サッカー日本代表のヴァヒド・ハリルホジッチ監督(写真は2016年8月撮影)

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4対0でワールドカップ(W杯)最終予選のタイ戦に勝利したサッカー日本代表。

スコアは大差がついたが、シュート数はタイの方が多く、見る人が見れば守備がガタガタで残り3試合に大きな不安が出た。

吉田麻也「無失点で終われたのは奇跡に近い」

2018年ロシアW杯のアジア最終予選、ホームでのタイ戦は2017年3月28日に行われた。FW久保裕也(23)の2戦連発弾、FW岡崎慎司(30)の代表通算50得点弾など4対0で日本が勝利した。ところが、FIFAランキング127位の格下相手にヒヤリとする場面が何度もあった。

典型的だったのは後半41分。日本のゴール前でクリアミスしたDF長友佑都(30)がファールしてPKを献上。守護神GK川島永嗣(34)がビッグセーブで難を逃れた。

この日、川島に救われた場面はこれだけではない。前半35分、日本の最終ライン付近でパスを受けたFWティーラシルが簡単に振り向いてシュート。同46分は相手CKからのゴール前での混戦でシュート。後半6分にも相手CKからのこぼれ球に日本が反応できず決定機になった。終わってみれば、シュート数は日本12本に対してタイは14本、枠内シュート数は両チーム同数の7本だった。

試合後に守備の要、DF吉田麻也(28)は「無失点で終われたのは奇跡に近い」と述べ、途中出場のMF本田圭佑(30)も攻撃時の繋ぎに時折ほころびが出た原因を「意外と守備のやり方に問題があるんじゃないか」と守備組織に言及した。

「日本は明らかに気が緩んでいた」

サッカー評論家のセルジオ越後氏は29日付「日刊スポーツ」紙面で「スコアと内容が全く一致しない、大いに課題が残った試合だ。とにかくパスミスが多くてかみ合わない。タイには決定的なチャンスが4回はあった。それほど崩された。細かいつなぎもうまかった」と一喝した。

29日付「サンケイスポーツ」紙面では、元日本代表GKでサッカー解説者の小島伸幸氏(51)が「勝っただけ。内容はひどすぎる」とし、元代表MF本田泰人氏(47)は「ダブルボランチ(MF山口蛍とMF酒井高徳)からのミスで、そこから何度もピンチを招いていた」と中盤の底の問題点をあげている。その上で「この日のようなハリルホジッチ監督の采配なら、残りの(W杯最終予選)3試合は厳しいのではないか」と憂慮した。

ディフェンス陣の問題だけではないという見解もある。元日本代表DFで法政大学スポーツ健康学部教授の清雲栄純氏(66)は29日付「産経新聞」紙面で、「日本は明らかに気が緩んでいた」とした上で「日本の持ち味である連動した守備が機能しなかった」と指摘。「前線で敵との間合いを詰めてパスコースを限定し、後方の選手が呼応してボールを奪う場面は少なかった。逆に自陣深くまでタイの進入を許してピンチを招いた」と、FW陣を含めたボール奪取の連動性の甘さを突いている。

残る3試合は、サウジアラビア、オーストラリアの上位陣とイラク。UAE、タイ戦と、この2連戦は無失点で連勝したが、これからは相手のレベルが違い、同じような守備をしていては何点失うか分からない。