アメリカでもそろばん! IT系インド人の間でブームが続く

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子どもを育てていると、子どもが興味を持つことによって、自分が今まで知らなかったこと、とくに気を払っていなかったことがいきなり身近になることはよくある。

我が家でも、動物、草花、虫をはじめ、飛行機などの乗り物、レゴ、水泳、ロッククライミングなど、数え上げればきりがないが、そこに最近「そろばん」が加わった。


息子が初めてそろばんに触れたのは、週一回通っていた日本語教室だったようだ。

「ママ、そろばんって知ってる? 今日、やったよ。あれ、好き〜。もっとやってみたい」

筆者自身のそろばんの記憶はかなりおぼろげなのだが、得意ではなかったことだけはよく覚えている。

「アメリカにもそろばん教室があるの?」
「コンピュータのある時代に、そろばん?」

そう思われるかもしれないが、全国珠算教育連盟にはアメリカ支部があり、アメリカには同連盟に所属している教室が全米に14。毎年数回の珠算大会をアメリカでも開催しているという。

たしかに、シアトルの人種の割合の半数以上を占める白人の子どもさんが、レゴやマインクラフト、そしてポケモンGO(もうブームは終わったが)のような感じで、「そろばんがアツい!」というようなトレンドは見られない。

しかし、シアトル地域在住の日本人の子どもだけがそろばん教室に通っているわけでもない。実は、そろばんは今、上昇志向の強いインド人に高評価なのだ。

「アメリカ人は、そろばんに関して興味を持つ方は多少いるようですが、結果重視なので、すぐに効果が出ないそろばん学習は長続きしないようです」と、シアトル算数珠算学院の佐野哲哉先生。「一方、インドでは、一流の大学を出てアメリカに行き、マイクロソフトに就職するのがひとつのサクセスストーリー。大学へ行くには数学が欠かせず、その数学をするうえで、脳を活性化するそろばんが大流行しているようです」。

マイクロソフトやアマゾンの本社があり、GoogleやFacebookなどさまざまなIT企業が進出するシアトル地域では、エンジニアの需要が高まり、インド人のエンジニアが急増。インドと言えば「ゼロの概念」を発見した国。なんとなく数学ができそうなイメージを私は勝手に持っているが、彼らは我が子にもそろばんを習わせようと、"soroban seattle" で検索して教室を見つけるらしい。

そんなわけで、同学院には、2011年の開校当時の「日本人の生徒約50人」という期待の2倍以上の生徒が通うようになり、しかもその半数以上をインド人が占めている。

「最近では、香港、中国、韓国、台湾といった国々でもそろばんが流行っていると聞きますので、そういったアジア圏の方からの問い合わせもこれから増えてくるのではと思っています」(佐野先生)

筆者は、息子が自分でやりたいと思ったものを後押ししたいと思っているだけなのだが、本人は、先生に言われたとおりの、木でできた日本製のそろばんを私の母からプレゼントされ、ますますやる気になったらしい。やる気に火がついたら、やはりちゃんとした道具を用意して盛り上げることも大切なことに違いない。

アメリカ支部の矢吹慎一支部長によると、そろばんを習う理由は、基礎計算力の習得、算数力アップ、脳力のパワーアップの3つ。まずは2つの数字の足し算をやる12級から始まる。

老後に備えて(?)筆者も脳力をパワーアップしておいたほうがよさそうと、息子に教えてもらいながら一緒にやっているのだが、かつての自分がなぜどこでつまづいたかがわかり、達成感が半端ない。「できた!」と素直に喜ぶ親の姿は、息子にもポジティブに影響するらしく、「また教えてあげるね」と自信ありげで、今のところ数字が大好きだ。

大人になっても、こんな小さな達成感も、気分を明るくしてくれるのだなと改めて実感している。

【関連動画】
幼稚園および小学1年生のグループのそろばん読み上げ算決勝|League for Soroban Edu of America


【関連アーカイブ】
南アフリカで人気!世界に広がる「そろばん」の魅力
http://mamapicks.jp/archives/52112469.html
インド式計算を知らないインド人
http://mamapicks.jp/archives/52116008.html

大野 拓未
アメリカの大学・大学院を卒業し、自転車業界でOEM営業を経験した後、シアトルの良さをもっと日本人に伝えたくて起業。シアトル初の日本語情報サイト『Junglecity.com』を運営し、取材コーディネート、リサーチ、ウェブサイト構築などを行う。家族は夫と2010年生まれの息子。