2本目の4分、石津(写真右)がユ・インスのゴールをお膳立て。狙いとしている素早いカウンターから一気に仕留めた。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

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 横浜と福岡のトレーニングマッチが2月6日、宮崎県宮崎市のシーガイア・スクエア1で行なわれた。45分×2本のゲームは1、2本目ともに横浜が4-1-4-1、福岡が4-2-3-1の布陣。1本目は開始20秒ほどの電光石火で福岡の石津大介がゴールを奪い、2本目も4分に福岡のユ・インスが得点を決めて、ともに0-1で後者が勝利した。
 
 福岡の井原正巳監督は「ボールを支配されてしまい、まだまだ力の差があると感じた」と話すが、集中力高く最後までリードを保ち、「勝ちにこだわる」(同監督)部分は完遂された格好だ。
 
 手堅く、また粘り強く守りながら効果的なカウンターを繰り出す福岡のなかで、ひと際目立っていたのが2017シーズンに神戸からレンタル復帰した石津だ。1本目はフルタイム、2本目は31分までプレーした背番号16は、トップ下に入って横浜守備陣を翻弄した。
 
 類稀な嗅覚で最終ラインと中盤の間のスペースを見つけ出し、タイミング良く入り込んでは味方からのボールを呼び込んだ。その後の選択肢も多種多様。時にはターンして突っ掛け、時にはキープして味方の押し上げを助け、時には簡単に叩いて攻撃のリズムを作った。
 
 トップ下に置かれた石津は「水を得た魚」だ。サイドで起用されることも多かった復帰1年目とは、躍動感がまったく違う。「サイドだと相手の攻撃に引っ張られて位置が低くなり、良さが消えてしまう」(同監督)ため、真ん中に置いた采配がドンピシャだった。
 
 本人も「たくさんボールを受けられているし、やりやすい」と気分は上々。チームが目指している形と石津のスタイルが噛み合ったシーンが2本目の4分。FC東京から新加入のユ・インスがゴールネットを揺らしたシーンだ。
 
 福岡はボールを奪うと、ショートカウンターを発動。首を振って周囲を確認した石津に、注文通りのボールが入る。16番が素早くターンすると、眼前には広大なスペースが広がっていた。すかさずドリブルを開始して中央にDFを引き付け、そして絶妙なアシストパスを通してみせた。
「求められている速いカウンターでしっかり仕留められたし、やろうとしたことが形になったゴールだと思う。普段のトレーニングから意識してきたものがJ1相手にも出せたのは自身になる」(石津)
 
 井原監督も石津の特長が凝縮されたゴールに「前線の選手を活かす出し手にもなれる」と彼を称賛する。1本目にも、そしてゴールシーンの前後にも、石津はピッチを去るまで攻撃面で“違い”をつくり続け、幾度も周囲を唸らせた。
 
 同時に「守備も求められているのは理解している」と果敢なチェイシングで相手のビルドアップを遅らせるなど、献身性も示している。攻守ともに強烈な存在感を放つ姿は、自ら最前線を駆け抜ける雄々しき“将軍”のようで、頼もしくもあった。
 
 もちろん「前線のポジション争いは熾烈で、開幕まで先発は分からない」という指揮官の言葉は本音だろう。トゥーリオ、森本貴幸、ドゥドゥ、山瀬功治、城後寿、ユ・インス、松田力、枝村匠馬とJ2屈指の選手が名を連ねる。
 
 それでも輝きを取り戻した石津のプレーを目の前で見ると、断言せずにはいられない。中央で起用されるのであれば、「石津の双肩に福岡のJ1昇格は懸かっている」と……。
 
取材・文●古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)