犯罪を計画段階で処罰するいわゆる「共謀罪」法(組織的犯罪処罰法改正案)が6月15日に成立した。自民・公明両党は、野党の追及を振り切って採決を強行。法案そのものへの批判に加え、あまりにも強引な採決の手法に各界著名人や漫画家、作家から非難の声が相次いでいる。

思想家の内田樹さん(66)は、法案成立前に「国会がすさまじいことになっているようです。(中略)日本の立憲政治が終わりかけています」とツイートし、法案成立後には

「政府は『気に入らない人間をいくらでも拘束できる法律』を手に入れました」

と投稿した。

平野啓一郎氏「現政権支持者も理性的に否定すべきではないか?まともじゃない」

『ちはやふる』で有名な漫画家の末次由紀さんは、「共謀罪には反対です。こんなに権力が信用できず気持ち悪いと思ったのはこれまでで一番です。私たち、バカにされすぎではないか」と怒りを露わにした。現代美術家の会田誠さん(51)も、「僕は一般的な国民になる気はさらさらないので、もとより共謀罪には反対です」とツイート。

かねてから政治について発言を続けてきた、お笑いコンビ「ウーマンラッシュアワー」の村本大輔さん(36)も、

「たまたま政府を英語にしたらgovernmentと出た。mentを抜いたら『支配する』になった。さっきニュースみたら共謀罪が成立してた」

と遠回しに共謀罪を揶揄するようなツイートを投稿した。

法案は通常、委員会で審議・採決されてから本会議に送られる。しかし自民・公明両党は、「中間報告」を実施し、法務委員会での採決を省略。本会議での採決を強行した。こうした採決の仕方について、芥川賞作家の平野啓一郎さん(41)は、「まともじゃない」と一蹴。

「色んな理由で現政権を支持している人も、せめてこの法律と昨日の国会は、理性的に否定すべきではないか?まともじゃない」

「松本人志氏が共謀罪に賛成し、冤罪の発生を容認したことを覚えておこう」

法案の略称は報道機関によって異なっている。例えば朝日新聞や毎日新聞の見出しでは、「『共謀罪』法案」や「共謀罪法」と表記しているが、NHKや産経新聞では「『テロ等準備罪』新設法」と表記。脳科学者の茂木健一郎さん(54)は、「テロ等準備罪」という呼び方に疑問を投げかけた。

「NHKなどは相変わらず『テロ等準備罪』と報道しているけれども、法案の内容は『共謀』そのものを犯罪化して、刑法の体系を根本から書き換えるものだから、『共謀罪』という名前が正確だと思う」

一方で、共謀罪に賛成する芸能人も。松本人志さん(53)は、5月21日放送の「ワイドナショー」(フジテレビ系)で「正直言うといいんじゃないかなと思ってるんですけどね」「えん罪も多少あるのかもしれないけど、未然に防ぐことの方がプラスが多い気もするし」と発言していた。

この松本さんの発言に対し、ライターの武田砂鉄さんは、

「松本人志氏が『ワイドナショー』で、共謀罪について(中略)賛成の姿勢を示し、(中略)冤罪の発生を半ば容認したことを覚えておこう」

とツイートしていた。