ぽっかりと時間が空いてしまった時はどうすればいいでしょうか(写真:miya227 / iStock)

もうすぐ新年度。学生生活を終えて、社会人として働き始める方は期待と不安で胸がいっぱいの時期かもしれません。
入社するとまず受けるのが新人研修。そこでは「名刺の渡し方」など一般的なビジネスマナーが伝授されますが、実際の職場では「正しい」と言われているマナーだけでは立ち行かなくなる場面がしばしばあります。
本稿では、マナーやスキルより先に最低限知っておきたい仕事のルールについて、企業コンサルタントや手土産コンシェルジュとして活動する平原由紀子氏の「入社1年目女子 仕事のルール」から抜粋してお届けします。

新入社員に実はよくある「暇で困る」

「仕事は忙しいもの」と思っている方がほとんどでしょう。確かに「忙しい」という話はよく聞きますが、「暇で困る」という話はあまり聞きません。けれども、実は暇な時間もあるのです。入社後の研修が終わりそれぞれの部署に配属されると、上司や先輩のもとで働くことになります。そうするとすぐに仕事を任されるわけではなく、上司や先輩のお手伝いから仕事を始める場合が多いでしょう。部署のメンバーから教えてもらいながら、仕事を覚えていくという期間です。

そういう時に、ぽっかりと時間が空いてしまい暇になることがあるのです。上司や先輩は、新入社員に手取り足取り仕事を教えながら、同時に暇にしないようにとやることを指示しなければいけないので、けっこう大変なのです。忙しいと説明する暇もないかもしれませんし、手伝ってほしいなと思っていても、入って間もないうちは難しい仕事は頼めないので、お願いできる仕事も限られてしまいます。

暇になると、自分だけが取り残されたような気持ちがしてしまい、どうしたらよいかわからないかもしれませんが、上司や先輩にも、いろいろと事情があるのだということを理解しておきましょう。ただ、暇すぎて仕事以外のことをするのはご法度です。以下は実際にあった失敗談です。

入社してしばらくは暇な時間が多く、周りは忙しそうで声をかけるのもためらう感じだったのでネットニュースを見たりしていたら、先輩から「仕事中は見ないでね」と注意されてしまいました。(食品メーカー、40 代)

暇な時は、正直に「いま、手があいているので、何かお手伝いすることはありますか?」と周りに声をかけましょう。ただ、どうしてもお手伝いできることがなかったり、「何かお手伝いすることはありますか?」と何度も聞くのも迷惑になってしまうこともあります。そういう時は、自習時間にあてましょう。

たとえば教えてもらった仕事の内容をまとめるのもいいでしょうし、パソコンスキルの向上などにあててもいいでしょう。社内には必ずパソコンのエキスパートがいるものです。そういう人に教わるのもよいですね(もちろんそういう場合は、上司にひと言断ってからにします)。

実は、私も新入社員の頃、突然暇になって困ったことがありました。営業だったので、そういう日は上司に許可をとったうえで「新規取引先」にコンタクトするようにしました。初めての電話でのアプローチはとても緊張するものでしたが、「暇よりはマシ」と思って積極的に取り組みました。この経験のおかげで、電話をかける時のノウハウが身に付いた気がします。「暇な時間」にめげることなく、仕事を見つけて積極的に動けば必ず得るものがあるでしょう。

会社の歓迎会での振る舞い方

入社したら早速、「新入社員歓迎会」が開かれると思います。部署ごとの小さな会や会社全体の大きな会まで、規模はさまざまですし、着席だったり立食だったりと、形式もさまざま。慣れない場面で緊張するかもしれません。そのような会で、新入社員はどのように振る舞えばいいかは気になるところです。

まず、座席です。着席の場合は席が決まっていることが多いので、幹事の指示に従います。一方、立食の場合は決まっていないため、つい親しい同僚だけで固まりがちですが、それは避けましょう。歓迎会は、文字どおり、新入社員のみなさんを歓迎する場。感謝の気持ちを込めて、同じ部署の先輩や上司などと、積極的にコミュニケーションをとるようにしましょう。

上司からあいさつがあり、乾杯をするというのが一般的な会の流れ。ここで乾杯時の失敗談をご紹介します。

新入社員歓迎会で、上司から「今日は歓迎会だから」と言ってもらったので、上司に当たり前のようにビールをついでもらったら、先輩から「お前が先につぐものだ」と怒られました。(外資系不動産会社、40 代)

