「そんなネガティブ思考で何が得られるの?」と聞きたくなる人、周りにいませんか?(写真:xiangtao / PIXTA)

ネガティブな考えがストレスの悪循環になる

超ストレス社会ともいわれる現代。日々の仕事や生活に息苦しさを感じている人は少なくありません。そんな人はどうすれば心を健全に保てるでしょうか。

私はスウェーデン、カルマル市に生まれ、自分で興した会社でずっと働いてきました。昔からずっと、いわゆるリーダー、起業家タイプでしたが、社交性や愛想のよさを隠れみのに、実は不安症を長年抱えていました。その心の病を妻であるスーサン・ビルマークと共に夫婦で抜け出しました。

共著である『北欧スウェーデン式 自分を大切にする生き方』にも詳しくまとめてありますが、ストレスや不安を断つためにできる最も重要なことが、今この瞬間をもっと意識して、ポジティブな話し方をすることです。ネガティブに考えていると、ストレスや不安の悪循環に突入します。自分を批判したり責めたりするのは簡単だからです。

意識するしないにかかわらず、脳はつねに物事を考えています。そうした考えが気分や感情に絶えず影響を及ぼします。心配ごとやストレスを抱えてしまうたいていの原因は、ネガティブで不健全な考えです。

家族や家庭環境は考え方に大きな影響を与えます。「両親がしょっちゅう言い争っていた、家族が文句を言い、人生に不満気だった」というような経験です。口論したり、不平不満を言ったり、ストレスをまき散らしたりする人たちに囲まれて育つと、自尊心や自信を培うのは困難です。

とはいえ、そんな環境で大人になってもそれを改善することは、100%可能です。自分のネガティブな思考パターンはなかなか認めづらいものです。でも、一度認めてしまえば、自分の態度を改めてポジティブに考えられるようになります。

ポジティブな考え方に改めると、期待以上のいろいろな効果があります。心配ばかりしている、自己破壊的な考えがある、すべて分析しないと気が済まない、自分の能力を疑問視している、自分の容姿に不満など、ネガティブ思考の95%は真実ではありません。でっち上げの空想にすぎないのです。

ポジティブで、人生を肯定し、力を与えてくれる考えこそが真実なのです。脳は空想と現実を区別できませんから、どの考えも現実だと認識してつねに反応しています。

したがって、考えている内容が自己破壊的あるいは自虐的なことばかりだと、深刻な問題につながる可能性があります。反対に、ポジティブな考えをうまく活用すれば、思考はとても役立つツールになります。

ネガティブ思考から得ているものは何か

ネガティブ思考には中毒性があります。ネガティブ思考が(短期的に)ちょっと役に立ったりすると、たちまち習慣化してしまいます。ネガティブでいることに意味があるからです。でなければ、ネガティブ思考をずっと続けるはずがありません。

ネガティブ思考のときは、意識が自分のネガティブな面に向いていますから、ネガティブな行動をとったり、周囲に対して愚痴を漏らすなどネガティブなことを言ったりします。すると、親切な人が話を聞いてくれたり、理解を示してくれたりすることがあります。何か問題があると、助けたり支えたりしようとしてくれる人の親切を利用するわけです。

ネガティブ思考は、やりたくないことから逃げる方便にもなります。家族が心配して、無理強いしないよう、本来は自分がやるべきことを手伝ってくれたり、頼まれていたことを減らしてくれたりします。こうして、面倒なことや単にやりたくないことをせずに済ますのです。

「ネガティブ思考から得ているものは何?」

変な質問かもしませんが、そこを考える必要があります。ネガティブ思考の人は中毒患者のようなものです。ストレスや不安に駆られて生活している人は、自分のネガティブな思考パターンを自覚する必要があります。自覚して初めてなんらかの手が打てるのです。

この不健全な習慣を断ち切るにはかなりの努力を要します。人間は習慣の生き物ですから、考え方を改めるのに相当の労力が求められます。ネガティブなことばかり考えるのは、自分自身を虐待しているも同然なのです。

ネガティブ思考をしていると、弱気、体調不良、不安になります。ストレスを感じ、怒り、落胆、悔しい、恐れ、不安、うんざりといった気分になります。後ろめたさや恥ずかしい気持ちでいっぱいになります。自分は孤独だ、魅力がない、自信がない、愛されていない、と感じます。

