しかし、結果が伴わず、その後に私が監督へと内部昇格した際にやったことは、「時計の針を戻す作業」だったわけだ。守ってカウンターという戦いをもう一度やるぞ、と。それは何よりも結果を求めてのこと。J2に降格するかもしれない、という危機感があったからだ。
 
 立ち返るものがあり、J1に残留することができたが、次に何をやるのかを考えた時には「もっと攻撃的なことにトライしないと先はない」という思いしかなかった。それは2013年に誠さんが感じたことと一緒だと思うし、アーニーを連れてきたクラブの判断とも同じだと思う。
 では「先」とは何か。それは「Jリーグ王者になる」ことだ。2012年の話を少ししよう。2位となったものの、チャンピオンになった広島との差は大きかったのではないだろうか。
 
 広島は攻撃的で、主導権を握りながらゲームを支配していた。守る時間もあるが、なぜ耐えられるかと言うと、「攻撃のための守備」が浸透していたからではないか。
 
 よく「良い守備から良い攻撃」という言葉を耳にする。「鶏が先か、卵が先か」になってしまうが、「良い攻撃」をイメージできていないと、エネルギーを注いだ「良い守備」はできない。
 
 私が監督に就任した2014年シーズンがどういう状況だったのかと言えば、「まず守る」という発想だった。しかし、「頑張って守ろう」とした先の「良い攻撃」のイメージがなかった。すると、90分のどこかで気持ちがフッと切れて、決壊してしまう。
 
 だからこそ、誰かひとりの能力に依存したカウンターを武器にするのではなく、「全員がボールを握る準備をする」、「攻撃の形を共有して崩す」、そんなスタイルが大切だという答を導き出した。2013年シーズン以前のままでは苦しむだろうと思ったからこそ、現在の挑戦がある。
 
 今、結果を出すために全力を尽くしている。もし仮にダメだったとしても、そのチャレンジに対する後悔はない。この戦いが、タイトルへと続いていると信じているからだ。
 
 話題が前後するが、川崎戦は怖がらずに良いポジションを取れば、ボールはしっかり動くんだと証明した90分でもあった。それを研ぎ澄ませれば、次節・浦和戦で勝点3を掴めるだろうと確信している。
 
 3節・神戸戦(●0-2)も苦しんだが、その試合よりは策を見い出そうという選手の姿勢が伝わってきた。4節・柏戦(○1-0)でゲームプランを変更して粘り強く守ったゲームから、「自分たちのスタイル」を忘れずにトライしくれたことも、もっと上へ行ける可能性を示していると思っている。
 
取材・構成:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)
 
※渡邉監督の特別コラムは、J1リーグの毎試合後にお届けします。次回は4月7日に行なわれる6節・浦和戦の予定。お楽しみに!