この例では新入社員に非はないようにも感じますが、これからお世話になる上司・先輩に感謝の意を込めて先につぐ、というのが無難かもしれません。

また、アルコールが飲めない人も一応ビールかワインをついでもらいます。かたちだけでよいので口だけはつけましょう。その後、ソフトドリンクに変えるのがスマートです。そして、乾杯が終わったら、席を立ってお酒をついで回るのが理想的。「お酒をついで回るなんてうんざり」と思うかもしれませんが、これは最初の儀式のようなもの。はじめてごあいさつする方には、自分のフルネーム、配属先を伝えてから、お酒をつぐのがよいでしょう。

「お酒をつぐタイミングがわからない」「何をつげばよいのかわからない」とよく聞きますが、とりあえずビール瓶を持って、「ビールでよろしいですか?」と確認してから、つぎます。新入社員が次々と回ることになるので、話し込む必要はありません。早く切り上げるのがマナーです。お酒をついで回る時は、偉い人だけでその周りの人は無視、ということのないように、両隣の方にも気を配れるとよいでしょう。

また、一次会が終わると「二次会に行きましょう」と誘われるかもしれません。「もう帰りたいな」と思う気持ちもわかりますが、新入社員歓迎会の後の二次会はできれば参加しましょう。新入社員のために、わざわざ企画してくれているのです。それなのに主役がさっさと帰ってしまったらがっかりさせてしまいます。ですが、三次会まで無理に出る必要はありません。電車のあるうちに帰りましょう。歓迎会以降も社内の食事会はあると思いますが、適度に顔を出し、二次会も出たければ出る、というスタンスで大丈夫です。

社内の食事会は面倒だなと思うかもしれません。昔に比べたら、「飲みにケーション」と称する、仕事終わりに会社の人と飲みに行くようなことも少なくなりました。

だからこそ、たまにある会社の食事会はお互いにコミュニケーションがとれる大事な場面です。嫌がらずに楽しんで参加するといいと思いますよ。

ご馳走になった後は、3回お礼を伝える――これは私もふだんから実践していることです。「3回も言わなければいけないの?」と思うかもしれませんが、私の周りの方々もみなさんそうしているので、目安にしてみてはいかがでしょうか。1回目のお礼は、ご馳走になった直後に、2回目は翌朝メールで、3回目は次に会った時にというわけです。

歓迎会の翌日、出社して仕事をしていたら、別の部署の同期が来て部長から課長、係長まで「昨日はありがとうございました」とお礼を言っていました。いまさらバツが悪くて言えませんでしたが、大変反省しました。(メーカー、40 代)

社内の人であれば、ご馳走になった翌日にも直接言えばそれで充分です。その方が出張に行かれていたりしてすぐに会えない場合は、まずメールでお礼を伝えておくのがよいでしょう。新入社員のうちは、ご馳走になった直後の1回のお礼で済ませてしまいがちなので、覚えておくとよいですね。

特に、取引先にご馳走になったのに翌朝何のお礼もなかったら、「失礼な人」と思われてしまうかもしれません。せっかく食事をしていい関係になっても、これだけで印象が悪くなってしまうのは残念です。

お礼の仕方にも配慮を

なお、お礼の仕方にもちょっとした配慮が必要です。たとえば、チームメンバー全員がご馳走になった場合はよいのですが、一人だけ誘われた場合は注意が必要です。


上司はこっそりほかの人にわからないように誘ったのかもしれません。「最近元気がないけど大丈夫かな」という気遣いから誘ったり、たまたま退社時に会ったので声をかけた、という場合もあるでしょう。それなのに堂々と大きな声でお礼を言われたら、ご馳走したほうは焦ります。というのも、周りはけっこう聞いているからです。

同じ年代の人は「あれ、○○さんは誘われてご馳走されたんだ、私はまだ誘われたことがない」と思うかもしれません。積極的に誘われたいとは思わなくても、「自分は誘われなかった」ことに、反応してしまう方もいるのです。

ご馳走されるほうにも、気遣いが必要です。些細なことと思うかもしれませんが、きちんと伝えることによって「また誘ってみよう」と相手に思ってもらえるものです。これは会社に限らず、親しい人たちにも心がけるとよいでしょう。人間関係が円滑になる秘訣ですよ。