この中のいくつか、あるいは当てはまるものが多い人は、ネガティブ思考に傾いている可能性があります。そうであっても、あなたひとりではありません。たいていの人は、ネガティブなことを毎日数え切れないほど考えているからです。

自尊心が低い人は、他人から同意や承認を得ようとしがちです。自分はよくやっている、十分魅力的だ、特別な存在だ、と誰かに言ってもらいたいのです。

ネガティブ思考を改めるためにできる心掛けをいくつか挙げてみましょう。

□ 自分に正直になる。ネガティブ思考で自分を傷つけていることを自覚する。
□ ネガティブ思考は改めなければならない悪い習慣、と自覚する。
□ 起きている間の時間とエネルギーのすべてを、不健全な思考パターンを断つの
 に費やすと決意する。
□ 自分の思考パターンを意識する。
□ 他人に認めてもらおうとするのではなく、アファメーション(肯定的な
 自己宣言)や励ましの言葉によって、自分自身で気分を高揚させる。

※ 以上は、ルシンダ・バセット著『わたしもパニック障害だった』(片山奈緒美訳、星野仁彦監修、ヴォイス)を参考にしました(日本語は本稿のためのオリジナル訳)。

ネガティブを伝染されないよう注意

では、健全なポジティブ思考だということは、どうすればわかるのでしょうか。

ポジティブ思考をしていると、精神的に強くなります。気分がいい、安心、幸せ、愛情、魅力的、リラックス、平静、勇気、エネルギッシュ、意欲的、安全、愛され受け入れられている、と感じます。

ネガティブな人は自分を認めてもらおうとして、ネガティブな態度を周囲にまき散らします。ネガティブな態度の人が自分の周りにいて疲れる、と感じるなら、そうでない人と付き合ったほうがいいでしょう。

愚痴っぽい人は、同類をただ求めているだけではなく、愚痴を言い合うための同類が欠かせないことをお忘れなく。自分と辛抱強く向き合うのです。悪い習慣を断つには時間がかかります。

ネガティブな態度は長年培われるものです。悪い習慣を改めるのは新しいことを学ぶのに似ています。考え方を改めるには時間がかかるので、我慢や根気が必要なのです。

何歳だって、ポジティブに変わることができる

私は娘のジュリアには、そのままで十分、と常々言い聞かせています。すばらしい娘で誇りに思っている、と言ってやります。

こうしたことをしょっちゅう耳にすることが娘にとって重要なのです。何か達成したわけではなくても、です。こう言われることで、娘は人としていろいろな意味で強くなっていくのです。できたことだけでなく、子どものすばらしい人格を頻繁に褒めてやるのがいいでしょう。

子どもの頃、褒められ、励まされ、それでいいよと言われ続けて育っていたらどうなっていたでしょうか。いろいろな不安や心配を抱えることなく、今よりもずっと高い自尊心の恩恵を受けていたはずです。

私も、自分自身がネガティブ思考だと認めたくありませんでした。自分がこうありたいと思う人間だと思い込むのは簡単ですから。

でも、自分の思考パターンを意識するようになると、自分がいかに間違っていたかに気づきました。ネガティブな思考パターンのせいで病気になっているとわかったのです。


あのままネガティブ思考を続けていたら、ストレス、心配、不安を抱えたほかの人たちの役になど立てなかったはずです。30年経ってようやく、ネガティブ思考を断ち切る決心をしました! 人は大人になってからでも変われます。今の私がまさにその見本なのです。

私は至って普通の人間です。かつては、ストレスや心配ですっかり参ってしまい、孤独感にさいなまれ、そのような問題を抱えていることを恥ずかしいと思っていました。

健康になるには変化が必要で、その変化は自分の内面からしか生まれない、ということが今はわかるようになったのです。

健全でポジティブな言葉で自分を褒めると、そのうちに気分がよくなってきます。自分の内面からの褒め言葉は、自尊心や自信、やる気を高め、ストレスのある状況でもリラックスしていられるようになります。

人には、ネガティブなことばかりに意識を向けて、ポジティブなことを無視する傾向があります。そうではなく、周りのポジティブなことに意識を向けるよう努めるのです。ネガティブなことではなく、幸せや喜び、希望を感じるたびに心をじっくり楽しませるのです。