(※)現在、富岡〜浪江駅間は列車代行バスが運行されている。

 避難指示の解除に加えて、2017年5月の福島復興再生特別措置法の改正により、将来にわたって居住を制限するとされてきた帰還困難区域内でも、避難指示を解除し居住を可能とする「特定復興再生拠点区域」を定めることが可能となった。

 これまで双葉町、大熊町、浪江町の拠点整備に向けた計画が認定されており、富岡町、飯舘村、葛尾村でも計画策定に向けた検討が進められている。

「まち機能」の回復後押し
 故郷に戻った住民が安定した生活を取り戻すためには、事業・なりわいの再建と新たな産業の誘致を両輪とする産業の復興が不可欠だ。

 原発事故に伴い避難指示等の対象となった被災12市町村の事業者のうち、もといた地元で再開・継続している割合は28%、避難先等で移転再開している割合は25%程度となっている(※)。

 被災事業者の中には、震災によって商圏が縮小した中であっても、持続的な経営を目指して取組まれる方や、福島県や首都圏の百貨店などへの、新たな販路を開拓するため、積極的に挑戦される方もおり、前向きな動きが見え始めている。2015年8月に創設された、

 国・福島県・民間からなる福島相双復興官民合同チーム(公益社団法人福島相双復興推進機構 )は、これまでに約5000の事業者と約1100の農業者を個別に訪問し、訪問を通じて得た多様なニーズに対して、きめ細かな個別支援を進めてきた。そうした取組を通じて、被災地における事業再開・なりわいの再建に取組み、事業や商圏の回復を通じて、被災市町村の「まち機能」の回復を後押ししている。
(※)2018年3月時点。福島相双復興官民合同チームが個別訪問した事業者の意向を集計した割合。

産業団地への入居は増加
 事業・なりわいの再建に加えて、新たな企業の誘致や先端的な取組の推進も、地域の活力や雇用を生み出す上で極めて重要な課題だ。

 被災12市町村の産業基盤を抜本的に強化すべく、震災後に17の新たな産業団地の造成が進められており、また、震災前からある産業団地への入居企業数は、震災前の35社から49社(2018年1月時点)まで増加した。

 新たに立地している企業も、ウェアラブルIoT機器のメーカーや車載用リチウムイオンバッテリーの二次利用技術の開発・製造を行う企業等、これまで地域に多く立地していた伝統的な繊維・陶磁器関連の企業や原子力発電所に部品・資材を供給する企業と違って非常に多彩だ。

 また、廃炉、ロボット、エネルギー、農林水産業といった分野で福島県浜通り地域の新たな産業基盤の構築を目指す「福島イノベーション・コースト構想」は、様々な民間企業の参画を得て進めているナショナルプロジェクトだ。

 楢葉町に廃炉を円滑に進めるための遠隔操作機器や装置の実証開発を行うための「楢葉遠隔技術開発センター」が開所(平成27年10月)されたり、南相馬市から浪江町にかけて、福島ロボットテストフィールドという様々な分野のロボットやドローンの実証試験と性能評価が一か所で出来る世界に類を見ない拠点が整備されたりする等、この構想を支えるインフラ等の基盤が構築されつつある。

 また、南相馬市で全国初のドローンを使った集落への配送サービスが行われる等、最先端の取組が福島県の浜通りから起こりつつある。