利用客に商品名を覚えてもらうため、製品名を語呂合わせやだじゃれにするケースがありますが、鉄道の世界でも意外なものが語呂合わせでネーミングされています。

ナンバーに隠された語呂合わせ

 名称を覚えやすくするために、だじゃれや語呂合わせで命名された機能や商品をよく見かけますが、鉄道の世界でもそのようなナンバーの車両があります。


土佐くろしお鉄道の9640(くろしお)形ディーゼルカー。会社名の一部が形式名に使われている(児山 計撮影)。

 たとえば高知県の太平洋沿いを走る土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線では、9640形というディーゼルカーが使われています。これは会社名の「くろしお」を数字に置き換えた語呂合わせです。似たような例では、岩手県の太平洋沿いを走る三陸鉄道の36形ディーゼルカーも「さんりく」を数字に置き換えています。

 社名以外では、東武鉄道の634型電車「スカイツリートレイン」が挙げられます。634は東京スカイツリーの高さである634(ムサシ)とかけたもの。さらに東上線で使用している10030型電車のクハ11634も「いいムサシ」と読ませて、東京スカイツリーのアピールをしたこともあります。


東武鉄道の634型電車「スカイツリートレイン」(児山 計撮影)。

 このほか、創立80周年を記念して命名された京急電鉄の800形電車や、創立100年を記念して100と「飛躍」をかけた高松琴平電気鉄道のラッピング電車「ことちゃんひやく号」など、数字の語呂合わせで決められた形式やネーミングは意外と例があります。

番号だけではない…こんなところにも

 鉄道の語呂合わせは車両の番号以外にも。愛媛県の伊予鉄道の社章は、カタカナの「イ」を4つ組み合わせたデザイン。イが4つで「イ4(伊予)鉄道」というわけです。


伊予鉄道の社章はカタカナの「イ」を4つ組み合わせたデザイン(児山 計撮影)。

 また、埼玉県の秩父鉄道は、社章が漢字の「上」を6つ組み合わせたデザインです。これは秩父鉄道に名前が変わる前の社名である上武鉄道から引き継がれているもので、上が6つ、つまり「上6(上武)鉄道」となります。両社とも100年を超える歴史を有していますが、語呂合わせも現在に至るまで引き継がれています。

 伊予鉄道には、語呂合わせのネーミングを持った車両も走っています。市内線を走る2100形と5000形は、メーカーのアルナ車両が「リトルダンサー」と名付けている車両です。「躍動的で可愛らしい小さな踊り子(Little Dancer)」という意味のほか、床の段差が小さい、すなわち「リトル段差」という意味も。この「リトルダンサー」シリーズは伊予鉄道のほか、札幌から鹿児島まで、各地の路面電車で使われています。

 身近なものでは、ICカードも語呂合わせやだじゃれが。たとえばJR九州の「SUGOCA」は「Smart Urban GOing CArd」の略とされていますが、九州弁で「すごい」を意味する「すごか」とかけています。北九州高速鉄道(北九州モノレール)には、モノレールのSUGOCAということで「mono SUGOCA(ものすごか)」というICカードも。このほか、JR東日本「Suica」やJR西日本「ICOCA」、ことでん「IruCa」など、「IC」を入れつつ別の言葉とかけている名前のカードも見られます。

 このように、鉄道の世界には由来を調べてみると意外な語呂合わせになっている名称がたくさんあるのです。