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昨年の米大統領選挙戦を特徴付けたといっても過言ではない、フェイクニュースの問題。ソーシャルメディアを通じて拡散するウソのニュースに今後どう対応していくべきかは、世界各国の施政者にとって避けて通れない緊急課題だ。先進国のなかでもいち早くフェイクニュース対策を進めるのは、メルケル首相率いるドイツである。

『ワシントン・ポスト』の報道によると、ドイツ政府が4月上旬に発表した新法の素案[日本語版記事]は、フェイスブックやツイッターなどの大手ソーシャルメディア企業に対し、差別や排斥を煽るフェイクニュースや違法コンテンツが投稿された場合、速やかに削除することを法的に義務付けている。もし違法な投稿の存在を知りながら迅速な対応を怠った場合、最大で5,300万ドル(約58億円)もの罰金が課せられるという。この素案は、今年9月に予定されている総選挙を前に可決される公算が大きいとされている。

米国で泥仕合のような騒乱を引き起こしたフェイクニュースは、ドイツでも社会問題化している。昨年、ドイツへの亡命を希望する外国人移民によるレイプ事件が発生したとの“ニュース”が報道されたが、これはメルケル首相の移民に寛容な政策を狙ったフェイクニュースであると判明した。

ソーシャルメディアの運営会社には、ヘイトクライムを助長する投稿や違法なフェイクニュースを取り締まる義務があります」とのコメントを発表したのは、ハイコ・マース司法相。法曹界の識者によると、先進国がこれまでにとったフェイクニュース対策としては、ドイツの例がもっとも踏み込んだ内容になっているという。

たとえば、違法コンテンツが投稿された場合、フェイスブックなどのSNS運営企業は、24時間以内にその投稿を削除しなければならない。この法律はドイツ国内のみの適用となるが、マース司法相は、ヨーロッパ各国で同様の措置が取られるよう強く訴えかけていくという。

テロ助長や児童ポルノに関する投稿もターゲットとするドイツ政府の法律制定の動きを歓迎する一方で、表現の自由の制限になりかねないとして警戒する向きも少なくない。ドイツ雑誌協会会長のシュテファン・シェルツァーは、SNS企業が新法への自衛策として検閲を強め、“私設警察”になりかねないと警告する。また緑の党に所属するレナーテ・キュナストも「(新法が施行となれば、罰金を恐れるSNS企業が)削除、削除、削除を繰り返し、結果的に表現の自由が大きく制限される」と同様の懸念をあらわにしている。

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