金正男氏殺害の直後、暗い表情を見せた金正恩氏(朝鮮中央テレビ)

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東京新聞が2日付の朝刊で、北朝鮮で金正恩党委員長の暗殺が計画され、未遂に終わったと報じている。

同紙によれば、北朝鮮で36年ぶりに朝鮮労働党大会が開催された昨年5月、秘密警察・国家安全保衛部(現・国家保衛省)の地方組織が実施した一部住民に対する講演で、正恩氏の専用列車の爆破計画が党大会前にあり、未遂に終わったと報告していた。事件の具体的な時期、容疑者の氏名は明らかにされていないという。

「ミンチ」にして処刑

講演内容がこのとおりならば、暗殺計画は実在した可能性が高い。体制の守護を使命とする秘密警察が、このようなウソを言う理由が見当たらないからだ。

ただ、このような情報は、これまでにもまったくなかったわけではない。

たとえば2015年10月初め、北朝鮮の葛麻(カルマ)飛行場で、金正恩氏の視察前日に大量の爆薬が見つかったと米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。

建物の天井裏から発見されたのは、TNT火薬20キロ。手榴弾なら130個分以上になり、「暗殺計画」の存在を疑いたくなる量だ。

真偽のほどは定かでないが、金正恩氏の「悪政」に不満を募らせた幹部が、遂に行動を起こしたということなのだろうか。玄永哲(ヒョン・ヨンチョル)元人民武力相のように、文字通りミンチにされて殺されるぐらいなら、「こっちが先にやってやる」と考える幹部が出てきても不思議ではない。

(参考記事:玄永哲氏の銃殺で使用の「高射銃」、人体が跡形もなく吹き飛び…

小学生ら1500人が犠牲に

国民に対する監視・統制の厳しい北朝鮮では、体制への不満をぶちまけるのも命がけだ。つい最近の例では、市民が権力への抗議の意を表すため、朝鮮労働党の庁舎前で切腹する出来事があったようだ。

また過去には、製鉄所の労働者たちが権力の横暴に集団で抗議。それを弾圧するため体制側が軍隊を投入し、数百人もの人々を戦車で轢き殺すという凄惨な事件もあった。

さらに軍隊内では、クーデター未遂事件があったとの情報も伝えられている。1990年代半ば、朝鮮人民軍第6軍団が蜂起を計画。実行前に、やはり体制により抑え込まれてしまったという。

一方、今回のカルマ飛行場の件とよく似たケースであるように感じられるのが、2004年春に起きた龍川駅爆発事故だ。中国を訪問した金正日氏が特別列車で帰る帰路上で、小学生ら1500人を巻き込んだ謎の大爆発が起きたのだ。この出来事はいまもって、「暗殺計画」の可能性をはらむミステリーとして語られている。

北朝鮮において、最高指導者が水も漏らさぬ警護体制に守られているのは周知の通りだ。それなのにどうして、大量の爆発物が金親子の身近に置かれていたのか。

そんなことが一度ならず繰り返し起きるとは、金正恩体制に近い将来、何らかの異変があり得ることを示唆しているようでならない。