人も車もほとんど通らない丹東互市貿易区の周辺(画像:読者提供)

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2015年10月に開設された「丹東国門湾互市貿易区」。中国遼寧省の丹東から20キロ以内に住む住民に限り、1日8000人民元(約13万5000円)の範囲内で北朝鮮から買い付けた商品を販売できるという免税市場だ。

丹東市当局は、国連安全保障理事会の制裁決議を受けて、同所で取引される輸入農作物に対する検疫を強化したと韓国の聯合ニュースが報じた。市場の特性上、輸入農作物と言えば即ち北朝鮮産である。

丹東出入境検疫局の韓洪波副局長は、互市貿易区を視察した際に、検疫強化の指示を下した。また、貿易区の担当者に農作物の入荷時間、品目、数、重さ、移動回数について事細かく質問し、北朝鮮産の小豆とエゴマの葉を直接検査した。

さらに、出入境検疫局と貿易区間の協力、検疫設備の完備、検疫方法の熟知、伝染病検出率の向上などを指示した。

中国政府は、国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁決議を受けて、先月15日から北朝鮮産水産物の輸入を全面禁止した。一方で、農産物については何ら制限がなされていなかった。

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指示や法的根拠がない場合に圧力をかける手段として、中国当局はこのように別件でギリギリと締め上げる手法をよく使う。

中国に進出している韓国資本のスーパー、ロッテマートは、99店舗のうちの74店舗が消防当局から「消防設備に問題がある」と指摘を受けて営業停止に追い込まれた。実際は、在韓米軍の装備する高高度迎撃システム「THAAD(サード)」が、韓国国内のロッテ系のゴルフ場に配備されたことに対して中国政府が行った事実上の報復措置だ。

町の命運をかけた巨大プロジェクトが、北朝鮮のせいで不振を極めていることもあり、丹東市当局が報復措置を取るのは無理もない。

丹東市は、中朝を結ぶ新鴨緑江大橋の周辺に開発区という新市街地を造成した。市政府の庁舎を移転させるほどの力の入れようで、互市貿易区は開発区内の施設の一つだ。

中国側が建設費を全額負担して橋は完成したが、北朝鮮はさらに接続道路、税関施設の建設も要求した。中国が難色を示し、開通ができずに数年が経った。

やがて制裁が強化され、中朝関係が悪化したことで、開発区は遼寧機電学院という大学の周辺を除いて、半ばゴーストタウンと化してしまったのだ。

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