サービスの拡大が必要不可欠だ。
dポイントを付与することで、マツモトキヨシをはじめとするdポイント提携店舗において、他社のクレジットカードや決済ではなくドコモの決済を促すと言うわけだ、




さらに、マツモトキヨシとドコモの業務提携では、顧客の購買データを元にしたビッグデータを得る。

つまり、嗜好や利用時期に合わせた効率的な情報配信などのマーケティング施策が可能となる。

ビッグデータの利用はそれだけではない。
ほかの企業の情報配信やリサーチの依頼に対して、ドコモが得たビッグデータからのレポート提供で、効率的に企業と顧客を繋ぐこともその一つ。

これまではリピーターで回していた企業の経済圏に対して、新規の獲得や効率的なキャンペーンなどで攻める戦略に転換できるようになるというわけだ。

既存の小売業での経済圏は、
・ポイントが貯まる
・使うえる店舗に行く
というシンプルなものだった。
一方、dポイントやdカードそして通信と組み合わせたドコモの経済圏は、これらの経済圏を取り込んで相互につなげていくことで、大きなお金の流れを生み出す。

我々の消費活動は、ビッグデータによるレコメンデーションなのにも関わらず、自らその商品を選んで購入しているという錯覚のもと、いつの間にか通信事業者の渦にのまれかけているのかも知れない。


執筆  mi2_303