宇都宮徹壱 4人の作家とサッカー漫画を語る
写真家・ノンフィクションライターの宇都宮徹壱氏、2009年に『フットボールの犬』で第20回ミズノスポーツライター賞の最優秀賞を受賞したことをご存じの読者も多いだろう。
これまでワールドサッカーやJFL・地域リーグなど様々な視点からサッカーを見てきた宇都宮氏だが、この度「サッカー漫画」のイベントを立ち上げる。
宇都宮氏が「漫画」??不思議な組み合わせに思えるのだが何故このようなイベントを開催するに至ったか、お話を聞いてみることにした。
ーーこのイベントの起こりは何なのでしょうか?
カルロス矢吹さん(日本ボクシングコミッション試合役員)と上野直彦(漫画原作者/『アオアシ』取材・原案協力)さんと話しているうちに意気投合してこのようなイベントをすることになりました。カルロス矢吹さんがブッキングを担当している「トークライブハウスLOFT9 shibuya」で5月2日に行います。
上野直彦、能田達規(漫画家)、高田桂(漫画家)、大武ユキ(漫画家)の4人の先生方が出演いたします。
ーー宇都宮さんと漫画の関わりについて教えていただけますか?
私の子供時代は少年チャンピオン全盛期というものがありました。『マカロニほうれん荘』や『ブラック・ジャック』などの時代です。なかでも野球漫画の『ドカベン』にはまりました。大人になり漫画を読まなくなってしまいましたが、最近はまた読むようにしています。
今回のイベントでは4人の作家さんを取り上げるのですが、高田桂さんの『サポルト! 木更津女子サポ応援記』は雑誌掲載ではなくオンライン上で連載するweb漫画なんですね。そういう漫画を読む形態の変化や見せ方にも興味があります。
ーー実際にweb漫画には私も最初が抵抗がありました。しかし、慣れてしまえばコマ割なども気にならなくなりました。最近は縦にスクロールするweb漫画アプリも登場しています。
そうしたweb漫画ならではの“割り切り”みたいなものはすごいですね。
ーーサッカー漫画で影響を受けた作品は何かありますか?
やはり、『キャプテン翼』です。キャプテン翼の作者の高橋陽一先生は今でこそ「当時はサッカーのルールを知らなかった」とか色々言われていますが、キャプテン翼以前と以降には大きな違いがあります。
実際、それまでのサッカー漫画で代表作といえば梶原一騎原作の『赤き血のイレブン』がありますが、フィールドが土なんですね。当時の日本のサッカーといえば芝ではなくて土や泥にまみれながらやっていた印象でした。ところがキャプテン翼はちゃんと芝のフィールドなんです。
キャプテン翼連載当時、私はすでに中学生ぐらいだったと思うのですが、キャプテン翼のアニメを見て育った世代はサッカーがうまい(笑)。ジェネレーションギャップみたいなものをリアルタイムで感じました。
世界に与えた影響は間違いなく絶大です。
ーー今回、取り上げる作家先生たちの作品はどれもマニアックです。インナーマッスル、サポーター、Jユース、お金、スタジアムグルメ・・・。
サッカー漫画がここまで多様化しているというのは日本らしい「サブカルチャー」だと思ってます。そうした文化を取り上げる機会がなかったので、広げていきたいですね。
そして、気になるのがこうした漫画を読んでいる人たちがどんな人たちなのか?私たちにもわかっていないことなので、当日はドキドキワクワクです。
ーーサッカーが好きで漫画を読んでいるのか、漫画が好きでいきついたのか。それは自分も興味深いです。また、最近のサッカー漫画は昔と違い絵柄が非常にきれいなのも気になっています。『サポルト! 木更津女子サポ応援記』なんか秋葉原で人気が出たっておかしくないですよ。
作家先生もそれぞれサッカー漫画を描くきっかけというのがあると思うんです。漫画が好きでたまたまサッカーにいったのか、サッカー漫画がかきたくて漫画家になったのか。
『マネーフットボール』ほかの能田達規さんなら地元にサッカーチームができた、というのがきっかけだと思うし、大武ユキさんなら大学サッカーが趣味だったというところからですよね。
ーーそうですね。その中でいえば、大武ユキさんの『フットボールネーション』は2009年から連載が始まっています。ということは長友佑都らがインターマッスル、体幹で有名になる前から構想していたと思うんです。良くこの時期に編集会議に通ったなと(笑)。
実際に、『フットボールネーション』はJリーガーたちの間でも評判なようです。
あのようなニッチなテーマを扱った作品が、連載として続いていたというところに版元や編集部の「今までにない作品を世に送り出したい」という、いい意味での野心が感じられますね。最近、専門誌の保守的な傾向が顕著になってしまっている、われわれの業界はもっと見習うべきだと思いますよ。
もちろん、出版社の体力だったり読者の数だったりで、かなり違いがあるのは承知していますが・・・。
ーー私は「無駄」が大事かな、と思うんですよ。人生の余裕というか、好奇心を他に目を向けるというか…。
なので、今回のトークイベントではそうしたオフレコのような話を入れようと思っています。2部構成で考えていて第2部はぶっちゃけます。「編集と作家の関係性は?」とか「連載作家のスケジュール」とか、知りたいでしょう?
ーー知りたいです。そもそも、出版社も違う漫画家先生たちが一同に介して、その「素顔」が見れるだけでも貴重です。
今や上野直彦さんが取材・原案協力する『アオアシ』はビッグコミックスピリッツを代表する作品に成長していますし、そもそもみなさん男性か女性かすらわからないわけですし。
拝み倒しまして出演が実現した方もいらっしゃいます(笑)。夢のトークセッション是非ご期待ください。
渋谷で語る「サッカー×マンガ」人気マンガ家たちによる夢のトークセッション
日時:2017年5月2日(火)
場所:トークライブハウスLOFT9 shibuya
〒150-0044 東京都渋谷区円山町1-5 KINOHAUS(キノハウス) 1F
時間:OPEN 18:30 / START 19:30
料金:前売¥2,500 / 当日¥3,000(税込・要1オーダー500円以上)
前売券はe+にて発売中
出演:
上野直彦(漫画原作者/『アオアシ』取材・原案協力)
能田達規(漫画家)
高田桂(漫画家)
大武ユキ(漫画家)
宇都宮徹壱(ノンフィクションライター)
(出演者名は決定順です)
概要:
キャプテン翼の連載が少年ジャンプで始まったのは1981年。
当時、日本にとってワールドカップは「夢のまた夢」であり、国内リーグは純然たるアマチュアであり、欧州でプレーするのは奥寺康彦のみであり、小学生男子にとってのスポーツは「野球」であり、何よりサッカーはわが国にとってマイナー競技でしかなかった。
あれから、状況はすっかり変わった。
日本はワールドカップの常連国となり、国内リーグはプロ化して四半世紀が経過し、欧州では何人もの日本人選手がプレーしており、小学生男子のなりたい職業第一位は「サッカー選手」であり、何よりファンのサッカーリテラシーは著しく向上した。
当然、「サッカーマンガ」もまた、キャプテン翼の時代から大きく変化している。
そしてファンの関心の多様化に合わせるかのように、扱うテーマも「サッカービジネス」「インナーマッスル」「育成」「サポーター」など、かつてなくバリエーションに富んだものとなって久しい。
そんな「サッカー×マンガ」の現状と未来について、作家の皆さんと存分に語り合う場を東京・渋谷に用意した。ただいま、メンバーを募集中!