伊藤は『でじべじ』について「都会とLEDと野菜が一体化している」と語る。野菜に触れてビニールハウスの光を見上げると、フレームの間からは周囲のビル群が見える。土のにおいのするビニールハウスの中から、空とLEDの光と高層ビルの光を眺めるというのはまさにここでしかできない体験だ。昼と夜でも作品は表情を変え、夜は光がイルミネーションのように映える一方で、昼には太陽の光を直接受けて野菜たちの色がより一層際立つのだという。

■まるで野菜のオーケストラ。野菜そのものが奏でる音を使用

光と同時に鳴らされる音にも注目したい。音は光と同じく野菜ごとに異なり、トマトにはヴァイオリン、にんじんにはトランペット、など7種の野菜に7種の楽器が割り当てられているのだという。さらに個々の野菜の咀嚼音や葉を触った時の音など、野菜そのものが奏でる音も融合されている。またショータイムの時にはこの7種の音が合わさり、さながら「野菜のオーケストラ」といった華やかな音が光のショーを彩っていた。

■「野菜の個体差は野菜が身につけたデザイン」

自身も100種を超える植物を育てるほど、植物好きだという伊藤。『でじべじ』の鑑賞体験を通して野菜が持つ個体差――7種の野菜が持つ花や実の色、育ち方、咀嚼音などの違い――への意識を感じ取れた。

伊藤は「植物は生き残るために進化してきた。葉や根などの色や形は、その野菜が生き残るために身につけた生存戦略でありデザイン」と語る。『でじべじ』では光と音の演出によって、見慣れた野菜の植物としての様々な表情が強調されている。作品を体験する際には、野菜の感触を楽しむと共に光や音で拡張された「野菜のデザイン」を感じてほしい。

『でじべじ -Digital Vegetables- by PARTY』は東京ミッドタウンで開催中の『Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2017』で11月5日まで公開されている。