『写真:AFLO』

「ヨーグルトは体にいいと思って20年以上毎日食べていたのに、医者に骨粗しょう症といわれて参ったよ」

 そう話してくれたのはAさん。中年と呼ばれるようになったころから、栄養のバランスを考えて朝食に必ずヨーグルトを食べていたのだという。

「カルシウムがとれると思ってね。でも骨粗しょう症は遺伝要素が大きいから、ヨーグルトを食べても解決しないとはっきり言われたよ」

 結局、Aさんは薬を服用することで骨粗しょう症の治療をしている。ただし、ヨーグルトを食べることはすっかり生活習慣となっているので、それを変えるつもりはないという。

 Aさんのケースは、まだ「マシ」なようだ。
「子どものころは、給食で牛乳を毎日飲んでいても何ともなかったのに、大人になってからはお腹を壊すようにんなってしまった」

 これは40代Bさんのケース。「大人になってから牛乳を飲むとお腹を壊す」という人は意外と多いようだ。

 実は日本人の多くは、牛乳やヨーグルトなどの乳製品に含まれる乳糖を分解する酵素が少ないことがわかっている。

 ところが人間の体はよくできたもので、ミルクしか飲めない赤ちゃんは別なのだ。大人よりも乳糖を分解する酵素が多く作られ、しっかり母乳やミルクから栄養を吸収することができる。

 だが、成長するにつれて食べられるものも増え、徐々にミルク以外のものから栄養が摂取できるようになってくると、乳糖を分解する酵素の働きが落ちてくる。それで、牛乳を飲むだけでお腹を壊すようになってしまうのだ。

 その症状は乳糖不耐症と呼ばれ、基本的には乳糖の摂取を控えるしか手の打ちようはない。ちなみにチーズなどを日常的に摂取する欧米人は、日本人に比べると乳糖不耐症の人は少ないとされ、環境に適した体になっているようだ。

 また、ヨーグルトやチーズは牛乳より乳糖の量が少ないので「ヨーグルトならば大丈夫だけど、牛乳はダメ」という人もいる。

 乳糖不耐症よりも、もっと深刻なケースもある。いわゆる「牛乳アレルギー」の人だ。これは乳製品に含まれる「カゼイン」と呼ばれるタンパク質に対するアレルギー反応だとわかっている。

 ほかのアレルギー症状と同様、じんましんや腹痛程度で収まればいいほうで、アナフィラキシーショックを起こし重篤な症状になってしまう人もいる。

 そうした即時性のアレルギー症状ではなく、数日かけてゆっくりと症状が出るケースもある。遅延型の「牛乳アレルギー」の場合、「ヨーグルトを食べた数日後に調子が悪い」といったケースもみられる。なかなか不調の原因が「牛乳アレルギー」だとは気が付かず、長年苦しんでいる人も多いとされる。

 せっかく栄養を摂ろうとしたのに腹痛の原因やアレルギーを起こしてしまっては本末転倒だ。「子どものころ大丈夫だったから」は「大人になっても大丈夫」だとはならない。もう一度、牛乳やヨーグルトといった乳製品が自分の体に合っているのか見直してみてはいかがだろうか?