今年も胸躍る週末――NBAオールスターウィークエンドの季節がやってきた。

 ただ、今回のオールスターゲームの出場者リストに目を通すと、ついに世代交代のときが来たのだと、少しの寂しさを覚えずにはいられない。東西各12選手・計24選手のなかでオールスターゲーム出場回数が10回以上の選手は、今回が13度目の出場となるレブロン・ジェームズ(クリーブランド・キャバリアーズ/SF)と、10度目のカーメロ・アンソニー(ニューヨーク・ニックス/SF)の2選手だけだからだ。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。


リーグ屈指のフォワードに成長したバックスのヤニス・アデトクンボ 昨年18度目の出場を果たしたコービー・ブライアント(当時ロサンゼルス・レイカーズ)が引退し、12度の出場経験を持つドウェイン・ウェイド(シカゴ・ブルズ/SG)や、選出されていれば10回目の出場となるはずだったクリス・ポール(ロサンゼルス・クリッパーズ/PG)も選ばれなかった。昨年11度目の選出となったクリス・ボッシュ(マイアミ・ヒート/PF)にいたっては、血栓症と診断されて今季は一度もコートに立つことすらできていない。

 しかし、去る者がいれば、来る者がいる。

 今年、オールスター初出場となるのは、ヤニス・アデトクンボ(ミルウォーキー・バックス/SF)、ケンバ・ウォーカー(シャーロット・ホーネッツ/PG)、ゴードン・ヘイワード(ユタ・ジャズ/SF)、デアンドレ・ジョーダン(ロサンゼルス・クリッパーズ/C)の4選手。なかでも、まさに「新世代の代表格」と言えるのは、22歳のアデトクンボだろう。

 アデトクンボは2013年にNBAデビュー。翌年、バックスのヘッドコーチに就任した往年のスーパースター、ジェイソン・キッドにベンチスタートを言い渡されると腹を立て、「あいつがどんなキャリアか調べてやる!」と携帯電話でキッドの経歴を検索した。そのとき初めてキッドの輝かしいキャリアを知り、「ここは黙って従ったほうがいい、と腹の虫を抑えた」と雑誌のインタビューで告白している。もちろん、アデトクンボがギリシャ出身であることも関係するだろうが、現在43歳のキッドの現役時代を知らない世代がオールスターに選出される時代になったことも、また事実だ。

 今年のオールスターゲームの注目点をひとつ挙げるなら、1962年にウィルト・チェンバレン(当時フィラデルフィア・ウォリアーズ)が記録したNBAオールスターゲーム記録42得点が破られるかどうかだろう。

 打ち破る可能性が高い選手は、2015年に41得点、そして2016年は31得点をマークし、2年連続でオールスターMVPを獲得している「お祭り男」ラッセル・ウェストブルック(オクラホマシティ・サンダー/PG)。昨年、オールスターゲーム記録となる9本のスリーポイント(3P)シュートを成功させて41得点を挙げたポール・ジョージ(インディアナ・ペイサーズ/SF)。そして今季、レギュラーシーズンで平均31.1得点のウェストブルックに次ぐリーグ2位(平均29.9得点)に食い込み、最終クォーターに無類の強さを発揮する「キングオブ4th」ことアイザイア・トーマス(ボストン・セルティックス/PG)だ。

 昨年のオールスターゲームは、196-173という空前絶後のハイスコアとなった。今年もノーガードの打ち合いが続くならば、そろそろ新記録が生まれてもいいころだ。

 3Pコンテストは、リーグナンバー1シューターのステファン・カリー(ゴールデンステート・ウォリアーズ/PG)こそ欠場するが、エリック・ゴードン(ヒューストン・ロケッツ/SG)、カイル・ロウリー(トロント・ラプターズ/PG)といったリーグ屈指のシューター陣が揃った。

 なかでも注目は、昨年のチャンピオンで連覇を狙うクレイ・トンプソン(ウォリアーズ/SG)。今季は12月5日のペイサーズ戦で、わずか29分の出場ながら3Pシュート8本を含む60得点を記録するなど、その爆発力は歴代のシューターのなかでもトップクラスの存在だ。

 過去、3Pコンテストで連覇を達成したのは6人。3連覇を成し遂げたのは、ラリー・バード(1986年〜1988年/当時セルティックス)、クレイグ・ホッジス(1990年〜1992年/当時ブルズ)の2選手のみだ。トンプソンには連覇を達成して、3連覇の挑戦権を手にしてほしい。

 ダンクコンテストは、2連覇中のザック・ラビーン(ミネソタ・ティンバーウルブズ/SG)が「達成できることはすべてやり尽くした」と不参加を表明。しかも、不出場発表直後の試合で、左ひざ前十字じん帯を断裂するという悲劇に見舞われてしまった。ラビーンはまだ21歳と若い。完治させてぜひもう一度、ダンクコンテストの舞台に戻ってきてほしい。

 今年のダンクコンテストに話を戻せば、まず注目すべきはアーロン・ゴードン(オーランド・マジック/PF)だろう。昨年のダンクコンテストでは準優勝に終わるも、マスコットを飛び越え、ボールを両足の下にくぐらせて叩き込んだダンクは、「ラビーンより上」ともささやかれていた。

 しかし、そんなゴードンの優勝に待ったをかけそうな、今はまだ無名のダンカーも出場する。フェニックス・サンズのルーキー、20歳のデリック・ジョーンズ・ジュニア(SF)だ。今季はDリーグ(※)での出場が多く、NBAでのプレータイムは現在7試合・合計23分でしかない。しかもNBAでは、まだダンクを1本も決めていない。

※Dリーグ=NBAデベロップメントリーグ。将来のNBA選手を育成する目的で作られたNBA後援のリーグの通称。

 だが、この男、もちろん人数合わせでコンテストに呼ばれたわけではない。高校時代から各地のダンクコンテストで優勝をかっさらい、ダンクマニアの間では「全米リーグナンバー1ダンカー」とも呼ばれていた逸材なのだ。201cm・86kgと細身ながら、ネバダ大学ラスベガス校時代には垂直跳びで116cmを記録し、ついたニックネームは「Airplane Mode」。垂直跳びの記録が120cmともいわれたマイケル・ジョーダンにはにわずかながら及ばないものの、1986年のダンク王に輝いたスパッド・ウェブ(当時アトランタ・ホークス)や前出のラビーンと同レベルだ。

 サンズの公式ツイッターでジョーンズ・ジュニアは、いくつかのダンク動画と、こんなコメントを残している。

「今はまだ無名だが、すぐに俺の名は知れわたるだろう。誰もがいまだ見たことのないダンクを披露する。俺が最高のダンカーだ」

 これだけの大口を叩けば、並みのダンクではファンは納得しない。ジョーンズ・ジュニアがどんなダンクを披露してくれるのか、期待せずにはいられない。

 魅惑の週末が終われば、熾烈なシーズン後半戦が幕を開ける。2月17日(日本時間2月18日)のライジング・スターズ・チャレンジ。18日のスキルチャレンジ、3Pコンテスト、スラムダンクコンテスト。そして19日のNBAオールスターゲーム――。この3日間くらいは勝敗を度外視し、スターたちの美技に酔いしれるのも悪くない。

※成績は2月17日時点

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